ラニラピッド(メチルジゴキシン)の作用機序:心不全治療薬
心臓は全身に血液を送り届けるための重要な臓器です。ただし、中には心臓の機能が弱ってしまうことにより、十分に血液を送り出せれない場合があります。この状態を心不全といいます。
そこで、これら心不全の症状を改善する薬としてメチルジゴキシン(商品名:ラニラピッド)が使用されます。メチルジゴキシンは強心配糖体と呼ばれる種類の薬になります。
メチルジゴキシン(商品名:ラニラピッド)の作用機序
心臓の収縮力が低下してしまうと、全身に十分な血液を送り出せなくなります。そのために血液の流れが滞ってしまいますが、この状態を「うっ血」と呼びます。特に心臓の機能が低下することで起こるうっ血状態を「うっ血性心不全」と呼びます。
そのため、このようなうっ血性心不全の状態を改善するためには、心筋の収縮力を増大させてしまえば良いことが分かります。この働きをする薬がメチルジゴキシン(商品名:ラニラピッド)です。
心筋の収縮に大きく関与する物質にカルシウム(Ca)があります。カルシウムの99%は骨や歯に存在しますが、残りの1%は記憶形成や神経伝達など、生命活動に不可欠な役割を担っています。そして、心臓の収縮力にもカルシウムが関わっています。
心筋細胞内のカルシウム濃度が上昇すると、収縮力が強まるように働きます。メチルジゴキシン(商品名:ラニラピッド)はカルシウム濃度を高める作用があるため、「心臓の収縮力が弱った状態」を改善させます。その結果、うっ血性心不全を治療します。
このような考えにより、心筋収縮力が弱っている状態を改善することにより、心不全を治療する薬がメチルジゴキシン(商品名:ラニラピッド)です。心臓に作用し、その働きを強めることを強心作用と呼びます。
メチルジゴキシン(商品名:ラニラピッド)の特徴
生薬として知られるジギタリスの成分にジゴキシン(商品名:ジゴシン)があり、このジゴキシンが強心作用を有する薬として利用されます。
ただし、ジゴキシンを口から投与したとき、腸からの吸収が悪いという欠点がありました。腸からの吸収が悪いと、個人差を生じやすくなります。ジゴキシンは有効域が狭いため、薬の使用によって個人差が生じるのは大きな問題です。
そこで、ジゴキシンと同程度の作用を有し、腸からの吸収を改善させた薬としてメチルジゴキシン(商品名:ラニラピッド)が開発されました。経口投与後、メチルジゴキシン(商品名:ラニラピッド)はほぼ100%の割合で腸から吸収されます。
また、速やかに薬としての作用を示すことが分かっており、メチルジゴキシン(商品名:ラニラピッド)を経口投与後、約5~20分で作用が表れます。
ただし、メチルジゴキシンは薬の有効域と中毒域が狭い薬です。そのため、過剰投与によって心室性期外収縮、房室接合部性頻拍、房室ブロックなどの不整脈が表れやすくなります。
高血圧、疲労、筋力低下などを引き起こす低カリウム血症を誘発することも知られているため、副作用に注意しながら薬を使用していきます。
このような特徴により、心臓の収縮力が弱っている状態を改善させ、心不全を治療する薬がメチルジゴキシン(商品名:ラニラピッド)です。
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