チラーヂンS(レボチロキシン)の作用機序:甲状腺機能低下症治療薬
甲状腺とは、喉に位置するハート型の臓器です。甲状腺からは、新陳代謝に関わるホルモンが分泌されます。
甲状腺の機能が弱くなってしまうと、新陳代謝の低下によってむくみや便秘、寒がり、気力がでないなどの症状が表れるようになります。
そこで、このような甲状腺の機能が低下している状態を治療する薬としてレボチロキシン(商品名:チラーヂンS)があります。レボチロキシンは甲状腺ホルモン製剤と呼ばれる種類の薬になります。
レボチロキシン(商品名:チラーヂンS)の作用機序
甲状腺機能低下症が起こる大きな原因として、甲状腺自体に問題が起こる「原発性」と自己免疫疾患によって起こる「橋本病」の2つが存在します。
原発性では、原因がはっきりせずに甲状腺の機能が落ちてしまいます。その結果、甲状腺ホルモンの分泌が少なくなることで病気を発症します。
また、免疫は病原微生物から身を守るために必要ですが、免疫系の暴走によって自分自身を攻撃してしまうことがあります。これを、自己免疫疾患と呼びます。
特に甲状腺に対する自己免疫疾患が橋本病です。免疫が甲状腺を攻撃することにより、甲状腺に炎症が起きてしまいます。この状態が続くことにより、甲状腺の機能が低下します。その結果、甲状腺ホルモンの分泌が少なくなります。
この時、甲状腺ホルモンの不足によって新陳代謝が低下しているため、甲状腺ホルモンを薬として外から補うことができれば、甲状腺機能低下症の症状を改善できることが分かります。
甲状腺自体の機能を回復させることは難しいですが、甲状腺ホルモンを補うことは可能であるということです。このような考えにより、甲状腺ホルモン製剤として開発された薬がレボチロキシン(商品名:チラーヂンS)です。
レボチロキシン(商品名:チラーヂンS)の特徴
甲状腺ホルモンには、その構造中にヨウ素(I)が3つ含まれた「トリヨードサイロニン(トリヨードチロニン:T3)」とヨード(I)が4つ含まれた「サイロキシン(チロキシン:T4)」の2種類があります。サイロキシン(T4)よりも、トリヨードサイロニン(T3)の方が甲状腺ホルモンとしての作用が数倍強いと言われています。
この中でも、レボチロキシン(商品名:チラーヂンS)の有効成分はサイロキシン(T4)です。サイロキシン(T4)として投与されたあと、体内でトリヨードサイロニン(T3)へと代謝された後に効果を発揮すると考えられています。
1日1回の投与で安定して薬の濃度を保つことができ、甲状腺ホルモンを補うときに一番に使用される薬です。
甲状腺ホルモン製剤の投与によって基礎代謝を増大させ、コレステロール量を減少させたり水・電解質の排泄を増加させたりすることが確認されています。
このような特徴を有し、「甲状腺ホルモンそのものを薬で補う」という考えによって甲状腺機能低下症を治療する薬がレボチロキシン(商品名:チラーヂンS)です。
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