ミドリンM(トロピカミド)の作用機序:散瞳薬
水晶体、硝子体液、網膜など、目の検査を行うときは瞳孔が大きく開いているほど行いやすいです。それだけ見える範囲が広がるため、確認しやすいのです。
そこで、眼に存在する筋肉の緊張を緩め、瞳孔を散大させる薬がトロピカミド(商品名:ミドリンM)です。トロピカミドは抗コリン薬と呼ばれる種類の薬になります。
なお、トロピカミドは仮性近視の治療に用いられることもあります。
トロピカミド(商品名:ミドリンM)の作用機序
瞳孔が開いたり縮小したりするとき、神経の働きが関わっています。あらゆる神経の中でも、瞳孔に関係する神経として副交感神経が知られています。
副交感神経とは、私たちが体を休めているときに働く神経系のことです。食事のときなど、休息時では胃液の分泌が盛んになり、薄い唾液が大量に出るようになります。そして、相手をしっかり見て闘争する必要もないため、瞳孔は縮小します。瞳孔が縮まるのは、瞳孔の筋肉(瞳孔括約筋)が縮小しようとするからです。
これら副交感神経の興奮に関わる物質として、アセチルコリンが知られています。つまり、「副交感神経が活発になる→アセチルコリンが分泌される→瞳孔括約筋が緊張し、縮まろうとする→瞳孔が縮小する」という流れになります。
そこで、アセチルコリンの働きを阻害します。すると、その反対の作用を得られるようになります。つまり、瞳孔括約筋の緊張(筋肉が縮まろうとする力)を和らげるため、瞳孔が開くようになります。こうして、眼の検査を行いやすくさせます。
このような考えにより、瞳孔の収縮や拡大に関わる筋肉に働きかけることにより、瞳孔を散大させて眼の検査をスムーズにさせる薬がトロピカミド(商品名:ミドリンM)です。
トロピカミド(商品名:ミドリンM)の特徴
アセチルコリンの働きを抑える薬を総称して抗コリン薬といいます。トロピカミド(商品名:ミドリンM)は作用時間の短い抗コリン薬であり、超短時間作用型の薬です。
臨床試験では、トロピカミド(商品名:ミドリンM)を点眼することで30分後に瞳孔径が最大になり、この効果が約1.5時間持続したことが分かっています。その後、24時間で回復していきます。
このような筋肉を弛緩させる作用から、仮性近視の治療にも用いられます。目のピントを合わすのは、水晶体(眼の中に存在するレンズ)です。仮性近視では、水晶体が膨らんでいます。
水晶体の厚みを変えるのは、目の筋肉によって調節されています。この筋肉を毛様体筋といいます。毛様体筋が緊張することで筋肉が縮まると、水晶体が膨らんでしまいます。これは一時的なものですが、この状態が続くと本当に近視になってしまいます。
そこで、トロピカミド(商品名:ミドリンM)を使用することで筋肉の緊張状態を取り去ります。その結果、筋肉が弛緩して水晶体が伸びるようになり、仮性近視の症状を抑えることができます。
なお、トロピカミド(商品名:ミドリンM)は「目を満たしている水(眼房水)を排泄するための管」を縮小させる作用が知られています。そのため、目の中に眼房水が溜まるようになり、眼圧が高くなりやすくなります。このような作用があるため、眼圧上昇によって目の機能が障害される「緑内障」の患者さんへトロピカミドは使用禁忌です。
これらの特徴により、点眼薬として使用することで、目に存在する筋肉の緊張を和らげて瞳孔を広げたり仮性近視を治療したりする薬がトロピカミド(商品名:ミドリンM)です。
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