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役に立つ薬の情報~専門薬学

カプトリル(カプトプリル)の作用機序:高血圧治療薬

 

高血圧であると、脳卒中や心筋梗塞などの合併症を防ぐために血圧を下げることを考えます。この時、血圧を下げるための概念は単純であり、「血圧を上げる物質の働きを抑制すれば良い」と考えます。

 

この血圧を上げる物質として、アンジオテンシンⅡという物質があります。そこで、この物質を何とかして抑制しようとするのです。

 

アンジオテンシンⅡに働きかけることで血圧を下げる薬としてカプトプリル(商品名:カプトリル)があります。カプトプリルはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

 アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の作用機序
アンジオテンシンⅡが関わる経路をレニン-アンジオテンシン系と呼びます。この経路に働きかけることでアンジオテンシンⅡの作用を抑え、血圧を下げます。

 

また、アンジオテンシンⅡは細胞の線維化にも関わっています。そのため、アンジオテンシンⅡを抑制する薬は心不全や腎硬化症などを防いでくれます。

 

このように、アンジオテンシンⅡを阻害することで臓器の保護作用も得ることができます。心臓や腎臓の機能を保護するのです。

 

アンジオテンシンⅡを抑える薬はいくつか種類が知られています。その中の1つとして、先に挙げたアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)があります。

 

アンジオテンシンⅡはその前駆物質であるアンジオテンシンⅠから作られます。このアンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡへと変換する酵素としてアンジオテンシン変換酵素(Angiotensin-Converting Enzyme:ACE)があります。

 

アンジオテンシンⅡはアンジオテンシン変換酵素によって生成されるため、このアンジオテンシン変換酵素を阻害してしまえばアンジオテンシンⅡが作られなくなります。アンジオテンシンⅡの産生を阻害するため、血圧を下げることができます。

 

 アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の作用機序

 

難しく考えなくても、「アンジオテンシン変換酵素を阻害することによって、アンジオテンシンⅡの産生を抑えられる」と理解できれば問題ありません。

 

このように、アンジオテンシン変換酵素の阻害作用によって高血圧状態を改善する薬がカプトプリル(商品名:カプトリル)です。

 

カプトプリルの臨床試験では、73.8%の患者さんでで血圧を下げる効果が認められました。

 

 

 アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)による空咳
アンジオテンシンⅡの産生に関与するアンジオテンシン変換酵素ですが、この酵素はブラジキニンと呼ばれる物質の分解にも関わっています。ブラジキニンは痛みを感じさせる「痛み物質」として知られています。

 

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)を投与すると、アンジオテンシンⅡの産生が抑制されて血圧が下がります。それと同時に、ブラジキニンの分解まで抑制されるため、ブラジキニンの濃度が高くなってしまいます。

 

その結果、副作用として空咳が起こります。

 

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の有名な副作用として空咳が知られています。この空咳はこのような作用機序によって起こります。

 

このように、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)であるカプトプリル(商品名:カプトリル)の副作用として空咳に注意しなければいけません。

 

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