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新レシカルボン坐剤の作用機序:便秘症治療薬

 

便秘は多くの人が悩まされる日常的な疾患です。便秘が続くと、お腹にハリが出たり腹痛を起こしたりします。便秘が慢性化すると、体に異常を生じることもあります。

 

そこで、これら便秘症状を改善するために使用される薬として新レシカルボン坐剤があります。新レシカルボン坐剤は刺激性下剤と呼ばれる種類の薬になります。お尻から挿入するタイプの坐剤(座薬)です。

 

 

新レシカルボン坐剤の作用機序

 

腸は栄養や水分などを吸収する臓器です。このとき、水分の吸収は大腸で行われます。便秘では、肛門や大腸などで便が停滞している状態であるともいえます。

 

便が大腸に長くとどまっていると、それだけ便から水分が抜けていきます。水分が出ていった分だけ、便の容量は少なくなります。つまり、便は小さく固くなります。こうなると、便による腸への刺激は少なくなります。その結果、排便が促されにくくなるため、さらに便秘が悪化するという悪循環に陥ります。

 

これを改善するため、排便を促すような薬を使用します。このような薬が新レシカルボン坐剤です。

 

新レシカルボン坐剤には、有効成分として炭酸水素ナトリウムや無水リン酸二水素ナトリウムが含まれています。これらの有効成分は無機物質であり、体に害はありません。

 

直腸内に入れられた炭酸水素ナトリウムなどは、少しずつ溶解して二酸化炭素(CO2)を放出します。このときの気体が直腸の粘膜に刺激を与えると、これが合図となって排便するように腸が動きます。

 

大腸の蠕動運動(腸が動くこと)も活発になるため、大腸に溜まっていた便は肛門側へと移動します。これによっても、排便が促されます。つまり、直腸に直接刺激を与えると、便秘を解消させることができるのです。

 

新レシカルボン坐剤の作用機序>

 

このような考えにより、気体を放出することで腸を刺激して、便秘症状を改善する薬が新レシカルボン坐剤です。

 

新レシカルボン坐剤の特徴

 

炭酸ガス(二酸化炭素)によって排便を促すため、新レシカルボン坐剤は自然に近い形で便を排出することができます。

 

薬を使用した後、効果が表れるまでの時間(効果発現時間)は約15~30分です。すぐに効果が表れるため、排便したい時間を自分で調節しなければいけません。薬を使用して30分経過しても効果が表れない場合、もう一個を肛門から挿入して排便を促します。

 

薬の挿入が難しい場合、坐剤の先に水を少しつけると滑らかになって効果的です。なお、3回目の坐剤を入れる場合は、6時間程度の時間を空ける必要があります。

 

便秘薬を使用し続けていると、薬がなければ排便ができない状態に陥ることがあります。ただ、新レシカルボン坐剤はこれらの依存性が少ない薬であるとされています。

 

このような特徴により、炭酸ガスの放出によって直腸内を刺激し、自然に近い排便を促す薬が新レシカルボン坐剤です。

 

 

新レシカルボン坐剤の効能効果・用法用量

 

便秘症に対して、新レシカルボン坐剤は広く活用されます。坐剤(座薬)なので、お尻の穴から薬を挿入していきます。

 

このとき、1~2個を肛門内の奥深くに挿入します。重症の便秘に悩んでいる人の場合、1日に2~3個を数日続けて挿入します。

 

人によって症状はさまざまです。例えば吐き気があって薬を服用できない人であれば、坐剤を活用すれば問題なく使用できます。また、便秘の症状が重いために即効性を求める人の場合も座薬は効果的です。

 

このとき、浣腸のように便意を感じたときに我慢する必要はありません。下手に便意を我慢すると排便のタイミングを逃してしまったり、よけい便秘症状がひどくなったりしてしまいます。

 

投与間隔や薬の追加投与のタイミングとしては、使用後に30分経過しても効かない場合、追加でもう1個を挿入します。ただ、3個目を入れるときは6時間以上あけるようにします。

 

なお、坐剤(座薬)は人の体温で溶けるように設計されています。そのため、真夏などに室温保存しているとチョコレートのように薬が解けてしまいます。こうした事態を避けるため、冷蔵庫など冷所保存が基本です。

 

・新レシカルボン坐剤の入れ方

 

坐剤(座薬)を使用するとき、まずは一個分を切り離します。その後、坐剤が入っている容器のふたを剥がし、坐剤を取り出します。

 

坐剤では先端がとがっています。このとがった部分から、お尻の穴に入れていきます。このときは坐剤の後部を手でもち、挿入していきます。肛門に入れるのが難しい場合、坐剤の先端に少量の水をつけると入れやすくなります。

 

 

新レシカルボン坐剤を入れた後、すぐに激しい運動をすると坐剤が外に出て薬の投与に失敗しまうことがあります。そのため、排便作用があるまでは激しい運動を避けるようにします。

 

新レシカルボン坐剤の副作用

 

新レシカルボン坐剤は副作用の少ない薬です。炭酸水素ナトリウムや無水リン酸二水素ナトリウムによる炭酸ガスが作用を発揮します。有効成分が体内に吸収されて効果を発揮するわけではないため、副作用がほとんどなく効果を発揮することができます。

 

ただ、副作用がゼロというわけではなく、主な副作用には軽度の刺激感、下腹部痛、不快感、下痢、残便感などがあります。

 

座薬であるため、肛門に対して刺激があります。また、腸に刺激を与えるので腹痛を生じることがあるのです。炭酸ガスを発生させるのでおならが増えてしまうこともあります。下痢については、薬が効きすぎてしまったために生じるようになります。

 

また、重大な副作用にショック症状があります。肛門から坐剤を挿入することで体が反応し、顔面蒼白、呼吸困難、血圧低下などの症状を生じた場合は薬の服用を中止します。新レシカルボン坐剤に対して過敏症のある人は禁忌であるため、こうした人に使用してはいけません。

 

なお、新レシカルボン坐剤には飲み合わせ(相互作用)の薬は設定されておらず、基本的にはどのような薬と併用しても問題ありません。

 

 

高齢者への使用

 

高齢者で便秘に悩む人は多いです。高齢者では腸機能の低下によって便が出にくくなっていることがあります。

 

こうしたとき、新レシカルボン坐剤を活用します。ただ、高齢者では一般的に生理機能が低下しているため、副作用の出現に注意しながら活用していきます。

 

小児(子供)への使用

 

小児に新レシカルボン坐剤を使用することについて、子供に対しても頻用されます。副作用の少ない薬であり、古くから活用されているので子供が使用しても問題ないのです。

 

このときは子供の年齢によって小児薬用量を調節していきます。以下のように年齢で分けて、子供へ投与していきます。

 

・3歳:1回に1/3個
・7.5歳:1回に1/2個
・12歳以上:1回に1個

 

小児科では新レシカルボン坐剤はかなり多用されます。ただ、赤ちゃんに使用するかどうかは医師によって判断が分かれます。刺激が強いと判断されれば赤ちゃんへの使用をやめ、そのときは浣腸や内用液など他の便秘薬を赤ちゃんに使用します。

 

妊婦・授乳婦への使用

 

妊娠中の方が新レシカルボン坐剤を使用することについて、問題が起こることはありません。妊娠初期や妊娠中期・後期を含めて、産婦人科でも妊婦に新レシカルボン坐剤が処方されます。妊娠初期の催奇形性を含め、大きな問題はないとされています。

 

妊娠初期ではホルモンバランスの変化により、便秘が起こりやすくなります。また、妊娠中期以降では子宮が大きくなることにより、肛門周辺が圧迫されることで便秘を生じやすいです。こうしたとき、自然な排便を促す新レシカルボン坐剤が有効です。

 

授乳中の方が新レシカルボン坐剤を利用することについても問題ありません。あくまでも肛門で炭酸ガスを発生させ、その刺激によって排便を促す薬です。母乳へ影響を与える薬ではないため、授乳中であっても安心して服用できます。

 

 

新レシカルボン坐剤の作用発現時間

 

肛門から新レシカルボン坐剤を挿入した後、すぐに排便効果が表れるようになります。人に使用した場合、大人でも子供でも15分ほどで排便が認められるようになります。

 

もちろん人によって個人差があるため、どれだけの作用時間や効果発現時間になるのかは異なります。

 

研究での新レシカルボン坐剤については、ビーグル犬14匹に薬を投与することによって約18分で排便効果を認めたとされています。犬でも人でも即効性のある薬だといえます。

 

ただ、新レシカルボン坐剤は毎日使用するという薬ではありません。肛門で便がたまっている状態を改善したいときに活用する薬です。耐性や依存症はほとんどない薬であり、長期服用になるケースはあるものの、基本的には毎日使い続けるよりも便が出なくて困るときに即効性を求めて使用する薬です。

 

便秘症に坐剤を使用するメリット

 

それでは、新レシカルボン坐剤の服用が適している人にはどのような人がいるのでしょうか。

 

まず、口から薬を服用するのが難しい方です。先に述べた通り、吐き気のある人では薬を飲んでも嘔吐によって吐いてしまうことがあるため、このときは座薬を活用します。

 

また、赤ちゃんを含め小さい子どもでは内服薬を飲めないことがあります。こうしたとき、お尻から挿入できる坐剤は便利です。

 

寝たきりの高齢者も同様に薬を口から飲むのが困難です。こうしたとき、肛門から坐剤を挿入することで排便を促すことができます。薬を飲むことができなくても使用できるというメリットは大きいです。

 

肛門に固い便があるときに有効な坐剤

 

便秘を治療するとき、内服薬を使用するケースは多いです。ただ、こうしたときであってもなかなか便秘が解消されないときがあります。

 

大腸で水分が吸い取られていくと、便の水分がなくなることで固いカチカチのウンコになります。こうした便が肛門で栓をしていると、なかなか排便されません。

 

固い便が栓をしているとき、いくら便を柔らかくさせる薬を服用したとしても、栓をしている「固い便の後ろ側のウンコ」ばかり柔らかくなります。

 

そのため、排便があって固いウンコが出た後、すぐに下痢になってしまうことがあります。肛門にある便が栓をしている状態のとき、内服薬による便秘薬よりも、新レシカルボン坐剤のような薬が効果的です。

 

便秘に用いられる他の坐剤

 

新レシカルボン坐剤の他にも、便秘症に活用される薬があります。有名な薬としては、テレミンソフト坐剤(一般名:ビサコジル)があります。

 

ガスによる物理的な刺激によって排便を促す新レシカルボン坐剤に対して、テレミンソフト坐剤では大腸刺激作用があります。大腸の働きを活発にさせることにより、排便を促します。

 

テレミンソフト坐剤にも即効性があります。乳幼児を含め、赤ちゃんに対しても頻繁に活用される薬です。ただ、大腸刺激性の薬は毎日のように長期連用することによって耐性(依存性)を生じることがあります。

 

市販薬としても活用される新レシカルボン坐剤

 

医療用医薬品だけでなく、市販薬(一般用医薬品)としても新レシカルボン坐剤が活用されています。新レシカルボン坐剤はゼリア新薬から発売されており、市販薬では新レシカルボン坐剤Sという商品名で販売されています。

 

市販薬の場合はドラッグストアなどで購入することができ、ネット上でも多くの口コミを確認することができます。

 

このように、便秘に対して広く活用される座薬が新レシカルボン坐剤です。新レシカルボン坐剤にはジェネリック医薬品(後発医薬品)がないです。そのため、ジェネリック医薬品への切り替えによって薬価を低く抑えることはできません。

 

ただ、副作用は少なく妊婦や小児を含め、多くの人が使用できる安全性の高い薬です。毎日連用する薬ではないものの、即効性を求めて排便を促す薬として活用されます。

 

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