ガバペン(ガバペンチン)の作用機序:抗てんかん薬
脳に存在する神経細胞の異常により、けいれんや意識消失などが起こる病気として「てんかん」が知られています。てんかん発作は「脳の電気的な嵐」と例えられますが、脳の異常な神経興奮によって、てんかん症状が引き起こされます。
そこで、てんかん発作を予防するために用いられる薬としてガバペンチン(商品名:ガバペン)があります。てんかんを治療するためだけでなく、ガバペンチンは神経痛の治療薬に用いられることもあります。
ガバペンチン(商品名:ガバペン)の作用機序
神経細胞が興奮するためには、刺激が起こらなければなりません。この刺激に関わるものとしてイオンが知られています。イオンには、興奮性のイオンとしてNa+やCa2+、抑制性のイオンとしてCl-が知られています。
通常、細胞内はマイナスの電荷へ傾いています。ここにプラスの電荷を帯びたNa+が外から入ってくると、細胞内は「マイナスからプラス」へと転換します。これが合図となって神経興奮が伝わっていきます。これが、Na+やCa2+が興奮性のシグナルと言われている理由です。
一方、Cl-はその反対の働きをします。マイナスの電荷を有するCl-が入ってくると、細胞内はよりマイナスへと傾きます。
この状態では、多少の興奮性シグナル(Na+、Ca2+)が入ってきたとしても、細胞内はプラスへと転換されません。つまり、神経興奮が抑制されます。
てんかん発作が起きているとき、異常な神経興奮が起きています。この状態を治療するためには、「Na+・Ca2+などの興奮性のシグナルを抑える」または「Cl-などの抑制性のシグナルを促進させる」ことを考えます。
ただ、ガバペンチン(商品名:ガバペン)の詳しい作用機序は分かっていませんが、従来の抗てんかん薬とは異なる作用メカニズムを有すると考えられています。
興奮性の神経にはCa2+が通過するための輸送体(Caチャネル)が存在します。ガバペンチンはCaチャネルを阻害することでCa2+の流入を抑え、神経伝達に関わる物質の放出を抑制します。
また、「Cl-の促進」に関わる物質が存在しており、これをGABAと呼びます。
抑制性の神経系にはGABAの流入に関わる輸送体(GABAトランスポーター)が存在します。ガバペンチン(商品名:ガバペン)はこの輸送体を活性化させ、抑制性神経系(GABA神経系)の機能を維持・増強させます。
ガバペンチン(商品名:ガバペン)は脳内のGABA量を増やすことも知られており、これが結果としてCl-の促進に関与していると考えられています。
このような作用により、興奮性シグナルの作用を弱めたり、抑制性シグナルの作用を強めたりすることで、てんかんによる脳の異常を抑える薬がガバペンチン(商品名:ガバペン)です。
ガバペンチン(商品名:ガバペン)の特徴
「イオンチャネル(Na+やCa2+を通過させる輸送体)に作用する既存の抗てんかん薬」とは異なる作用機序を有する薬がガバペンチン(商品名:ガバペン)です。作用機序が異なるため、他の抗てんかん薬で治療が難しかったとしても、ガバペンチン(商品名:ガバペン)で治療できるケースがあります。
また、ガバペンチン(商品名:ガバペン)は体内でほとんど代謝されません。肝臓の酵素を増やしたり阻害したりしないことから、他の抗てんかん薬との相互作用(飲み合わせ)が少ないと考えられています。
てんかんの治療薬だけでなく、じっとした姿勢を取っていると足にむずむずした不快感を生じるレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)の治療に用いられることがあります。レストレスレッグス症候群は不眠の原因になります。
神経の損傷による痛み(神経性疼痛)の治療薬として使用されることもあり、幅広い疾患に対してガバペンチン(商品名:ガバペン)は有効です。
このような特徴により、てんかんやレストレスレッグス症候群、神経性疼痛の治療薬として活用される薬がガバペンチン(商品名:ガバペン)です。
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