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役に立つ薬の情報~専門薬学

プルゼニド(センノシド)の作用機序:便秘症治療薬

 

栄養をとるために食事は必須です。食事に含まれる栄養が腸から吸収された後、最後は外へ排泄されなければいけません。ただ、人によってはなかなか糞便として排泄されないことがあります。これを便秘といいます。

 

そこで、便秘を治療するために使用される薬としてプルゼニド(一般名:センノシド)があります。プルゼニドは大腸刺激性下剤と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

プルゼニド(一般名:センノシド)の作用機序

 

便秘が続くと、便が固くなります。これは、大腸が水分の吸収に関わっているからです。便秘が長引くということは、便が腸の中に長くとどまることを意味します。その分だけ便から水分が抜けていくため、便は固く小さくなります。

 

便の大きさが小さくなると、それだけ腸への刺激が少なくなります。その結果、さらに便秘が悪化するという悪循環に陥ります。

 

腸の運動が弱くなると、それだけ便が肛門側へ押し出されなくなります。これによって便が出されにくくなり、便秘に陥ります。そこで、大腸の動きを活発にすることができれば、便秘を改善できることが分かります。このときに薬を使用します。

 

植物由来の成分の中で、センナと呼ばれるものがあります。センナは生薬(しょうやく)の1つであり、植物に含まれる成分が薬としての作用を示します。

 

センナにはセンノシド(アントラキノン系誘導体)と呼ばれる物質が含まれています。この物質は腸内細菌によって分解され、大腸を刺激する物質へと変換されます。これがきっかけとなり、大腸の運動(蠕動運動)が活発になります。その結果、便が肛門側へ押し出されるようになります。

 

腸の動きが活発になり、便が動くようになると、便秘も解消されます。大腸を動かすことにより、便通を改善するのです。

 

大腸刺激性下剤

 

このような作用機序により、大腸を刺激することで便秘を治療する薬がプルゼニド(一般名:センノシド)です。センナに含まれる有効成分(センノシド)を取り出した薬です。

 

プルゼニド(一般名:センノシド)の特徴

 

便秘を解消する薬の中でも、センノシド(商品名:プルゼニド)は素早く効果を表します。通常、投与後8~10時間後には効果が表れると考えられています。そのため、寝る前に服用すると、朝起きるころに便通があります。

 

便秘改善効果の高い薬ですが、長期間の服用は避けなければいけません。まず、服用期間が長いと効果が落ちてきます。プルゼニドによる大腸刺激に対して、「慣れ(耐性)」が生じるためです。

 

プルゼニド(一般名:センノシド)は刺激性の便秘薬であり、大腸へ刺激を与えることで排便を促します。ただ、大腸のこの刺激に慣れて耐性をもってしまうことがあるのです。

 

また、効き目が悪くなってきたからといって量を増やしていると、次第に薬がなければ排便できない「下剤依存症」に陥る可能性があります。自然排便が困難になって下剤に頼らなければいけない体になってしまうため、安易に大腸刺激性の薬に頼るのはよくありません。

 

ただ、適切に使用する分には有用な薬であるため、バランスを考えながら服用していく必要があります。何ヶ月にもわたって服用し続けるのではなく、一定期間だけプルゼニド(一般名:センノシド)を使用するようにしましょう。

 

副作用の少ない安全性の高い薬ですが、腸の運動を活発にするために腹痛を生じることがあります。また、便秘を改善させるということは、その作用が強すぎると下痢になることを意味します。このように、腹痛や下痢が主な副作用として知られています。

 

このような特徴により、大腸へ刺激を与えることで強力な便秘改善作用を示す薬がプルゼニド(一般名:センノシド)です。

 

 

プルゼニド(一般名:センノシド)の効能効果・用法用量

 

プルゼニド(一般名:センノシド)の適応症は便秘です。便が出ないことに対して、プルゼニドを活用するのです。

 

薬としては、プルゼニド12mgがあります。これを1日1回12~24mgを就寝前に服用します。年齢や症状によって増量することができ、高度の便秘には最大量48mgまで増やすことができます。

 

就寝前(寝る前)に服用する理由としては、夜眠っている間に薬の作用を示し、朝起きたときに排便できるように調節することが目的です。

 

服用のタイミングが合わず、飲み忘れなどがある場合は一般的な薬と同じように食後に服用しても問題ありません。食前や空腹時(食間)で飲んでも大きな問題は起こりません。

 

便通改善を目的とした薬であるため、薬を服用するときは多めの水で飲むようにしましょう。便の水分量を増やし、ウンチを出しやすくするためです。このとき、コップ一杯(200cc)以上の水と一緒に服用するといいです。

 

患者さんによっては一包化や半錠、粉砕を行いますが、プルゼニドでは一包化・粉砕は問題ありません。成分の安定性を含め、粉砕しても薬としての効果は大丈夫です。

 

プルゼニド(一般名:センノシド)の副作用

 

そこまで大きな副作用のないプルゼニド(一般名:センノシド)ですが、前述の通り主な副作用としては腹痛(胃痛)、下痢、腹鳴、悪心・嘔吐などの消化器症状があります。

 

大腸へ刺激を与えて腸を動かすため、それによって腹痛を引き起こすことがあります。また、便秘症状を改善するので、症状が改善しすぎると反対に下痢になってしまいます。

 

その他、頻度は少ないですが発疹(じんましん、アレルギー反応)、脱水、血圧低下、腎障害、肝障害(ALT、AST、γ-GTPなど肝臓検査値の増大)、着色尿、疲労などの副作用が確認されています。着色尿として、尿が黄褐色または赤色になることがあるものの問題はありません。

 

プルゼニド(一般名:センノシド)の投与禁忌・注意の患者さん

 

中には、プルゼニド(一般名:センノシド)の使用が禁忌であったり、注意すべきであったりする患者さんが存在します。

 

まず、急性腹症が疑われる患者さんは禁忌です。激しい痛みを伴う腹痛(胃痛)の総称を急性腹症と呼び、急性腹症には急性虫垂炎(盲腸)、急性胆嚢炎、急性胆管炎、急性膵炎、腸閉塞(ヘルニア)などがあります。こうした患者さんに投与すると、腹痛が悪化するリスクが高まります。

 

けいれん性便秘の患者さんにも禁忌です。便秘には種類があり、そのうち多いのが弛緩性便秘とけいれん性便秘です。弛緩性便秘では高齢や生活習慣などによって腸の運動が弱まっているため、プルゼニドを投与することで腸運動を活発にさせれば便秘症状が改善します。

 

一方でけいれん性便秘の場合、ストレスなどによって腸の一部が収縮し、ウンチを正常に直腸へと送り出せない状態になっています。

 

けいれんを引き起こしているため、弛緩性便秘とは反対に腸は過敏になっています。この状態のときに大腸へ刺激を与えるプルゼニドを投与すると、さらに腸が過敏になって腹痛などの症状を悪化させます。

 

また、重症の硬結便(黒くて固い便)の患者さんも投与禁忌です。プルゼニドによって効果を得られず、反対に腹痛症状を悪化させるリスクがあるからです。

 

電解質失調(特に低カリウム血症)の人への大量投与も禁忌であり、排便を促すことで水分消失(脱水)になり、電解質の異常を進める可能性があります。低カリウム血症では動悸、筋力低下、倦怠感などを感じるようになります。

 

なお、腹部手術後の患者さんは慎重投与です。消化管運動を亢進させるため、腸が活発に動くことで手術部位に痛みを生じるようになる恐れがあるからです。消化管の手術をした後にプルゼニド(一般名:センノシド)を使用するのは注意しなければいけません。

 

このように使用禁忌の患者さんはいるものの、プルゼニド(一般名:センノシド)について、併用禁忌や併用注意の薬は設定されていません。他の便秘薬との併用を含め、大きな飲み合わせは起こらない薬です。

 

解熱鎮痛剤として頭痛などの痛みに活用されるロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)や睡眠薬マイスリー(一般名:ゾルピデム)、ステロイド剤プレドニン(一般名:プレドニゾロン)、整腸剤ビオフェルミン、ビオスリー、ミヤBM、さらにはその他抗生物質などを含め、一般的に活用される薬との飲み合わせも問題ありません。

 

 

高齢者・透析患者への使用

 

高齢者であってもプルゼニド(一般名:センノシド)は頻用されます。高齢になると腸機能が衰え、便秘になることがあるので薬を使用するのです。

 

ただ、高齢者では一般的に生理機能が弱っているため、副作用に注意しなければいけません。また、前述の通り長期服用によって耐性(習慣性)を生じるため、長期での使用は控えた方がいいです。

 

ちなみに、透析患者さんでは水分摂取が制限されているため、便秘を訴える確率が高いです。プルゼニドは腎機能が弱っている透析患者であっても使用することができます。

 

小児(子供)への使用

 

小児に対して「安全性は確立していない」とされていますが、実際には子供にもプルゼニド(一般名:センノシド)を活用することがあります。この場合、7~12歳の小児ではプルゼニド12mgを1日1回投与します。

 

ただ、子供の便秘については顆粒や坐剤など他の薬があります。そのため、そちらの薬を利用することの方が多いです。

 

例えば、プルゼニドと同じようにセンノシドを有効成分とする薬にアローゼン(一般名:センナ、センナジツ)があります。アローゼンは顆粒製剤であり、子供に合わせて用量を調節しやすいです。

 

アローゼン顆粒では「1~6歳:0.15~0.3g/回 1日1~2回」「7~12歳:0.3~0.4g/回 1日1~2回」で使用します。成分量ではなく、製剤量でアローゼンの量を測ります。

 

また、酸化マグネシウム(カマグ)も便秘薬として多用されますが、このときは「1日0.05mg/kgを3回に分けて服用」していきます。坐剤もあり、テレミンソフト坐剤(一般名:ビサコジル)や新レシカルボン坐剤など、坐剤の量を調節して投与することもあります。ラキソベロン液(一般名:ピコスルファート)という、液剤もあります。

 

7歳以上の小児であれば、プルゼニドを使用しても問題ありません。ただ、7歳未満であると錠剤の調節が難しいため、低出生体重児、新生児(赤ちゃん)、乳児などに対しては、その他の粉薬(顆粒など)や坐剤、液剤などを用いるのが基本です。

 

妊婦・授乳婦への使用

 

妊娠中の人にプルゼニド(一般名:センノシド)を使用するのは原則禁忌です。プルゼニドは長年使用されており、胎児への催奇形性などの問題はないものの、大量使用によって子宮収縮を誘発することがあります。

 

これはつまり、流産や早産のリスクが高まることを意味しています。そのため、妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期(臨月を含む)と時期に関わらず妊婦はできるだけプルゼニドの使用を控えた方がいいです。下剤には他にも安全性の高い薬があるため、そちらを活用するのが一般的です。

 

授乳中の方については、「授乳を避けさせることが望ましい」とされています。ただ、通常の投与量であれば母乳を与えても問題ありませんし、授乳婦であってもプルゼニドは一般的に活用されます。

 

添付文書には「授乳婦がプルゼニドを使用することで乳児に下痢がみられた」という報告があります。ただ、乳児が下痢をするのは日常茶飯事なので本当に薬による影響なのか不明ですし、産後の便秘にプルゼニドを活用して大きな問題になったという報告はありません。

 

 

プルゼニド(一般名:センノシド)の効果発現時間

 

プルゼニドは腸内に移動した後、腸内細菌によって代謝されてレインアンスロンという物質が生成され、この物質によって腸管運動が活発になります。薬の有効成分が腸内で吸収され、血液中を巡って作用する薬ではないため血中濃度(血液中の薬物濃度)や半減期(薬の濃度が半分になる時間)などはありません。

 

ただ、一般的に薬を服用して8~10時間後に排便効果が表れてくるといわれています。人によって作用時間は異なるので一概にはいえませんが、日本人の平均睡眠時間は7時間ほどであるため、寝る前に薬を飲むことで翌朝の快便を実現しやすくなります。

 

もちろん、どうしても服用するタイミングが合わない場合は朝服用や昼服用をしても問題ありません。この場合、夕方や夜に薬の効果が表れてくるようになります。夕食後での服用も大丈夫です。

 

なお、プルゼニド(一般名:センノシド)は便秘を改善させるだけでなく、他の使われ方も存在します。どのような活用法があるのかについては、例えば以下のようなものがあります。

 

大腸内視鏡の排便促進

 

大腸がんや潰瘍性大腸炎、血便などの腸疾患を含め、大腸の内視鏡検査を行うとき、直腸に便が詰まっていると内視鏡を入れることができません。また、大腸に大量のウンチが存在したままであると、内視鏡によってうまく検査できません。

 

そこで大腸内を掃除するため、検査前に下剤を服用することになります。このときの下剤として、プルゼニドが活用されるのです。

 

大腸内視鏡検査前は他にも下剤であるラキソベロン内容液(一般名:ピコスルファート)、マグミット・マグラックス(一般名:酸化マグネシウム)や消化管運動改善薬ガスモチン(一般名:モサプリド)を一緒に処方されることがあります。

 

大腸検査用の便通促進剤マグコロール(一般名:クエン酸マグネシウム)やニフレックなども活用されます。その場ですぐに排便を促すグリセリン浣腸も大腸内視鏡検査に欠かせません。これらの薬について、プルゼニドと併用しても飲み合わせはありません。

 

なお、大腸検査では絶食する必要があります。このとき、絶食時であっても水やお茶などの水分補給は問題ありません。

 

ちなみに、病院での検査ではバリウムを活用することがあります。検査後、バリウムの排泄を促すため、多めの水と一緒にプルゼニドを服用するケースは多いです。手術前についても、大腸内をキレイにするためにプルゼニドを用いることがあります。

 

痔の治療

 

痔を治療するときにプルゼニドを用いることがあります。プルゼニドは便秘を解消させますが、なぜ便秘になるのかというと大腸内に便が長くとどまることで、ウンチが固く小さくなるからです。

 

そこで大腸の動き(蠕動運動)を活発にして早く排便を促すようにすれば、便は柔らかい状態(軟便)のままで外に出てくるようになります。

 

痔の症状はさまざまですが、その中には「固い便によって肛門が切れる切れ痔」があります。こうした症状を改善するためには、便を柔らかくすることが重要です。そこで、痔の治療に用いられるのです。

 

腸内環境を改善するための使用

 

便秘で悩んでいる人の中には、腸内環境を改善することを考えている人がいるかもしれません。便が腸内に溜まることで毒素が排出されず、結果として肌荒れやニキビ、むくみなどの症状が起きてしまうため、これを解消するのです。

 

このとき一時的にプルゼニド(一般名:センノシド)を使用するのは問題ありませんが、前述の通り耐性(習慣性)の問題があるため、漫然と使用し続けるのは避けるのが望ましいです。

 

ちなみに、腸内の壁にこびりついて残っている便として「宿便」という概念があります。ただ、宿便は医学的に存在しないため、デトックスのために宿便を解消しようとするのはあまり意味がありません。

 

その他の便秘薬

 

下剤には種類があるため、症状に合わせて使い分けていきます。緩下剤として穏やかに作用し、耐性もほとんど表れない薬としてはマグミット・マグラックス(一般名:酸化マグネシウム)があり、便秘解消で多用されます。

 

また、プルゼニドと同じようにセンナを含む薬であれば、ヨーデルSやアローゼンがあります。アローゼンは前述の通り顆粒であり、小児であっても活用されやすいという特徴があります。

 

同じ大腸刺激薬の中でも、液体製剤で活用できるのがラキソベロン内用液(一般名:ピコスルファート)です。

 

プルゼニドとラキソベロンを比べたとき、どれだけの換算になるのかというと「プルゼニド錠12mg 1錠 = ラキソベロン内用液6滴」になります。このときの換算は覚えるしかありません。

 

他にはテレミンソフト坐剤(一般名:ビサコジル)や新レシカルボン坐剤も大腸刺激性の薬です。アミティーザ(一般名:ルビプロストン)も便秘薬として活用されます。

 

基本的にこれらの便秘薬とプルゼニドの併用は問題ありませんが、下痢や腹痛などの副作用が表れやすくなることについては注意が必要です。

 

なお、アルコール(お酒)と一緒に服用するのは一般的にあまり勧められませんが、一緒に服用しても大きな問題になることは少ないです。ただ、下痢などの副作用は増える可能性があります。

 

このように、便秘に対して多く活用される薬がプルゼニド(一般名:センノシド)です。プルゼニドにはジェネリック医薬品(後発医薬品)も存在し、薬価も安い薬なので手軽に活用できるものの、長期連用には注意が必要です。

 

ちなみに、朝に冷えた水や牛乳などを飲むと腸運動が活発になって便秘解消に良いとされています。薬だけでなく、こうした生活習慣の改善も重要です。

 

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