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レパーサ(エボロクマブ)の作用機序:高コレステロール血症治療薬

 

血液中に存在する脂質の量が異常になることを脂質異常症といいます。その中でも、血液中のコレステロール値が異常に高くなってしまうことを高コレステロール血症といいます。

 

高コレステロール血症を放っておくと、狭心症や心筋梗塞などの心臓疾患のリスクを高めてしまいます。また、動脈硬化を加速させることにより、さまざまな疾病を発症させてしまいます。

 

そこで、高コレステロール血症を改善させることにより、心血管系の病気の発症を予防する薬としてエボロクマブ(商品名:レパーサ)があります。エボロクマブは抗体医薬品であり、より詳しくいうとPCSK9阻害薬という種類の薬になります。

 

 

 家族性高コレステロール血症(FH)とは
脂質異常症の中でも、エボロクマブ(商品名:レパーサ)は家族性高コレステロール血症に対して主に用いられます。家族性高コレステロール血症(FH)とは、生まれつき血液中のコレステロール値が高い人のことを指します。

 

コレステロールにはいくつか種類があります。その中でも、「血管壁や細胞などにコレステロールを送り届ける」という役割をするものをLDLコレステロール(LDL-C)といいます。コレステロールは細胞膜やホルモンの原料になるため、LDLコレステロールは体にとって必要不可欠な存在だといえます。

 

ただ、家族性高コレステロール血症など、中には遺伝的な要因によってLDLコレステロールが異常に増えてしまっている方がいます。この場合、LDLコレステロールの働きによって血管壁などに大量のコレステロールが付着し、心血管系の病気が引き起こされやすくなります。これでは不都合であるため、LDLコレステロールの働きを抑制しようとするのです。

 

 エボロクマブ(商品名:レパーサ)の作用機序
通常、血液中に存在するLDLコレステロールは肝臓に取り込まれて分解されます。もっと詳しく言えば、肝臓に存在する「LDL受容体」という部分がLDLコレステロールを認識し、肝臓内に取り込むことでLDLコレステロールを分解します。ただ、肝臓に存在するLDL受容体に異常があれば、血液中に存在するLDLコレステロールを取りこめなくなります。

 

家族性高コレステロール血症では、遺伝的にLDL受容体やそれに関係する遺伝子に異常があります。そのため、生まれつき血液中のLDLコレステロール値が高くなってしまうのです。

 

遺伝子は両親から受け継ぎますが、一方の親から受け継いだ家族性高コレステロール血症の遺伝子を「FHヘテロ接合体」といいます。FHヘテロ接合体の患者さんは500人に1人の割合であり、日本国内では25万人ほどいるとされています。

 

また、両方の親から病的遺伝子を引き継いだ家族性高コレステロール血症では「FHホモ接合体」といいます。FHホモ接合体は100万人に1人といわれています。

 

このとき、家族性高コレステロール血症ではLDL受容体に異常があるとはいっても、必ずしもまったく機能がなくなっているというわけではありません。そこで、何とかしてLDL受容体の絶対数を上げることができれば、LDLコレステロールを肝臓へと取り込めるようになります。

 

肝臓に存在するLDL受容体は、あるタンパク質がきっかけとなって分解されます。このタンパク質を専門用語でPCSK9といいます。PCSK9が存在することによってLDL受容体が分解されると、血液中のLDLコレステロールは肝臓へ取り込まれなくなります。

 

そこで、LDL受容体の分解に関わるPCSK9の働きを阻害すれば、肝臓のLDL受容体の数が増え、結果としてLDLコレステロール値が下がるようになります。そうして血液中のコレステロール値を正常な値へと戻していくのです。

 

 レパーサ(エボロクマブ)の作用機序:高コレステロール血症治療薬

 

このような考えにより、LDL受容体の分解に関わるタンパク質(PCSK9)の働きを阻害することにより、肝臓へ効率的にLDLコレステロールを取りこむようにさせて高コレステロール血症を治療しようとする薬がエボロクマブ(商品名:レパーサ)です。

 

 

 エボロクマブ(商品名:レパーサ)の特徴
医薬品の中でも、エボロクマブ(商品名:レパーサ)は抗体医薬品と呼ばれます。感染症に罹ると、抗体がつくられることは有名です。抗体は「特定の物質に結合し、その機能をなくす」という性質があります。そこで、PCSK9というタンパク質へ結合する抗体を創出することにより、その働きを無効化しようと考えたのです。

 

家族性高コレステロール血症や高コレステロール血症の患者さんに対して、2週間に1度、または4週間に1度の投与によって脂質異常症を改善させる薬がエボロクマブ(商品名:レパーサ)です。

 

LDLコレステロールを改善させ、脂質異常症を治療する薬としてはスタチン系薬と呼ばれる種類の薬が多用されます。ただ、中にはスタチン系薬を活用しても、LDLコレステロール値を適切にコントロールできない方がいます。そのようなとき、エボロクマブ(商品名:レパーサ)を用います。

 

エボロクマブ(商品名:レパーサ)はスタチン系薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)でも効果不十分の場合にのみ用いられ、基本的にはスタチン系薬との併用で用いられます。

 

臨床試験では、スタチン系薬に追加してエボロクマブ(商品名:レパーサ)を投与することにより、優位にLDLコレステロール値を下げることが確認されています。また、48週など長期にわたって効果が持続することも分かっています。

 

エボロクマブ(商品名:レパーサ)の主な副作用としては、糖尿病、注射部位反応、肝酵素異常、CK(CPK)上昇、頚動脈内膜中膜肥厚度増加、筋肉痛などが知られています。

 

このような特徴により、家族性高コレステロール血症や高コレステロール血症の患者さんに投与され、脂質異常症を改善させる薬がエボロクマブ(商品名:レパーサ)です。

 

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