役に立つ薬の情報~専門薬学 | 薬・薬学・専門薬学・薬理学など

役に立つ薬の情報~専門薬学

アミティーザ(ルビプロストン)の作用機序:便秘症治療薬

 

便秘は日常的な疾患であり、なかなか便が出ない状態に陥っています。これがずっと続いて慢性化してしまうと、合併症を引き起こしてしまいます。

 

そこで、これら便秘を改善する薬としてルビプロストン(商品名:アミティーザ)が使用されます。ルビプロストンはクロライドチャネル・アクティベーターと呼ばれる種類の薬になります。

 

 

ルビプロストン(商品名:アミティーザ)の作用機序

 

便秘には急性便秘と慢性便秘の2つがあり、腹痛や腹部膨満感などの症状を起こします。特に6ヶ月以上も排便困難な状態が続くようであると、慢性便秘に分類されます。

 

便秘の状態では、食物などの内容物に含まれる水分が吸収され、便が固く、そして小さくなります。このような状態であると、内容物が腸の中をスムーズに移動することができなくなり、排便をしにくくなります。

 

水分量が少なくなることで便秘が引き起こされるため、便秘を改善するためには腸内に存在する内容物の水分量を高めれば良いことが分かります。腸内の水分が多くなれば、その分だけ内容物が柔らかくなります。これによって腸管内の移動が改善され、排便が促進されます。

 

また、水分が多いと内容物の容積が大きくなるため、これによって腸管が刺激されることによっても排便が促されます。

 

この時、小腸にはクロライドチャネルと呼ばれる腸液の分泌に関わる受容体が存在します。そのため、小腸に存在するクロライドチャネルを活性化すれば、小腸内への水分分泌が促されるために便を柔らかくできることが分かります。

 

クロライドチャネル・アクティベーター:アミティーザ(ルビプロストン)

 

このように、腸の内容物(糞便)の水分含有量を増加させることにより、便秘を改善する薬がルビプロストン(商品名:アミティーザ)です。

 

ルビプロストン(商品名:アミティーザ)の特徴

 

便秘の中でも6ヶ月以上続く慢性便秘に対して使用される薬がルビプロストン(商品名:アミティーザ)です。

 

また、便秘には炎症などの異常が原因で起こる「器質性便秘」と腸に異常がないにも関わらず便秘が起こる「機能性便秘」があります。この中でも、ルビプロストンは機能性便秘に対して使用されます。

 

臨床試験では、24時間以内に約60~75%の患者さんで自発的な排便が認められています。また、ルビプロストンは長期に渡って便秘を改善させることができ、排便の回数を増加させることが分かっています。そのため、便秘による腹痛や腹部膨満感などの症状を軽減できます。

 

腸などの消化管に作用するため、主な副作用としては下痢(30%)、悪心(23%)などの消化器症状が確認されています。

 

なお、ルビプロストン(商品名:アミティーザ)は腸液の分泌を促すため、腸管粘膜のバリア機能や組織の修復作用なども知られています。

 

このように、腸液分泌を促進させることで炎症などの器質的疾患が存在しない慢性便秘症に使用される薬がルビプロストン(商品名:アミティーザ)です。

 

 

アミティーザ(一般名:ルビプロストン)の効能効果・用法容量

 

アミティーザは慢性便秘症に効果のある薬です。

 

便秘とは、対外に排出すべき糞便を十分かつ快適に排出できない状態です。

 

慢性便秘症は発症経過が慢性(症状はひどくないものの、治りにくい状態)であり、便秘症状が長期的、もしくは繰り返し1~2か月にわたって継続している状態のことです。

 

プルゼニド(一般名:センノシド)など腸を刺激するタイプの便秘薬は身体が慣れてしまい、効きにくくなることがあります。これを耐性といいます。

 

アミティーザは慢性的便秘症に効果がある薬であり、このように他の便秘薬に耐性を示す頑固な便秘でも効果があります。

 

しかし、センノシドなどはお腹が張って、ガスがたまり、不快感が酷くなった場合にすぐに効くのに対し、アミティーザは定期的に服用することによって徐々に効果を発揮する薬です。

 

服用方法としては、通常、成人にはアミティーザ(一般名:ルビプロストン)を1日2回、1回1カプセル(24μg)を朝食後および夕食後に服用します。なお、症状によって少なくするなどして調節します。

 

アミティーザ(一般名:ルビプロストン)の副作用

 

・胃痛、吐き気

 

胃痛や吐き気はアミティーザの中で最も多い副作用です。胃痛や吐き気により服用をやめてしまう患者さんもいます。胃痛や吐き気が起こりやすいのは、服用を開始した初期や空腹時に服用したときです。よって、できるだけ食後に服用するようにしましょう。

 

ちなみに、空腹時服用した場合と食後に服用した場合を比べると、食後に服用した場合の方が吸収される速度はゆっくりになりますが、吸収される量は変わりません。つまり、効果は変わりません。

 

効果は変わらず、副作用のみ減らすことができるので食後にアミティーザを服用することをおすすめします。

 

食後に服用しても胃痛や吐き気が生じる場合ですが、吐き気にはガナトン(一般名:イトプリド)が効いたという報告があります。しかし、よく使用される吐き気止めであるナウゼリン(一般名:ドンペリドン)やプリンペラン(一般名:メトクロプラミド)では吐き気が抑えられたというデータはありません。

 

胃痛や吐き気などの副作用は、服用を続けていると軽減してくるというデータもあります。

 

・息苦しい、呼吸困難

 

非常にまれですが、アミティーザを服用した患者さんで、副作用として呼吸困難が報告されています。飲み始めに急に発現し、通常は3時間以内に消失するようです。万一、息苦しさや息詰まりを自覚するようなことがあれば、医師と連絡を取るようにしましょう。

 

・めまい、貧血、むくみ

 

1%以下のまれな副作用ですが、アミティーザを服用してめまいやむくみ、貧血状態になったという報告があります。めまいやむくみ、貧血が疑われる症状が現れた場合は、医師または薬剤師に相談するようにしてください。

 

 

アミティーザ(一般名:ルビプロストン)の禁忌

 

・腸閉塞(イレウス)またはその疑いがある人

 

腸閉塞(イレウス)の人または疑われる人はアミティーザを服用してはいけません。

 

腸閉塞(イレウス)とは腸の内容物が通過しなくなる病気です。お腹の張り、嘔吐、腹痛、大便の排出停止などの症状を呈します。原因には、腫瘍やヘルニアがあります。

 

・アミティーザに対してアレルギーがある人

 

アミティーザに対してアレルギーがある人はアミティーザを服用してはいけません。

 

・妊婦または妊娠している可能性がある人

 

動物実験で胎児にアミティーザが移行することが報告されています。また、このように移行することによって胎児が死亡したという報告もあります。

 

もし、妊娠している人がアミティーザを服用し、赤ちゃんが死亡したら大変なことなので、妊娠または妊娠している可能性がある人はアミティーザを服用してはいけません。

 

アミティーザ(一般名:ルビプロストン)の高齢者への使用

 

一般的に高齢者では、腎機能や肝機能が低下しています。アミティーザは腎臓や肝臓で分解されるため、腎臓や肝臓が悪い人は副作用が発現しやすいです。

 

そのため、高齢者には副作用の発現に注意し、副作用が現れたら医師または薬剤師に報告してください。

 

アミティーザ(一般名:ルビプロストン)の小児(子供)への使用

 

小児(14歳以下)への使用は十分なデータが無く、安全性は確立していません。

 

アミティーザ(一般名:ルビプロストン)の妊婦・授乳婦への使用

 

前述の通り、妊婦はアミティーザを服用してはいけません。

 

また、動物実験でアミティーザが母乳に移行するというデータもあります。したがって、授乳中の人はアミティーザを使用している間は授乳を避ける必要があります。

 

 

アミティーザ(一般名:ルビプロストン)の効果発現時間

 

慢性便秘症に対する実験で、アミティーザの効果は24時間以内に自然な排便となって現れます。

 

また、6か月投与する試験では自然排便が1週間に3回以下の患者が1週間に5.6~6.0回まで改善されたというデータもあります。

 

アミティーザ(一般名:ルビプロストン)の類似薬

 

・マグミット(一般名:酸化マグネシウム)とアミティーザ(一般名:ルビプロストン)の違い

 

マグミット(一般名:酸化マグネシウム)は日本で古くから広く使われている薬です。腸内で膵液や胃酸と反応して塩類の濃度を高め、腸内へ水分を引き寄せることで便を柔らかくします。便を、柔らかくするという点ではアミティーザと似ています。

 

また、アミティーザと同様、薬が効きにくくなることもないので使いやすい薬です。

 

しかし、アミティーザと違い、マグミット(一般名:酸化マグネシウム)は腎臓が悪い患者さんでは血液中にマグネシウムが多くなることで、高マグネシウム血症という副作用が生じます。

 

高マグネシウム血症の症状は主に、脈がゆっくりになるような不整脈、吐き気、倦怠感です。酷い時には意識が消失することもあります。

 

また、マグミットは抗生物質やビスホスホネートという種類の骨粗鬆症の薬と一緒に服用すると吸収が悪くなります。ほかには、マグミットは胃酸や腸液と反応して効果を発揮するため、マグミットと制酸薬を併用すると、マグミットの効果が弱くなるということにも注意が必要です。

 

このように、マグミットは不整脈や他の薬との飲み合わせを気にしなくてはいけません。

 

・プルゼニド・センノサイド(一般名:センノシド)、アローゼン(一般名:センナ・センナ実)、大黄などとアミティーザ(一般名:ルビプロストン)の違い

 

プルゼニド・センノサイド(一般名:センノシド)、アローゼン(一般名:センナ・センナ実)、大黄などの薬は腸を刺激することにより排便を促進させます。作用が非常に強力で、依存性が高いです。身体が慣れてきて効かなくなるため、使用を続けると量がどんどん増えてしまうので注意が必要です。

 

アミティーザ(一般名:ルビプロストン)は自然な排便が起きるのに対し、センノシドなどが与える排便は腹痛を伴い、便も水っぽくなることが多いです。

 

メリットとしては、即効性があります。すぐに効果がほしいときは、センノシドなどの方が適しています。また、他の薬との相互作用も少ないです。

 

・ラキソベロン(一般名:ピコスルファート)とアミティーザ(一般名:ルビプロストン)の違い

 

ラキソベロン(一般名:ピコスルファート)はセンノシドなどと同じ、刺激を腸に与えることによって排便を促す薬です。しかし、センノシドとは違い、連用による耐性は少ないです。

 

薬の形状が、錠剤のほかに液剤もあり、調節しやすいのも特徴です。

 

アミティーザに比べると、自然な排便というよりは、即効性を目的とした強力な排便になってしまうため、腹痛や水溶便を伴うこともあります。

 

・リンゼス(一般名:リナクロチド)とアミティーザ(一般名:ルビプロストン)の違い

 

リンゼスもアミティーザも、クロライドチャネルという同じ部位に働きかけることによって効果を発揮する薬ですが、作用の仕方が違います。イメージとしては、アミティーザは直接的に作用部位に作用するのに対し、リンゼスは間接的に作用部位が効果を発揮できるように手助けをする形で作用します。

 

また、効果がある便秘にも違いがあります。アミティーザは慢性便秘症に効果があるのに対し、リンゼスは便秘型過敏性腸症候群に効果があります。

 

便秘型過敏性腸症候群とは主にストレスなどにより腸が過敏に反応することにより生じ、便秘の症状を伴う病気です。

 

このように、効果がある病気が異なるため、アミティーザとリンゼスを併用するケースは少ないです。

 

しかし、アミティーザからリンゼスに変更するというケースはあります。

 

他に異なる点は、アミティーザは副作用で吐き気が起こりやすいですが、リンゼスは吐き気などの副作用は少ないです。また、リンゼスの服用は食前になっています。これは、食後だと薬が効きすぎて、下痢や軟便になってしまうためです。

 

・アミティーザ(一般名:ルビプロストン)と他の下剤との併用

 

慢性便秘症に効果ある薬なら併用することは問題ありません。しかし、一般的な服用方法は、普段は便を柔らかくするようなマグミットやアミティーザを服用して、効果が不十分な時のみ刺激性の下剤であるセンノシドやラキソベロンを使うことです。

 

他、胃腸の運動を良くすることで便秘を改善するガスモチン(一般名:モサプリド)を併用することもあります。

 

また、便秘薬では無いですが、便秘でお腹が張った感じを伴うときは大建中湯を併用することもあります。

 

アミティーザ(一般名:ルビプロストン)とお酒

 

アミティーザとアルコールの飲み合わせは問題ありません。よって、アミティーザを服用していても普段通りにお酒を飲んでも大丈夫です。

 

このように、下剤の「耐性をつくりやすい」「他の薬との飲み合わせに注意が必要」などといった欠点を改善した薬がアミティーザ(一般名:ルビプロストン)です。

 

スポンサードリンク




スポンサードリンク