役に立つ薬の情報～専門薬学 ｜ 薬・薬学・専門薬学・薬理学など

医薬品の作用機序 ＞ 肝臓の治療薬 ＞ ダクルインザ（ダクラタスビル）

ダクルインザ（ダクラタスビル）の作用機序：C型肝炎治療薬

 

肝臓にずっと炎症が起こる病気を慢性肝炎といいます。慢性肝炎が持続すると、やがて肝硬変になります。肝臓の線維化によって肝機能が落ちていき、さらに症状が進行すると肝がんを発症します。

 

慢性肝炎の中でも、C型肝炎の患者さんは多いです。そこで、C型肝炎を治療するために使用される薬としてダクラタスビル（商品名：ダクルインザ）があります。ダクラタスビルはHCV複製複合体阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

　ダクラタスビル（商品名：ダクルインザ）の作用機序
C型肝炎の発症には、根本的な原因があります。それは、「C型肝炎ウイルス（HCV）に感染している」ことです。C型肝炎ウイルスは血液を介して感染していくウイルスです。

 

C型肝炎ウイルスへの感染が病気を引き起こしていることから、この原因ウイルスを排除すれば、病気を改善できることが分かります。そこで、薬によってC型肝炎ウイルスを退治します。

 

ウイルスは自分自身で増殖することができません。そこで、宿主の細胞へ感染して増殖しようとします。正常な細胞は、適切な生命活動を維持しています。ただ、ここにC型肝炎ウイルスが感染すると、細胞はC型肝炎ウイルスを増殖させる場へと作り変えられます。

 

ウイルスが細胞に感染すると、C型肝炎ウイルスは自身の遺伝子（RNA）を細胞内へと放出します。このときの遺伝子（RNA）には、「どのようにすればC型肝炎ウイルスを増殖させることができるか」という情報が書かれています。

 

C型肝炎ウイルス由来の遺伝子が細胞内へ入ってくると、その遺伝子に書かれている情報から、「C型肝炎ウイルスを作る工場」が新設されます。工場では、ウイルスの遺伝子（RNA）やタンパク質などが新たに合成され、これを元にしてウイルスが作られます。

 

そこで、ウイルスを作る工場の機能を停止させることができれば、C型肝炎を治療できることが分かります。

 

先に挙げた「ウイルスを合成する工場」を専門用語で複製複合体といいます。より正確にいうと、C型肝炎ウイルス（HCV：Hepatitis C Virus）の複製複合体なので、HCV複製複合体と表現します。HCV複製複合体を阻害すると、C型肝炎ウイルスの増殖が抑えられます。

 

　

 

このように、C型肝炎を引き起こす原因ウイルスの増殖を抑え、病気を改善させる薬がダクラタスビル（商品名：ダクルインザ）です。さらに詳しくいうと、ダクラタスビルはHCV複製複合体の中でも、NS5A複製複合体を阻害します。

 

 

　ダクラタスビル（商品名：ダクルインザ）の特徴
従来のC型肝炎治療薬では、インターフェロンと呼ばれる種類の薬を服用しなければいけませんでした。「ペグインターフェロン＋リバビリン＋その他抗ウイルス薬」など、インターフェロン製剤と他の薬を組み合わせることにより、病気を治療します。

 

ウイルスなどに感染したときに作られる物質がインターフェロンであり、これによって免疫機能を活性化させます。

 

ただ、インターフェロンには副作用があります。分かりやすく表現すれば、「かぜのときにインターフェロンが作られるため、このときの気だるい感じがインターフェロン製剤の投与によって起こる」と考えてください。

 

そのような中、インターフェロン製剤の投与を必要としない薬として開発された薬がダクラタスビル（商品名：ダクルインザ）です。「副作用などの問題により、インターフェロンによる治療が適切でない患者さん」や「インターフェロン治療が無効な患者さん」に対しても効果を期待することができます。

 

なお、ダクラタスビル（商品名：ダクルインザ）を使用するとき、スンベプラ（商品名：アスナプレビル）という薬と併用しなければいけません。2つの薬を組み合わせることで、C型肝炎を治療します。

 

このような特徴により、それまで必要だったインターフェロン製剤を使用しなくてもC型肝炎に対抗できる薬がダクラタスビル（商品名：ダクルインザ）です。