プロクトセディルの作用機序:痔の治療薬
日常的な疾患として、痔(ぢ)は多くの人に起こる病気です。痔を生じると、排便時に出血があったり激しい痛みが起こったりします。
そこで、これら痔の症状を改善するために使用される薬としてプロクトセディルがあります。プロクトセディルは痔疾治療剤と呼ばれる薬になります。
プロクトセディルの作用機序
痔には種類があります。そこで、どの種類の痔を発症しているのか見極める必要があります。痔には、以下のような種類が存在します。
・痔核(いぼ痔):直腸や肛門のクッション部分に腫れが起こり、核のようななった状態
・裂肛(切れ痔):排便時、肛門に傷がついた状態
・痔瘻(あな痔):細菌感染により、直腸からおしりへトンネルのような穴ができた状態
この中でも、直腸内にできる痔核は出血が多いものの、痛みは少ないことが知られています。これは、直腸は痛みに対して鈍感であるためです。一方、裂肛は出血が少ないものの、激しい痛みを伴います。これは、肛門側は痛みに対して敏感であるためです。
痔瘻は手術などによって治療するため、薬を使用するのは痔核や裂肛などに対してです。これら痔核や裂肛では、固い便によって直腸や肛門に傷がつき、炎症を生じています。そこで炎症を鎮めれば、これらの症状を軽減できます。
プロクトセディルには、炎症を抑える物質が含まれています。これにより、肛門周辺が傷つくのを防ぎます。このような考えにより、炎症を抑制することで患部の浮腫やそう痒(かゆみ)などを軽減し、症状を緩和する薬がプロクトセディルです。
プロクトセディルの特徴
プロクトセディルには4つの成分が含まれています。それぞれ、ヒドロコルチゾン(ステロイド剤)、フラジオマイシン(抗菌薬)、ジブカイン(局所麻酔薬)、エスクロシド(止血薬)です。
ステロイド剤は強力な抗炎症作用を有する物質として有名です。口からステロイドを服用する場合は副作用が強いですが、坐剤や軟膏として利用する場合は大きな問題は起こりません。患部にだけ作用するため、強力な抗炎症作用を得つつ、副作用は少ないです。
また、痔では炎症や浮腫が起こっているため、細菌による二次感染を起こすことがあります。そこで、抗菌薬を使用することで二次感染を防止します。フラジオマイシンはアミノグリコシド系抗生物質と呼ばれる種類の薬です。細菌のタンパク質合成を阻害することで殺菌作用を示し、細菌感染を防止します。
また、痔によって痛みが起こると、排便時に心理的な負担がのしかかります。その結果、排便を避けるようになります。ただ、排便までの時間が長くなるほど、便の水分が抜けて固く小さくなります。こうして、排便時に固い便が傷をつけるため、痔が悪化します。
そこで痛みを軽減できれば、心理的な負担を抑えることができます。ジブカインは局所麻酔薬であり、痛みのシグナルが伝わらないようにします。これにより、排便時の疼痛(痛み)を軽減します。
さらに、痔では出血を生じているため、これを止めなければいけません。エスクロシドは血管壁を強化する作用や血管透過性(物質が血管が透過する性質)を防止して浮腫を抑制する働きが知られています。これらの作用によって、止血します。
プロクトセディルには、坐剤と軟膏があります。症状により、使いやすい方を活用していきます。痔核・裂肛の症状(出血、疼痛、腫脹、痒感)を緩和するだけでなく、肛門周囲の湿疹・皮膚炎にもプロクトセディルが使用されます。臨床試験では、坐剤と軟膏の両方とも90%以上の有効性を示したことが分かっています。
このような特徴により、4つの有効成分によって炎症を抑えたり痛みを鎮めたりして、痔の症状を緩和する薬がプロクトセディルです。
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