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ランサップ:ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除菌

 

薬などによって潰瘍を治療したとしても、再び潰瘍が引き起こされてしまう場合があります。

 

昔はこの原因が分かりませんでしたが、現在では胃の中に住み着いているヘリコバクター・ピロリと呼ばれる細菌が大きく関わっている事が分かっています。

 

ヘリコバクター・ピロリとは、通称ピロリ菌の事を指します。ピロリ菌が胃の中で炎症を引き起こすため、少し胃の状態が悪くなると胃潰瘍や十二指腸潰瘍として激痛を伴うようになります。

 

そこで、このピロリ菌の除菌を考えます。このピロリ菌の除菌を行うために「ランソプラゾール、アモキシシリン、クラリストマイシン」の3つの薬がパックとなった医薬品が発売されています。この薬の商品名をランサップといいます。

 

 

 ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の検査
ピロリ菌は消化性潰瘍の原因となるため、この菌が存在する限りは潰瘍を再燃しやすい環境が持続してしまいます。

 

ピロリ菌の除菌が完了していない状態であると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発率が約50~60%になると言われています。ただし、ピロリ菌は除菌可能な菌です。ピロリ菌を除菌できた場合、これら消化性潰瘍の再発率を2~3%程度にまで減らすことが可能です。

 

この時、ピロリ菌の除菌を行うためには以下のステップをたどります。

 

 ピロリ菌除菌の流れ

 

ピロリ菌の除菌を行うためには、最初に「ピロリ菌に感染しているかどうか」を調べなければいけません。そこで、ピロリ菌の検査を行います。

 

ピロリ菌の検査としては、内視鏡を使って直接胃の粘膜を観察します。つまり、胃カメラを飲ませます。この時、胃の粘膜も採取します。この胃粘膜にピロリ菌が存在するかどうかを確認します。

 

なお、胃カメラが嫌な人は内視鏡を使用しない方法もあります。内視鏡を使用せずに、「ピロリ菌への感染の有無」を調べることも可能なのです。

 

 ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除菌
胃にピロリ菌が感染していることを確認したら、今度はピロリ菌の除菌を行うために薬を服用します。

 

ピロリ菌の除菌は1週間に渡って行われます。この時、3つの薬を併用します。この3つの薬を合わせた薬としてランサップがあります。この薬には胃酸分泌を抑制するランソプラゾール、抗生物質としてアモキシシリンとクラリスロマイシンが含まれています。

 

  ランサップに含まれている薬
 ・ランソプラゾール(PPI:プロトンポンプ阻害薬)
 ・アモキシシリン(抗生物質)
 ・クラリスロマイシン(抗生物質)

 

ランサップの使用はピロリ菌除菌として最初に行われる除菌療法です。ピロリ菌の除菌療法の中でも、最初に行われる除菌なので「一次除菌」といいます。

 

ランサップとして上記に挙げた3剤を併用することにより、約70%の患者さんでピロリ菌の除菌が可能となります。除菌が完了したかどうかについては、もう一度内視鏡検査を行うなどによって調べます。

 

なお、残りの約30%の人はピロリ菌の除菌に失敗してしまうことになります。このような場合であると、二次除菌としてもう一度ピロリ菌の除菌を試みようとします。

 

 

 ピロリ菌除菌にPPI(プロトンポンプ阻害薬)を使用する理由
ピロリ菌の除菌では胃酸分泌を完全にストップさせるために、PPI(プロトンポンプ阻害薬)と呼ばれる種類の薬を服用します。ランサップに含まれている成分で言えば、ランソプラゾールがこのPPI(プロトンポンプ阻害薬)に当たります。

 

ピロリ菌の除菌にPPI(プロトンポンプ阻害薬)を使用する理由としては、潰瘍を治療する以外の重要な意味があります。それは、抗生物質の殺菌力を増大させることにあります。

 

胃酸はその強い酸によって抗生物質の殺菌力を抑えてしまいます。そこで、胃酸分泌を抑制するPPI(プロトンポンプ阻害薬)を投与します。これによって胃の中のpHを上げれば、抗生物質の殺菌力が上昇します。

 

実際、ランサップの成分として含まれているクラリスロマイシン(抗生物質)はPPI(プロトンポンプ阻害薬)によってpHを中性付近にまでにすると、その殺菌力は百倍以上にも上昇します。

 

なお、同じ胃酸分泌を抑制する医薬品としてH2ブロッカーと呼ばれる種類の薬があります。ただし、H2ブロッカーでは胃酸分泌抑制作用が不十分であるため、PPI(プロトンポンプ阻害薬)が使用されます。

 

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