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役に立つ薬の情報~専門薬学

セファドール(ジフェニドール)の作用機序:めまい治療薬

 

めまいには周囲が回っている状態やふわふわした感じなど、多くの種類があります。めまいが起こるとふらつきや吐き気などが起こるため、日々の生活が大幅に制限されてしまいます。

 

そこで、これらめまい症状を改善するために使用される薬としてセファドール(一般名:ジフェニドール)があります。セファドールは乗り物酔いの治療薬として用いられることもあります。

 

 

セファドール(一般名:ジフェニドール)の作用機序

 

めまいが起こる病気の中でも、メニエール病は特に有名です。メニエール病は女性に多い疾患であり、30歳代後半から40歳代前半にかけて発症する人が多いです。

 

病気によってめまいが引き起こされる理由はそれぞれであり、脳が関与していたり、加齢による影響であったりします。その中でも、耳による影響がめまいに大きく関与しています。

 

耳には平衡感覚をつかさどる三半規管が存在します。この三半規管に悪影響があると、平衡感覚が失われてしまいます。これが、めまいの発症に耳が関わっている理由です。

 

より詳しくいうと、めまいを発症しているとき、耳に存在するリンパ液の量が多くなることで、水ぶくれのような状態になっています。これを専門用語で内リンパ水腫と呼びます。

 

水ぶくれによって三半規管に悪影響があるため、めまいを治療するためには、内リンパ水腫を改善させれば良いことが分かります。内リンパ水腫が起こる理由は不明ですが、一般的にはストレスが大きく関わっているとされています。

 

なお、メニエール病ではめまいの他にも「難聴、耳鳴り、耳閉感」が症状として知られています。これは、蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる器官に水ぶくれが起こるためです。蝸牛は耳の「聞こえ」に関与しているため、この器官が障害されることで難聴などの症状が表れるのです。

 

内リンパ水腫によるめまいの発生

 

そこで内リンパ水腫を改善させると、めまいだけでなく、難聴や耳鳴り、耳閉感などの症状も一緒に治療することができます。この改善方法に、「循環血流を良くする」という手法があります。

 

血管の痙攣により、血管が閉塞してしまうことを攣縮(れんしゅく)と呼びます。攣縮が起こると、右と左の耳で血流の差が生じてしまい、めまいが起こります。この攣縮を抑制すると血流が増加し、左右のアンバランスが改善されるためにめまいを軽減できます。

 

また、めまいが起こっている時、めまいの原因となる異常な信号(インパルス)を生じることがあります。この異常な信号を遮断することによっても、めまいを抑制できることが分かります。

 

このような考えにより、血流の改善作用や神経の調節作用により、内耳障害にもとづくめまいを治療する薬がセファドール(一般名:ジフェニドール)です。

 

セファドール(一般名:ジフェニドール)の特徴

 

同じようにめまいを治療する薬としてメリスロン(一般名:ベタヒスチン)が知られています。メリスロンとセファドールの違いですが、どちらも内耳の血流を改善する薬であり、とてもよく似ています。メリスロンの場合は、さらに脳内血流を改善させる作用があります。

 

頭痛薬にも同じような薬がたくさん存在し、人によって合う薬が違います。これと同じように、めまいを治療するときであっても、メリスロンとセファドールでは人によって合う合わないが異なります。

 

これは実際に投与してみなければ分かりません。もし片方の効き目が悪ければ、もう一方の薬に変更することは頻繁にあります。

 

なお、セファドール(一般名:ジフェニドール)は抗コリン作用という働きが知られているため、緑内障や前立腺肥大のある方に対しては慎重に投与されます。

 

このような特徴により、耳が関わるめまい症状を改善させることで生活の質を向上させる薬がセファドール(一般名:ジフェニドール)です。

 

 

セファドール(一般名:ジフェニドール)の効能効果・用法用量

 

内耳障害によるめまいに対して、セファドールが広く活用されます。長期服用しても、離脱症状を含め大きな問題が起こることが少ない薬です。

 

このとき、成人(大人)ではセファドール25mgを1回1~2錠、1日3回服用します。年齢や症状に合わせて、減量や増量を行っていきます。

 

また、顆粒であれば1回0.25~0.5gを1日3回服用していきます。セファドールには25mgや顆粒10%があるため、それぞれ使い分けていきます。

 

服用のタイミングとしては、特に理由がない場合は食後服用です。ただ、何らかの理由によってタイミングが難しい場合は食前や空腹時(食間)に薬を飲んでも問題ありません。

 

なお、患者さんによっては一包化や半錠、粉砕などによって投与することがあります。セファドールは一包化や粉砕をしても問題なく、簡易懸濁法を実施しても大丈夫な薬です。

 

セファドール(一般名:ジフェニドール)の副作用

 

それでは、セファドール(一般名:ジフェニドール)の副作用についてより深く確認していきます。セファドールの主な副作用としては口渇(のどの渇き)、食欲不振、胸やけなどの消化器症状が最も多いです。次に浮動感・不安定感、顔面熱感、動悸などが多くなります。

 

その他、頭痛・頭重感、幻覚、錯乱、発疹・薬疹、じんましん(かゆみ)、散瞳、肝機能異常、悪心・嘔吐(吐き気)、便秘、胃痛、眠気、排尿困難などが知られています。

 

なお、重大な副作用は特にありません。

 

セファドール(一般名:ジフェニドール)の禁忌や飲み合わせ(相互作用)

 

セファドールには禁忌の患者が設定されており、重大な腎機能障害(透析患者など)を有している人に投与してはいけません。こうした腎機能障害患者へセファドールを投与すると、薬が体外へ排泄されにくく、副作用が出てしまう恐れがあるからです。

 

また、慎重に投与すべき人としては、前述の通り緑内障や前立腺肥大症などがあります。セファドールによる抗コリン作用により、眼圧を上昇させたり排尿困難を加速させたりする危険性があるからです。

 

私たちの体内は自律神経と呼ばれる神経によって調節されています。このうち、アセチルコリンという物質が自律神経に関与しており、アセチルコリンが働きかけることで眼圧が下がり、排尿が促進されます。

 

こうした「アセチルコリン」の働きを阻害する作用を抗コリン作用と呼び、セファドールには抗コリン作用があるため、結果として眼圧上昇や排尿困難を生じることがあるのです。

 

また、腸閉塞(イレウス)など腸管が狭くなっていたり閉塞してしまったりしている人にセファドールを投与すると、症状を悪化させることがあるので慎重投与です。

 

飲み合わせ(相互作用)については、セファドール(一般名:ジフェニドール)には規定がありません。そのため、多くの薬との飲み合わせは問題ありません。

 

例えば、「鎮痛剤であるロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)、ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)、バファリン配合錠」「抗ヒスタミン薬であるアレグラ(一般名:フェキソフェナジン)」「胃薬のムコスタ(一般名:レパミピド)」「低用量ピル」「漢方薬(葛根湯など)」のような一般的な薬と併用しても大丈夫です。

 

ただ、同じように抗コリン作用を示す薬と併用すると副作用の増強を招く恐れはあります。

 

アルコール(お酒)については、当然ながら推奨はされません。飲酒は絶対にダメなわけではありませんが、薬の影響が強く出る恐れがあることは認識する必要があります。

 

高齢者への使用

 

セファドール(一般名:ジフェニドール)を高齢者に用いることについては、頻繁に行われます。高齢でめまいやふらつきを訴える人は多く、そうしたときにセファドールが処方されます。

 

ただ、高齢者であると腎機能を含め生理機能の低下を招いていることがあります。そのため、高齢者では副作用が表れないか確認しながら服用していきます。

 

小児(子供)への使用

 

小児へセファドール(一般名:ジフェニドール)を用いることについて、添付文書には特に記載はありません。ただ、実際には子供に対してセファドールが頻繁に活用されます。

 

めまいによる吐き気や耳の閉塞感、難聴を含めセファドール(一般名:ジフェニドール)は子供の症状を改善させる薬の一つです。

 

妊婦・授乳婦への使用

 

妊娠中の方がセファドール(一般名:ジフェニドール)を服用することについて、「安全性は確立していない」とされています。しかし、妊娠中であってもセファドールは多用されますし、妊婦が服用しても問題ない薬です。

 

これまで、妊娠初期にセファドールを服用することによる催奇形性は報告されていません。また、動物実験でも胎児への影響があるという報告はありません。妊娠中期や妊娠後期においても、服用して問題ありません。

 

授乳中の方が薬を飲むことも同様であり、セファドール(一般名:ジフェニドール)を活用しても大丈夫です。母乳への移行を含め、授乳婦がセファドールを服用したとしても、安心して母乳育児を実施すればいいです。

 

それでも授乳中での服用が心配な場合、セファドールは服用して19~26時間ほどで有効成分の多くが体外へ排泄されるため、これを基準に赤ちゃんへ授乳させるといいです。

 

 

セファドール(一般名:ジフェニドール)の効果発現時間

 

実際にセファドール(一般名:ジフェニドール)を服用したとき、どれくらいの時間で効果が表れてくるようになるのでしょうか。

 

セファドールを服用後、血中濃度(血液中の薬物濃度)が最高値に到達する時間は1.6時間ほどです。また、半減期(薬の体内濃度が半分になる時間)は6.5時間ほどです。

 

そのため、服用後1時間以内など薬の作用はすぐに表れます。ただ、そこから内耳へ働きかけてめまいによるふらつきや吐き気が改善するまでの期間については個人差があります。作用が強力というわけではないため、即効性はあまり期待しない方がいいです。

 

また、前述の通り19~26時間ほど経過すれば、多くの薬が体外へ排泄された状態になります。1日3回という服用間隔であれば、薬の効果はずっと持続するようになります。

 

なお、めまいには種類があります。主に回転性めまいと浮動性めまいがあり、回転性めまいでは目の前がぐるぐると回転します。メニエール病は回転性のめまいを生じ、難聴などを併発します。

 

一方で浮動性めまいでは、ふわふわ感を覚えたりまっすぐ歩けなかったりします。更年期障害や自律神経失調症などで浮動性めまいが起こり、脱力感・倦怠感などを覚えるようになります。

 

内耳の異常や更年期障害、自律神経失調症、片頭痛、生理不順、天気痛(低気圧)など、めまいの原因は人によって異なります。「内耳の異常が原因でないめまい」にセファドールを使用しても効かないため、めまい止めの薬を使用して病気の治療・予防をするときは原因を見極める必要があります。

 

乗り物酔いに活用するセファドール

 

自動車運転を含め、酔い止めの薬としてもセファドール(一般名:ジフェニドール)が活用されます。内耳の血流を改善させることは、乗り物酔いにも有効なのです。酔い止めとして用いる場合、頓服でセファドールを服用することがあります。

 

乗り物酔いの薬としては、トラベルミン(一般名:ジフェンヒドラミン、ジプロフィリン)が広く活用されます。脳には嘔吐中枢があり、トラベルミンによる抗ヒスタミン作用によって中枢神経(脳や脊髄)の興奮を抑えます。

 

ただ、市販薬の中には「トラベルミンR」という商品があり、トラベルミンに「R」がついたこの商品では有効成分にジフェニドールが含まれています。つまり、セファドールの有効成分を含む薬が「トラベルミンRとして酔い止めの薬にも活用されている」のです。

 

 

他の抗めまい薬との使い分け

 

セファドール以外にも、他にもめまい止めの薬が存在します。抗めまい薬で多用される薬には、前述のメリスロン(一般名:ベタヒスチン)があります。

 

メニエール病などによる内リンパ水腫に対して、メリスロンでは溜まった水分を除去する働きがあります。一方でセファドール(一般名:ジフェニドール)の場合、左右の耳に働きかけて血流量を改善させる作用があります。

 

内耳障害を改善させるとき、メリスロンとセファドールは似た働きをしますがその効果は異なります。セファドールが効かない場合、メリスロンなどの他の作用を示す薬へ切り替えることはよくあります。

 

また、利尿薬として尿量を増やすことにより、内耳のリンパ液排出を促す薬としてイソバイド(一般名:イソソルビド)があり、これもメニエール病によるめまいや耳鳴りに活用されます。副作用には吐き気や下痢、頭痛などがあります。

 

血流を改善して内耳の働きを改善させる薬として、アデホスコーワ(一般名: アデノシン三リン酸)も用いられます。セファドールやメリスロンなどと併用して症状を緩和させます。

 

めまい予防のため、末梢神経の修復を促すメチコバール(一般名:メコバラミン)を抗めまい薬として長期服用することもあります。

 

点滴や注射であれば、メイロン(一般名:炭酸水素ナトリウム)もあります。乗り物酔い(動揺病)やメニエール病に活用されます。

 

脳卒中後のめまいなど、脳血流の循環障害によってめまいが起こっている場合はセロクラール(一般名:イフェンプロジル)を服用します。セロクラールには脳や内耳の血流を改善させる作用があります。突発性難聴などにも活用されます。

 

・吐き気への対処

 

めまいでは吐き気を伴うことがあります。その場合、吐き気止めの薬と抗めまい薬を併用します。

 

吐き気止めの薬としては、ナウゼリン(一般名:ドンペリドン)やプリンペラン(一般名:メトクロプラミド)が多用されます。こうした薬とセファドールを併用するのは問題ありません。

 

・抗不安薬の活用

 

めまいには心理状態も大きく関わっており、ストレスや不安によってめまい症状の悪化を招くことがあります。そのため、パニック障害などの不安障害に対して用いられる抗不安薬(精神安定剤)をめまい治療に活用することがあります。

 

抗不安薬としてはデパス(一般名:エチゾラム)、セルシン・ホリゾン(一般名:ジアゼパム)、リーゼ(一般名:クロチアゼパム)、コンスタン・ソラナックス(一般名:アルプラゾラム)、メイラックス(一般名:ロフラゼプ酸)、セディール(一般名:タンドスピロン)、グランダキシン(一般名:トフィソパム)などがあります。

 

これらの薬はセファドールと併用することがよくあります。また、抗不安薬はめまい以外にも頭痛や動悸、発汗、うつ病、自律神経失調症、肩こり・首こり(むち打ち症、頚性めまい)など幅広く活用されます。

 

その他のめまいへの使用

 

めまいは前述の通り、内耳が関わるだけではありません。他の種類のめまいも存在します。

 

・良性発作性頭位めまい症

 

例えば、内耳にある「耳石」が剥がれ落ちることにより、回転性のめまいを生じる病気として良性発作性頭位めまい症があります。

 

良性発作性頭位めまい症の原因は耳石のはがれにあるため、どれだけ薬を服用しても症状は改善されません。良性発作性頭位めまい症を治療するためには、理学療法が必要になります。

 

・前庭神経炎によるめまい

 

また、内耳に存在し、平衡感覚に関する前庭神経というものが存在します。前庭神経に炎症が起こることで、回転性のめまいを生じるものを前庭神経炎といいます。

 

内耳が関わるため、前庭神経炎ではセファドール(一般名:ジフェニドール)やメリスロン(一般名:ベタヒスチン)などの抗めまい薬を活用するほか、炎症を抑えるためにステロイド剤であるプレドニン(一般名:プレドニゾロン)を活用することがあります。

 

ここまで述べてきた通り、めまい症状に対してセファドールは広く利用されます。ただ、めまいの原因を見極めて服用する必要があります。セファドールにはジェネリック医薬品(後発医薬品)が存在し、副作用も少ないので広く処方される薬の一つです。

 

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