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サイトテック(ミソプロストール)の作用機序:胃潰瘍治療薬

 

胃潰瘍では、胃に炎症が起こっています。これによって胸がムカムカしたり、お腹のあたりが痛くなったりします。

 

そこで、これら胃潰瘍の症状を改善するために使用される薬としてミソプロストール(商品名:サイトテック)があります。ミソプロストールはプロスタグランジン製剤と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

 ミソプロストール(商品名:サイトテック)の作用機序
潰瘍が起こる一番の原因としては胃酸があります。胃酸の正体は塩酸であるため、強い酸性によって様々な金属を腐食させるほど強力な作用を示します。この酸によって食物中の細菌を殺し、食物の消化を助けます。しかし、その強力な作用から、胃そのものに対しても侵食する作用があります。

 

胃が傷害されてしまうと問題であるため、胃には胃酸による攻撃から守るためにベールがかけられています。このベールとしての役割を果たすものとして粘液があります。粘液が存在するために、胃は胃酸による侵食を受けることがなくなります。

 

胃酸のように相手を攻撃する物質を攻撃因子と呼び、粘液のように胃酸からの攻撃から守る物質を防御因子と呼びます。正常な方であれば、攻撃因子と防御因子のバランスが保たれています。

 

しかし、胃潰瘍患者では胃酸が過剰になって攻撃因子の割合が大きくなったり、粘液の量が減って防御因子が減少したりしています。そのために攻撃因子と防御因子のバランスが崩れ、胃潰瘍を発症してしまいます。

 

 胃潰瘍の発生機序:攻撃因子と防御因子

 

この状態を改善するためには、「防御因子を増強させる」という方法が有効であると分かります。胃酸からの攻撃から守るために粘液などの防御因子を増やすのです。

 

この時に重要となる物質としてプロスタグランジンがあります。プロスタグランジンは胃粘膜の血流を改善する作用などによって、防御因子を増強する働きがあります。つまり、胃に存在するプロスタグランジンを補うことができれば、胃潰瘍を治療することができます。

 

このような考えによって創出された薬がミソプロストール(商品名:サイトテック)です。プロスタグランジンの中でも、ミソプロストールはPGE1(プロスタグランジンE1)と呼ばれる種類の製剤になります。

 

 

 ミソプロストール(商品名:サイトテック)の特徴
プロスタグランジン自体はとても不安定な物質です。そこで、PGE1の構造を変化させることで、「PGE1の作用を有しながらも、経口投与が可能であるくらい安定な物質」として作り出された薬がミソプロストール(商品名:サイトテック)です。

 

痛み止めの薬としてNSAIDsと呼ばれる種類の薬が多用されます。ただし、NSAIDsには胃腸障害(胃潰瘍、十二指腸潰瘍など)という有名な副作用があり、薬を服用することで胃が荒れてしまいます。

 

NSAIDsによって胃潰瘍が起こるメカニズムとしては、「NSAIDsがプロスタグランジンを阻害する」ことに起因します。胃粘膜保護として重要な役割を果たすプロスタグランジンが阻害されるため、胃酸による攻撃に耐えられなくなってしまうのです。

 

そこで、NSAIDsによる潰瘍を治療するためには、胃粘膜保護に関わるプロスタグランジンを外から補えば良いことが分かります。ミソプロストール(商品名:サイトテック)はPGE1(プロスタグランジンE1)を元にした製剤であるため、プロスタグランジン阻害によるNSAIDsの副作用(胃腸障害)に対して有効です。

 

このような特徴により、プロスタグランジンを補うことで防御因子を増強し、胃潰瘍を治療する薬がミソプロストール(商品名:サイトテック)です。NSAIDsによる潰瘍に対して保険適応が認められた初めての薬でもあります。

 

なお、子宮収縮作用があるため、妊婦に対してミソプロストールの使用は禁忌になります。

 

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