イルベタン、アバプロ(イルベサルタン)の作用機序:高血圧治療薬
高血圧では脳血管や冠動脈(心筋に栄養を送る血管)にストレスを与え、脳血管障害(脳卒中など)や心血管障害(狭心症、心筋梗塞など)を発症させます。
つまり、臓器障害による合併症によって死に至る病気です。
そこで、高血圧を治療することでさまざまな合併症を予防する薬にイルベサルタン(商品名:イルベタン、アバプロ)があります。イルベサルタンはアンジオテンシンⅡ受容体阻害薬(ARB)と呼ばれる種類の薬になります。
イルベサルタン(商品名:イルベタン、アバプロ)の作用機序
血圧の上昇には「血圧を上昇させる物質」が大きく関わっています。当然ながら、この物質が働けば働くほど血圧が上がっていきます。
そのため、高血圧を治療するときの概念はとても単純です。すなわち、血圧上昇に関わる物質の働きを抑えてしまえば良いのです。この血圧を上昇させる物質の名前をアンジオテンシンⅡと呼びますが、アンジオテンシンⅡの作用を阻害すれば血圧が下がります。
この時、アンジオテンシンⅡの生成に関わる経路としてレニン-アンジオテンシン系が知られています。つまり、この経路に働きかけることで何とかしてアンジオテンシンⅡの作用を抑えることができれば、高血圧治療薬となります。
以下にレニン-アンジオテンシン系とアンジオテンシンⅡの関係について記しています。
この中でも、アンジオテンシンⅡがその下にあるアンジオテンシンⅡ受容体に作用していることが分かります。つまり、アンジオテンシンⅡ受容体を阻害すれば、その後の反応をストップするために血圧上昇が抑えられます。
このように血圧上昇に関わるアンジオテンシンⅡの作用を抑えることで高血圧を治療する薬がイルベサルタン(商品名:イルベタン、アバプロ)です。アンジオテンシンⅡ受容体を阻害するため、アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬(ARB)と呼ばれます。
イルベサルタン(商品名:イルベタン、アバプロ)の特徴
軽症から重症までの高血圧に対して優れた血圧降下作用を示す薬がイルベサルタン(商品名:イルベタン、アバプロ)です。半減期(体内の薬物濃度が半分になる時間)は10.1~15.2時間であり、24時間にわたって効果が持続します。
また、アンジオテンシンⅡは腎臓や心臓に働きかけることで組織の線維化を促します。そのため、アンジオテンシンⅡの働きを阻害するイルベサルタンは腎臓や心臓などの臓器を保護する作用が知られています。
臨床試験でもイルベサルタン(商品名:イルベタン、アバプロ)の投与により、糖尿病で問題となる腎症(腎臓の悪化)を防ぐ作用が示されています。
また、アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬(ARB)の中でもイルベサルタンには尿酸排泄を促すことで血液中の尿酸値を低下させる作用が知られています。
このような特徴により、臓器保護作用や尿酸値低下作用などを併せもつ高血圧治療薬がイルベサルタン(商品名:イルベタン、アバプロ)です。
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