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オブリーン(セチリスタット)の作用機序:抗肥満薬

 

内臓脂肪などが増えて、体重が増加し太っている状態を肥満症と呼びます。

 

この状態であると、糖尿病や高血圧などの生活習慣病だけでなく、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害を引き起こし、がんなどの悪性疾患にも関わるようになります。

 

そこで食事療法や運動療法などによって肥満症を改善する方法が最も効率的ですが、それだけでは効果が不十分な患者さんもいます。

 

そこで、食事・運動療法などによっても体重減少が不十分な患者さんを対象に肥満症を治療する薬としてセチリスタット(商品名:オブリーン)が使用されることがあります。セチリスタットはリパーゼ阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

 セチリスタット(商品名:オブリーン)の作用機序
肥満状態では、糖代謝に影響を与えることで糖尿病を誘発しますし、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症を引き起こす原因にもなります。肥満が原因となってこれらの症状が起こるため、減量によって病気を回避しなければいけません。

 

肥満では特に内臓脂肪が重要となりますが、これら内臓脂肪の蓄積には脂質が関わっています。脂質はトリグリセリド(中性脂肪:TG)とも呼ばれ、食事中に含まれる脂質(トリグリセリド)が腸から吸収されて内臓脂肪として利用されます。

 

ただし、脂質はそのままの状態では腸から吸収されないため、リパーゼと呼ばれる酵素によって脂肪酸とグリセロールに分解されます。この脂肪酸とグリセロールが腸から吸収されて小腸の細胞内で再び脂質(トリグリセリド)へと合成されます。その後、リンパ管へと移行します。

 

もし高脂肪食によって脂質量の多い食事ばかりとっていると、その分だけ腸からの脂質の吸収量も増加します。過剰な脂質は内臓脂肪として蓄えられるため、これが肥満の原因となります。

 

つまり、食事から摂取される脂質(トリグリセリド)の吸収を抑えることができれば、内臓脂肪の蓄積を抑制して肥満症を改善できることが分かります。そのために使用される薬がセチリスタット(商品名:オブリーン)です。

 

リパーゼは脂質(トリグリセリド)を脂肪酸とグリセロールへと分解しますが、セチリスタットはこのリパーゼの働きを阻害する作用があります。脂質はリパーゼによって分解されなければ腸から吸収されないため、リパーゼを阻害する事で脂質が腸からの吸収される過程を抑えることができるようになります。

 

 リパーゼ阻害薬の作用機序:抗肥満薬、オブリーン(セチリスタット)

 

このように、脂質(トリグリセリド)の分解に関わるリパーゼを阻害することにより、脂質の吸収を抑制することで肥満症を治療する薬がセチリスタット(商品名:オブリーン)です。セチリスタットは糞便からの脂質の排泄を増加させる作用を有しています。

 

 

 セチリスタット(商品名:オブリーン)の特徴
脂質吸収を抑制する日本初の薬がセチリスタット(商品名:オブリーン)です。脂質の吸収阻害によって内臓脂肪を低下させ、体重を減少させることができます。

 

肥満の指標としてはBMIがあり、BMIは「(体重:kg)/(身長:m)2」で計算されます。BMI18.5以上、25未満が普通体重であり、BMI25以上になると肥満と判断されます。セチリスタット(商品名:オブリーン)はBMIが25以上の人に使用されます。

 

臨床試験では、セチリスタットの投与開始2週間後からプラセボ(偽薬)に比べて有意に体重を減らすことが分かっています。

 

体重だけでなく、内臓脂肪の低下によって糖尿病の指標となる「HbA1cや空腹時血糖値」、脂質で重要となる「トリグリセリド(TG)やLDL、HDL」、高血圧に関わる「収縮期血圧、拡張期血圧」などの値が改善されることも示されています。

 

糞便からの脂質排泄量を増やす作用のため、副作用としては下痢や脂肪便があります。これらの消化器系副作用は食事に含まれる脂肪量が多いほど出現しやすいと考えられているため、副作用を抑えるためには食事内容に注意しなければいけません。

 

このような特徴を有し、肥満症による内臓脂肪の蓄積を抑えることで体重を減らす薬がセチリスタット(商品名:オブリーン)です。

 

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