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ウテメリン(リトドリン)の作用機序:切迫流産・切迫早産治療薬

 

正常な妊娠では、妊娠37~41週までの間で出産します。ただ、中には予定していた日よりも早く生まれてしまうことがあります。これを早産と呼び、妊娠22~36週での出産が早産です。

 

さらに、早産よりも前に生まれた場合は流産と呼び、早産とは区別されます。

 

これら早産や流産になりかかっている状態を切迫早産や切迫流産といいます。そこで、これらの症状を改善して元の状態に戻すために使用される薬としてリトドリン(商品名:ウテメリン)があります。

 

 

 リトドリン(商品名:ウテメリン)の作用機序
早産などによって早く生まれるほど、重大な障害を生じる可能性が高くなります。そのため、切迫早産などの兆候がみられるときはそれらを抑えるための対処を施します。出血や痛み、お腹の張りがある場合は切迫流産・切迫早産の可能性があります。

 

通常、胎児がお腹の中にいるときは子宮の出口(子宮口)は締まっています。ただ、何らかの原因で子宮が収縮してしまうと、これがきっかけとなって破水してしまうことがあります。

 

破水とは、子宮を満たしている羊水が出てこないようにしている膜が破れ、羊水が漏れ出してしまった状態を指します。これが早期に起こると切迫早産であり、さらに前に起こると切迫流産になります。

 

子宮の収縮によって、切迫流産・切迫早産が誘発されます。そこで、この状態を改善するためには、子宮の収縮を抑えるようにすれば良いことが分かります。これを実現するためには、運動時に起こる体の変化を利用します。

 

私たちが運動をしているときに活発に働く神経を「交感神経」といいます。例えば、運動時では心拍数が増大して呼吸は早くなります。これは、交感神経が活性化しているからです。

 

他にも、臓器の働きをみると交感神経が活発になっている運動時では、空気をたくさん取り入れるために気管は弛緩します。これにより、気道が広がります。

 

 

 

より詳しい話をすると、気管支にはβ受容体と呼ばれる部位が存在します。運動をして交感神経が興奮すると、β受容体が活性化します。これが、気管支の弛緩に繋がります。

 

これと同じように、子宮にもβ受容体が存在します。そこで子宮に存在するβ受容体を刺激すると、気管支が弛緩したのと同じように、子宮の筋肉(平滑筋)を弛緩させることができます。これが、子宮の収縮による切迫流産・切迫早産の予防に繋がります。

 

 

 

このような考えにより、子宮に存在する筋肉に働きかけ、子宮を弛緩させることで切迫流産・切迫早産を回避させる薬がリトドリン(商品名:ウテメリン)です。

 

 

 リトドリン(商品名:ウテメリン)の特徴
リトドリン(商品名:ウテメリン)には、飲み薬や注射があります。比較的症状が軽い場合は、リトドリンの飲み薬を使用します。ただ、緊急な治療を必要とする場合、注射を高用量で投与します。

 

臨床試験では、妊娠16週以降の切迫流産・切迫早産に対する有効性が確認されています。さらに、子宮収縮による痛みを改善したり、妊娠を継続させる作用があります。

 

副作用の少ない薬ですが、リトドリン(商品名:ウテメリン)の投与によって心悸亢進(動悸)や手指振戦、嘔気などの副作用を生じることがあります。

 

リトドリン(商品名:ウテメリン)は古くから使われている薬です。そのため、リトドリンには長年の経験とデータの蓄積があり、比較的安心して利用できる医薬品であるといえます。

 

リトドリン(商品名:ウテメリン)の服用による「胎児への影響」を心配する人もいますが、早産が起こる方が胎児にとっては大きな影響があります。そのため、「流産や早産を防止する」という薬のメリットと、「薬の副作用」というデメリットをてんびんにかけながら医薬品を使用する必要があります。

 

このような特徴により、子宮収縮によって生じる切迫流産・切迫早産を予防し、妊娠時の痛みまで軽減させる薬がリトドリン(商品名:ウテメリン)です。

 

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