ネキシウム(エソメプラゾール)の作用機序:消化性潰瘍治療薬
胃痛を伴う「消化性潰瘍」や胸焼けが主となる「逆流性食道炎」など、これらの病気を治療するために薬が使用されます。
その中でも、PPI(プロトンポンプ阻害薬)と呼ばれる種類の薬が多用されます。
このPPI(プロトンポンプ阻害薬)の中でも、2011年に発売された薬としてエソメプラゾール(商品名:ネキシウム)があります。
潰瘍治療とPPI(プロトンポンプ阻害薬)
「No Acid, No Ulcer(酸がなければ潰瘍はない)」と言われ、胃酸が存在しなければ消化性潰瘍も発症しないとされています。そのため、消化性潰瘍や逆流性食道炎などの治療を行うためには「胃酸をなくせば良い」という事が分かります。
そこで、これらの病気の治療には胃酸分泌を抑制する薬が使用されます。この時、胃酸分泌をほぼ完全にストップさせる薬がPPI(プロトンポンプ阻害薬)です。
胃酸は胃に存在する壁細胞から分泌されます。この時の胃酸は体内からのシグナルを受け取る事によって分泌されます。このシグナルとしてはアセチルコリンやヒスタミン、ガストリンと呼ばれる物質があります。
これらの物質が作用することで胃酸が分泌されますが、このシグナルは全てプロトンポンプと呼ばれる場所に集まります。そして、このプロトンポンプが胃酸分泌を行います。
これを踏まえた上で、胃酸分泌を行うプロトンポンプを阻害すれば、壁細胞からの胃酸分泌をほぼ完全に抑制できることが分かります。このような作用によって胃酸分泌を抑制する薬がPPI(プロトンポンプ阻害薬)です。
そして、このPPI(プロトンポンプ阻害薬)としてエソメプラゾール(商品名:ネキシウム)が使用されます。
エソメプラゾール(商品名:ネキシウム)の特徴
世界初のPPI(プロトンポンプ阻害薬)としてオメプラゾール(商品名:オメプラール、オメプラゾン)があります。実は、このオメプラゾールとエソメプラゾールはほぼ同じ有効成分となります。
化学物質の中には、鏡像異性体と呼ばれる物質があります。見た目は同じだけれども、よく見るとその立体構造が違う物質です。鏡像異性体は「双子のように一見すると同じであるが、よく見ると立体構造の異なる2つの物質が出来ている状態」と認識してください。
オメプラゾールは鏡像異性体として双子のような2つのよく似た物質が混ざっています。この2つを分けるのはとても難しいですが、2つの鏡像異性体の混ざりものから片方の1つだけを取り出して医薬品にしたものがエソメプラゾール(商品名:ネキシウム)です。
専門用語を使えば、鏡像異性体の2つの物質はR体とS体と呼ばれます。オメプラゾールではR体とS体がごちゃ混ぜになっていますが、エソメプラゾールではS体だけを取り出したものになります。
S体だけなので、オメプラゾールに「エス」を付けてエソメプラゾールという名前になっています。
オメプラゾールに含まれていたR体の特徴として、代謝酵素の関係でS体よりも個人差の出やすい物質となります。エソメプラゾールではS体だけが含まれているため、オメプラゾールよりも個人差を少なくした医薬品として期待されています。
また、S体だけが含まれたエソメプラゾールの方が代謝酵素の影響を受けにくいため、体の中から消失しにくいです。そのため、オメプラゾールよりもエソメプラゾールの方が薬として長く作用することができ、より持続的な作用を得られると考えられています。
オメプラゾールに比べて、エソメプラゾール(商品名:ネキシウム)にはこのような特徴があります。
スポンサードリンク
カテゴリー
スポンサードリンク