ダクチル(ピペリドレート)の作用機序:切迫流産・切迫早産治療薬
妊娠をすることは、喜ばしいことです。ただ、妊娠をしたとしても予定日より大幅に早く胎児が生まれてしまうことがあります。これを早産と呼び、妊娠22~36週での出産が早産です。
さらに、早産よりも前に生まれた場合は流産と呼び、早産とは区別されます。
これら早産や流産になりかかっている状態を切迫早産や切迫流産といいます。そこで、これら切迫流産・切迫早産を改善するために使用される薬としてピペリドレート(商品名:ダクチル)があります。
ピペリドレート(商品名:ダクチル)は胃・十二指腸潰瘍や胃炎によるけいれん性の疼痛に対して使用されることもあります。
ピペリドレート(商品名:ダクチル)の作用機序
お腹の中に胎児がいる状態のとき、早産によって生まれる日が早いほど、その後に重大な障害を生じる可能性が高くなります。そのため、切迫流産・切迫早産の兆候が見られる場合は早目の対応が必要です。出血や痛み、お腹の張りなどを感じた場合、素早く医療機関を受診しなければいけません。
通常、子宮口は閉じている状態です。ただ、何らかの原因で子宮が収縮してしまうと、「子宮を満たしている羊水が外に漏れ出さないように制御してる膜」が破れてしまうことがあります。これを破水といいます。予定日よりも大幅に早く破水の兆候が表れた場合、切迫流産や切迫早産であるといえます。
子宮の収縮によって切迫流産・切迫早産が誘発されます。そこで、これらの症状を軽減するためには、子宮の収縮を抑えてしまえばよいことが分かります。この作用を理解するために、休憩時に起こる以下のような体の機能変化を述べていきます。
食事中など、私たちが休憩しているときは唾液が大量に分泌され、胃や腸などの動きは活発になります。これは、アセチルコリンと呼ばれる物質が大量に放出されているからです。
他にも、運動時ではトイレに行っている余裕すらなかった状況から、休息時ではゆっくりと用を足すことができます。そのため、休息時は膀胱の筋肉が収縮し、尿を放出しやすくなります。
これら胃や腸、膀胱など、休息時ではアセチルコリンの働きによって内臓が活発に動き、筋肉が収縮するようになります。これと同じように、子宮の筋肉もアセチルコリンの作用によって収縮します。
そこでアセチルコリンの働きを阻害すれば、子宮は収縮できなくなります。その結果、子宮の筋肉が弛緩して切迫流産・切迫早産を防止できるようになります。
このような考えにより、子宮の収縮に関わる物質の働きを阻害することで、切迫流産・切迫早産を予防する薬がピペリドレート(商品名:ダクチル)です。
ピペリドレート(商品名:ダクチル)の特徴
妊娠初期は流産の可能性が高いです。そこで、妊娠初期にピペリドレート(商品名:ダクチル)を服用すると、流産の危険性を減少させることができます。
中には、薬に服用による胎児への影響を心配する人もいます。ただ、ピペリドレート(商品名:ダクチル)による胎児への影響は少なく、それよりも流産や早産を生じる方が大きな問題を引き起こします。
なお、内臓の筋肉に対して作用することから、ピペリドレート(商品名:ダクチル)は子宮だけでなく、胃や十二指腸などの筋肉収縮まで和らげます。そのため、胃・十二指腸潰瘍や胃炎、腸炎、胆石症、胆のう炎などによるけいれん性の痛みに有効です。
主な副作用としては、口渇(口の中が渇く)や便秘、排尿困難などが知られています。これらは、どれもアセチルコリンの働きがブロックされ、内臓の筋肉の動きを止めたり弛緩させたりするために生じる副作用です。
このような特徴により、子宮の筋肉に作用することで切迫流産・切迫早産を防止するだけでなく、胃潰瘍や胆石症などによる痛みの軽減にまで用いられる薬がピペリドレート(商品名:ダクチル)です。
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