アルダクトンA(スピロノラクトン)の作用機序:利尿薬
血管に常にストレスがかかってしまう病気として高血圧があります。動脈は弾力性があってしなやかですが、高血圧では動脈が硬くなってしまう動脈硬化が進行します。
動脈硬化が起こると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。
そこで、血圧を下げることで高血圧を治療する薬としてスピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)が使用されます。スピロノラクトンは利尿薬であり、アルドステロン拮抗薬と呼ばれることもあります。
尿をたくさん出させる作用を「利尿」と呼び、この働きを有する薬が利尿薬です。
利尿薬が血圧を下げる理由
血圧とは、血液が血管壁を押し出すときの圧力を指します。血圧を決定づける要因の1つに「血液量」があり、血管内に存在する血液が多いと、その分だけ血圧が高くなります。
そのため、血圧を下げるためには、血液量を減らせばよいことが分かります。全体の血液量が減少すれば、それだけ「血液が血管壁を押し出す力」が弱まります。
血液の成分としては赤血球や白血球を思い浮かべる人が大半です。しかし、そのほとんどは水分です。「血液量=水分量」と考えて問題ありません。そのため、血液量を減らすためには、血液に含まれる水分を体外に排泄すればよいのです。
これを実現するために利尿薬が使用されます。利尿薬は尿として水分を体外へと排泄させる作用が知られています。
利尿作用によって全体の水の量(血液量)が減り、血管への圧力を減らすことができます。これが、利尿薬によって高血圧を治療するメカニズムです。
スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)の作用機序
腎臓でろ過された原尿には、アミノ酸や糖など体に必須の栄養が含まれています。これらの栄養まで尿と共に排泄するのは不都合であるため、原尿に含まれるアミノ酸や糖は血液中へと再吸収されます。これと同じように、水も再吸収されます。
この時、水はナトリウム(Na)と共に動きます。これは、ナトリウムが再吸収されると、水も一緒に再吸収されるという意味です。つまり、尿管でのナトリウムの再吸収を阻害すれば、結果として水の再吸収まで抑制できます。これにより、尿の量が増えます。
原尿は尿管を通って膀胱まで移動します。尿管を細かく分けると、腎臓側から「近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管、集合管」の4つに分類されます。
この中でも、遠位尿細管にはナトリウムの再吸収に関わる輸送体(Na-K交換系)が存在します。ナトリウム(=水分)を体内に取り入れ、その代わりにカリウムを排泄する働きをもつ輸送体です。この輸送体を阻害すれば、ナトリウムの再吸収が抑制されるために尿量を増やすことができます。
このような考えにより、ナトリウムの再吸収を抑制することで利尿作用を示す薬がスピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)です。
スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)の特徴
私たちの体内には血圧を上昇させる物質があり、この物質の1つにアルドステロンと呼ばれるものがあります。アルドステロンは遠位尿細管に存在する輸送体(Na-K交換系)に作用して、ナトリウムの再吸収を促進します。これが体内の水分量の増加につながり、血圧上昇を引き起こします。
スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)はアルドステロンが作用する輸送体(Na-K交換系)を阻害する働きがあります。そのため、アルドステロン拮抗薬とも呼ばれます。
利尿薬にも種類があり、その多くはナトリウム(=水分)の排泄を増加させると共に、カリウムの排泄も促進させます。そのため、副作用として低カリウム血症を生じることがあります。
一方、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)は「ナトリウムを体内に取り込み、カリウムを尿中に排泄する輸送体」を阻害します。言い換えれば、ナトリウム排泄を促進させますが、カリウム排泄は反対に抑制されます。
そのため、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)はカリウム保持利尿薬と表現されることもあります。利尿薬の中でも、カリウム喪失を起こさないことがスピロノラクトンの特徴です。また、他の利尿薬で問題となる、糖や尿酸の代謝に影響を与えずに尿量を増やすことができる薬でもあります。
なお、利尿薬は心不全の治療薬に用いられることもあります。心不全では心臓の収縮力が低下しているため、全身の組織で血液が停滞しています。
心不全によって血管内の血液量が増えると、血管内の圧力が高まって水分がそれぞれの器官(臓器など)に移行します。これにより、水分が貯留するようになります。この状態が浮腫です。
ここで利尿薬を使用すると、血管内の水分を排泄させることで全身に貯留している水まで排泄することができます。これにより、心不全による浮腫を改善させます。送り出さなければいけない血液量が減るため、心臓の負担を軽減することで心不全を治療する効果もあります。
心不全による浮腫だけでなく、腎臓の悪化による浮腫(腎性浮腫)や肝臓の悪化による浮腫(肝性浮腫)など、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)はさまざまな浮腫に対して使用されます。
このような特徴により、利尿作用によって高血圧や浮腫を改善する薬がスピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)です。
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