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役に立つ薬の情報~専門薬学

ルプラック(トラセミド)の作用機序:心不全治療薬

 

心臓の機能が落ちてしまう病気として、心不全が知られています。心不全では、血液のポンプ機能が弱っているので血流が悪くなります。その結果、組織に水が溜まって体がむくんできます。いわゆる、浮腫の状態です。

 

そこで、心不全などによる浮腫を改善するために使用される薬としてトラセミド(商品名:ルプラック)があります。トラセミドはループ利尿薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 トラセミド(商品名:ルプラック)の作用機序
心臓は血液を全身に送る働きがあります。このとき、血液量が多いと、それだけ心臓に負担がかかります。少量の血液を送るのと大量の血液を送るのでは、当然ながら後者の方がたくさんの力を必要とします。心不全患者では、この負担を軽減しなければいけません。

 

そこで、体全体の血液量を減らします。具体的には、体内の水分を外へ排泄します。血液といっても、その大部分は水分です。つまり、「血液量=水分量」だと考えることができます。これに着目し、尿として水分を外に放出すれば、心不全による負荷を軽減できます。

 

尿が作られるのは腎臓です。腎臓で最初に尿が作られるとき、大量の尿が生成されます。このときの尿には糖やアミノ酸などの栄養素が入っています。

 

ただ、これら栄養素が排泄されるのは不都合です。そこで、腎臓から膀胱へと到達する間に、これらの栄養は血液の中へと吸収されます。これを、再吸収といいます。

 

同じことは水分にも起こっています。腎臓と膀胱を繋ぐ尿管では、水分の再吸収が行われています。これにより、尿の中の老廃物を凝縮していきます。

 

尿管はその場所によって、近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管、集合管と4つに分けることができます。この中でも、水の再吸収に関わる部位としてヘンレループがあります。そこで、ヘンレループからの再吸収を阻害すれば、大量の水分を尿として排泄できることが分かります。

 

 ループ利尿薬の作用機序

 

また、浮腫が起こっている場合、血液量が少なくなれば、浮腫を生じている部位から血液中へと水分が流れていきます。これにより、全身に溜まっている水を血液中へと移動させ、浮腫を軽減します。

 

このような考えにより、尿量を多くすることで心臓への負担を軽くし、全身の浮腫を改善させる薬がトラセミド(商品名:ルプラック)です。

 

なお、より詳しい話をすると、尿管の水はナトリウムと共に動きます。そこで、ナトリウムの再吸収を阻害すれば、結果として水の再吸収も抑制されます。トラセミド(商品名:ルプラック)はヘンレループに存在するナトリウムの再吸収を抑えるのです。

 

 

 トラセミド(商品名:ルプラック)の特徴
心不全による浮腫だけでなく、トラセミド(商品名:ルプラック)は腎臓や肝臓が原因によって起こる浮腫の治療に対しても使用されます。

 

同じ作用機序を有する薬としては、フロセミド(商品名:ラシックス)などが知られています。フロセミドに比べて、トラセミド(商品名:ルプラック)は約10~30倍の利尿作用があり、浮腫の抑制効果は約10倍であることが分かっています。

 

他の利尿薬は高血圧を治療するためにも使用されますが、トラセミド(商品名:ルプラック)には高血圧の適応はありません。その代わり、さまざまな浮腫の治療に利用されます。

 

ループ利尿薬の有名な副作用に低カリウム血症があります。ただ、トラセミド(商品名:ルプラック)はカリウムを保持する作用が他のループ利尿薬よりも強いため、低カリウム血症の副作用が表れにくいとされています。

 

ちなみに、この薬の半減期(体内で薬の濃度が半分になるまでの時間)は約2時間です。作用は約6~8時間持続します。

 

このような特徴により、あらゆる浮腫を改善するために使用され、その作用も強力である薬がトラセミド(商品名:ルプラック)です。

 

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