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コセンティクス(セクキヌマブ)の作用機序:乾癬治療薬

 

皮膚が赤くなって盛り上がり、ボロボロと剥がれていく疾患として尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)が知られています。「尋常性」には「最も普通の」という意味があり、乾癬患者の約90%が尋常性乾癬です。

 

他には、皮膚症状だけでなく関節の腫れや痛み・変形を伴う乾癬として関節性乾癬があります。関節性乾癬では関節破壊が進行してしまうため、関節リウマチと似た症状が表れます。

 

そこで、これら乾癬を治療するために用いられる薬がセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)です。セクキヌマブは抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体と呼ばれる種類の薬になります。生物学的製剤と表現されることもあります。なお、乾癬は感染症ではありません。

 

 

 セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)の作用機序
尋常性乾癬では、皮膚の代謝が異常なほど速くなっています。通常、私たちの表皮細胞は約45日で「新たに作られ、垢となって落ちる」という周期を繰り返しています。しかし、乾癬患者の皮膚では、周期が約4~5日とかなり短くなっています。

 

正常な細胞の約10倍程度のスピードで増殖していくため、皮膚が盛り上がっていきます。垢となって剥がれ落ちる細胞を角化細胞と呼び、乾癬では角化細胞が蓄積してしまうのです。そして、ボロボロと剥がれ落ちるようになります。このような乾癬の病態によって皮疹を生じます。

 

これら乾癬の増悪には、免疫の働きが大きく関与していると考えられています。免疫細胞は炎症を引き起こす作用があります。風邪を引いたときなど、発熱があるのは免疫が働いているからです。

 

免疫は「炎症を引き起こす物質」を放出することで炎症を生じさせます。ただ、感染症のときに炎症が起こるのであれば問題ないものの、正常な状態で免疫が暴走することで炎症を生じることがあります。乾癬がその例の一つであり、この場合は病気が引き起こされます。

 

乾癬患者の組織では、免疫によって炎症を引き起こす物質が多量に放出されています。この「炎症を引き起こす物質」の一つとして、IL-17Aというものが存在します。そこで、IL-17Aの働きを阻害してしまえば、炎症の発生を抑制できることが分かります。

 

 コセンティクス(セクキヌマブ)の作用機序

 

炎症反応を阻害するとき、抗炎症作用が強すぎると免疫抑制を引き起こして感染症に罹りやすくなる恐れがあります。ただ、炎症を生じる過程の中でも、IL-17Aは最も下流で作用するサイトカイン(炎症性の物質)であるため、IL-17Aを阻害しても全身性の免疫抑制は起こりにくいと考えられています。

 

このような作用機序により、炎症を引き起こす物質の働きを抑制することで、乾癬のような炎症性免疫疾患を治療する薬がセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)です。

 

 

 セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)の特徴
医薬品の中でも、セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)は抗体の一種です。感染症に再び罹らないために抗体が作られますが、抗体には「特定の物質に結合して無効化する」という働きがあります。

 

この性質を利用して、炎症に関わるIL-17Aへ結合する抗体を創り出せば、乾癬による炎症を抑制できることが分かります。このような抗体をモノクローナル抗体と呼び、IL-17Aへ作用するため、セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)は抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体と表現されます。

 

このような抗体医薬品は、生物学的製剤と呼ばれることもあります。生物学的製剤は治療効果が絶大であるという特徴があり、既存の治療で不十分な場合であっても優れた効果を示します。中等度から重度の乾癬患者に対して、セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)が使用されます。

 

なお、主な副作用としては鼻咽頭炎、頭痛、下痢、上気道感染などが確認されています。炎症(免疫反応)を抑制することで作用する薬であるため、重篤な感染症には注意しなければいけません。

 

このような特徴により、炎症に関わる因子(IL-17A)を無効化する抗体を投与することにより、尋常性乾癬や関節性乾癬などを治療する薬がセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)です。

 

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