バイロテンシン(ニトレンジピン)の作用機序:高血圧治療薬
高血圧では、血管に対して常に高い圧力がかかっています。この状態が長く続くと動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞などの致死的な病気の引き金となります。
また、動脈硬化が起こると冠動脈(心臓に栄養を送るための血管)が細くなるため、心筋細胞に十分な栄養・酸素が行き渡らなくなります。これによって胸に激痛を生じる病気が狭心症です。
そこで、これら高血圧や狭心症を治療するために用いられる薬としてニトレンジピン(商品名:バイロテンシン)があります。ニトレンジピンはカルシウム拮抗薬と呼ばれる種類の薬になります。
ニトレンジピン(商品名:バイロテンシン)の作用機序
血圧が高くなる要因の1つに、「末梢血管抵抗の増大」があります。末梢血管抵抗とは、「どれだけ血液が血管内を通りにくくなっているか」を指します。例えば、動脈硬化などによって血管壁にコレステロールが沈着し、血管が細くなると、血液は血管内をなかなか通ることができません。
血圧とは、「血液が血管壁を押出すときの力」を指します。血圧が高い状態というのは、血管が細くなっていることが1つの要因になっています。
これを改善するためには、血管を拡張させれば良いことが分かります。そこで重要となる物質にカルシウム(Ca)があります。
カルシウムは骨や歯の成分として有名です。ただ、カルシウムは記憶の形成や神経の伝達機能に関わるなど、生命維持に必要不可欠な物質でもあります。そして、カルシウムは血管の収縮にも関わっています。
血管には、カルシウムが流入するための受容体が存在します。この受容体を介してカルシウムが入ってくると、血管が収縮します。そこで、カルシウムの流入を阻害してしまえば、その反対に血管を拡張させることができます。
このような考えにより、全身の血管を拡張させることで末梢血管抵抗を下げ、高血圧を治療する薬がニトレンジピン(商品名:バイロテンシン)です。カルシウムの作用に拮抗するため、カルシウム拮抗薬と呼ばれます。
なお、狭心症では冠動脈が細くなっています。ニトレンジピン(商品名:バイロテンシン)は細くなった冠動脈を拡張させるため、狭心症の症状を抑えることができます。そのため、狭心症の治療薬としても利用されます。
ニトレンジピン(商品名:バイロテンシン)の特徴
緩徐で優れた血圧降下作用を有する薬がニトレンジピン(商品名:バイロテンシン)です。高血圧の中でも、約9割を占める本態性高血圧だけでなく、腎臓での炎症などが原因となる腎実質性高血圧症に対しても効果を有する薬です。
脳、心臓、腎臓と全身のあらゆる血管を拡張させる作用が知られており、これによって血流を改善させることができます。そのため、高血圧だけでなく狭心症の治療にも用いられるのです。
狭心症に対しては、狭心症の発作回数を減少させ、運動耐容能(体の負荷に対応するための心機能など)を改善させることが分かっています。
なお、主な副作用としては顔面潮紅(1.32%)、頭痛(1.20%)、動悸(0.83%)、めまい(0.69%)、ほてり(0.70%)などが知られています。
このような特徴により、血管拡張作用によって高血圧や狭心症を改善する薬がニトレンジピン(商品名:バイロテンシン)です。
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