リポバス(シンバスタチン)の作用機序:脂質異常症治療薬
「血液中に含まれるコレステロール」と「虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)」は大きく関わっています。これらコレステロール値に異常が起こっている病気として脂質異常症があります。
そのため、血管に関わる病気を予防するためにも、血液中のコレステロールを適切にコントロールすることが重要になります。そして、これら血液中の脂質を是正する薬としてシンバスタチン(商品名:リポバス)があります。
シンバスタチンはスタチン系薬と呼ばれる種類の薬になります。
シンバスタチン(商品名:リポバス)の作用機序
コレステロールは主に肝臓で合成されます。食事から摂取されるコレステロールは以外に少なく、その80%は肝臓由来のコレステロールになります。
そのため、肝臓でのコレステロール合成を抑制できれば、効率よく血液中のコレステロール値を抑制できることが分かります。
この時、コレステロールの合成には酵素が関わっており、この酵素をHMG-CoA還元酵素と呼びます。この時の様子を下図に示しています。
難しい単語はさておき、「HMG-CoA → メバロン酸」の部分でHMG-CoA還元酵素が関わっていることが分かります。そのため、HMG-CoA還元酵素を阻害する事ができれば、それより下にあるコレステロール合成まで抑制できる事を理解できます。
このような作用をする薬がHMG-CoA還元酵素阻害薬であり、別名「スタチン系薬」と呼ばれます。このようなスタチン系薬としてシンバスタチン(商品名:リポバス)があります。
シンバスタチン(商品名:リポバス)の特徴
医薬品の中でも、シンバスタチンはプロドラッグと呼ばれる薬になります。プロドラッグとは「体の中に入った後で代謝され、ようやく薬として作用を示すようになる物質」を指します。
普通、薬と言えば「そのものの構造」が医薬品として効果を発揮するようになります。しかし、プロドラッグの場合はそのままの形では薬として作用を発揮することができません。それでは、どうするかと言うと、肝臓などで代謝を受けます。
代謝を受けると、薬の構造が変化します。この時、医薬品によっては「代謝を受けることで、ようやく薬として効果を表すようになる」という事があります。このような薬がプロドラッグです。
上図において、左にあるシンバスタチン(商品名:リポバス)の構造のままでは、薬として作用することはありません。しかし、肝臓で代謝されて右の構造へと変化すると、ようやくコレステロール合成を抑制する効果を得られるようになります。そのため、シンバスタチンはプロドラッグの1つとなります。
「なぜシンバスタチンをプロドラッグ化したか」についてですが、上図の右にあるシンバスタチン活性体の構造のままでは腸からの吸収が悪いからです。そのため、薬を服用しても効果を表しにくかったのです。
そこで、腸からの吸収を改善するためにプロドラッグにしました。すると、吸収率も改善されて効率よく薬を届けることが可能になりました。このような工夫が施された薬がシンバスタチン(商品名:リポバス)です。
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