リピトール(アトルバスタチン)の作用機序:脂質異常症治療薬
血液中の脂質に異常が起こる病気として脂質異常症(高脂血症)があります。血管壁に脂質が溜まると、動脈硬化として脳卒中や心筋梗塞を引き起こしてしまいます。
これらの病気は死に直結し、特に脳卒中では寝たきりの原因にもなります。そのため、これらの疾患を避けるために血液中の脂質を適切にコントロールします。このために薬を使用することがあります。
脂質異常症治療薬として多用される医薬品に、スタチン系薬と呼ばれる種類の薬があります。
このスタチン系薬の中でも、特許が切れる前に全世界で1年間に2兆円以上売り上げていた薬があります。このような薬としてアトルバスタチン(商品名:リピトール)があります。
スタチン系薬の作用機序:HMG-CoA還元酵素阻害薬
食事中からコレステロールを取ることができますが、実は食事由来のコレステロールは全体の20%程度です。残りの80%のコレステロールは肝臓で合成されます。
そのため、血液中のコレステロールをコントロールするには「肝臓でのコレステロール合成を阻害すること」が効率的であると分かります。そこで、肝臓でコレステロールが生成される過程を理解した上で、薬の作用機序を理解していきます。
肝臓で行われるコレステロール合成を表すと以下のような図になります。
少し複雑ですが、この中で重要となる酵素としてHMG-CoA還元酵素があります。この酵素がコレステロール合成の速度を決定しています。
そのため、コレステロール合成で最も重要となるHMG-CoA還元酵素を阻害すれば、全体のコレステロール合成も抑制されることが分かります。HMG-CoA還元酵素を阻害するため、このような薬をHMG-CoA還元酵素阻害薬と呼びます。
そして、このHMG-CoA還元酵素阻害薬の別名がスタチン系薬です。このように、HMG-CoA還元酵素を阻害することでコレステロール合成を抑制する薬がアトルバスタチン(商品名:リピトール)です。
HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)のより詳しい作用機序
コレステロールにはいくつか種類があり、その中でも動脈硬化を引き起こすコレステロールとしてLDLコレステロールがあります。悪玉コレステロールと呼ばれ、このLDLコレステロールを減らすことで脂質異常症を治療していきます。
前述の通りHMG-CoA還元酵素を阻害することによって「肝臓でのコレステロール合成」を抑制することができます。その結果、肝臓の中に溜められていたコレステロールの絶対量が減っていきます。
肝臓に蓄えられていたコレステロール量が減るため、この減った分のコレステロールを「血液中に存在するコレステロール」から補おうとします。具体的には、肝臓に存在するLDL受容体の数を増加させます。
※LDL受容体:LDLコレステロールを取り込むための受容体
肝臓のLDL受容体の数が増えるので、その分だけ血液中のLDLコレステロールが肝臓に取り込まれるようになります。これによって、血液中のLDLコレステロール値を下げることができます。
① HMG-CoA還元酵素を阻害することによって、肝臓でのコレステロール合成を抑制
② 肝臓のコレステロールプール量が減るため、これを補うために肝臓のLDL受容体が増加
③ 肝臓のLDL受容体が増加しているため、血液中のコレステロールが肝臓へと移動
④ 血液中のコレステロールが肝臓へ移動するため、コレステロール値が下がる
このような作用機序によって、アトルバスタチン(商品名:リピトール)は血液中のLDLコレステロールを下げます。
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