マーデュオックス軟膏の作用機序:尋常性乾癬治療薬
乾癬(かんせん)とは、皮膚が赤くなったり盛り上がったりしたあと、フケのようなものが付着して皮膚がボロボロと剥がれ落ちてしまう病気のことを指します。
乾癬としては、尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)が最も知られています。他にも乾癬には種類がありますが、尋常性乾癬が一般的であり乾癬全体の9割ほどを占めます。
そこで、乾癬を治療するために用いられる薬としてマーデュオックス軟膏があります。マーデュオックス軟膏には活性型ビタミンD3製剤「マキサカルシトール」とステロイド「ベタメタゾン」という2つの有効成分が含まれています。
マーデュオックス軟膏の作用機序
通常の皮膚細胞では、表皮細胞が45日という周期で作り変えられます。つまり、これだけの日数をかけて表皮細胞が作られ、最終的に垢として剥がれ落ちるのです。
それに対して、乾癬を発症している人では表皮細胞の周期が普通の人に比べて異常に早くなっています。具体的には、約4~5日で表皮細胞の周期が生まれ変わるなど、その速度は約10倍にもなります。
これだけ細胞が生まれ変わる速度が速いと、垢が積み重なっていきます。垢のことを専門用語で角化細胞といいますが、角化細胞によって白いかさぶたのような状態に陥ってしまうのです。
こうして、角化細胞による皮疹を生じてしまいます。そこでこの症状を改善するためには、表皮に存在する異常な細胞を正常な状態に戻せばよいことが分かります。
このとき、活性型ビタミンD3製剤が活用されます。活性型ビタミンD3製剤を投与すると、表皮に存在する角化細胞のビタミンD受容体に結合します。その結果、細胞が分化・誘導されることによって正常な細胞へと戻るようになります。
このように、乾癬によって増殖を繰り返している細胞に働きかけることで、細胞増殖や皮膚の肥厚を防止する有効成分がマキサカルシトールです。
また、乾癬では炎症反応が問題になりやすいです。乾癬患者では「炎症を引き起こす物質(サイトカイン)」が放出されることによって、その症状が悪化していくのです。
これら炎症物質としては多くの種類があり、TNFαやNF-κBなどさまざまな炎症物質が知られています。こうした炎症は免疫の働きが活発になることによって引き起こされますが、免疫を強力に抑制する物質としてステロイド剤が知られています。ステロイド剤を投与すると、急速に炎症が治まります。
そこでステロイド剤として知られるベタメタゾンを投与すれば、炎症に関わる物質(サイトカイン)の働きを抑制することで乾癬による増悪を抑えることができるようになります。
さらに、前述の通り炎症には免疫細胞が深く関わっていますが、ベタメタゾンは免疫細胞として知られるT細胞の増殖を抑制する効果が知られています。これによっても、炎症抑制作用を示します。
ステロイド剤の中でも、ベタメタゾンは「very strong」に分類されるステロイド剤です。そのため、皮膚の炎症を強力に抑えることができます。
こうした「角化細胞の増殖抑制作用」をもつマキサカルシトールと「炎症抑制作用」を有するベタメタゾンを組み合わせた薬がマーデュオックス軟膏です。
マーデュオックス軟膏の特徴
乾癬は治療が難しい疾患として知られており、軽症から中等症の患者さんに対して塗り薬が活用されます。具体的には、活性型ビタミンD3製剤やステロイド外用薬が用いられます。
ただ、2つの塗り薬を別々に用いるのは面倒です。そこで、既に2つの有効成分を混ぜた状態にして用意した薬がマーデュオックス軟膏です。
1日に何度も塗らないといけない手間を省くことによって、「薬を使用するのが簡単になる」「塗布時間や回数が減ることによるストレス軽減」などを期待できます。
もちろん、調剤薬局などで2剤を混ぜて調整することは可能であるものの、その場合は「有効成分の均一化」や「調剤に手間がかかる」などの問題があります。そのため、あらかじめ調整されてある薬剤を活用することには大きな意味があります。
なお、臨床試験で確認された副作用としては血中コルチゾール減少、血中カルシウム増加、血中クレアチニン増加、白血球数減少、肝機能異常、毛包炎などが知られています。重大な副作用としては高カルシウム血症や急性腎不全があるため、頻度は少ないものの使用には注意が必要です。
このような特徴により、乾癬で活用される2剤をあらかじめ組み合わせておくことによって病気を治療する薬がマーデュオックス軟膏です。
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