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フオイパン(カモスタット)の作用機序:タンパク分解酵素阻害薬

 

慢性膵炎など、すい臓に炎症が起こると大きな障害を負います。これは、炎症によるダメージだけではありません。膵臓には消化酵素がたくさんあり、炎症によって酵素が漏れ出すことですい臓を溶かしてしまうのです。

 

そこで、これらの病態を防止するために使用される薬としてカモスタット(商品名:フオイパン)があります。カモスタットはタンパク分解酵素阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

 カモスタット(商品名:フオイパン)の作用機序
すい臓は消化酵素を十二指腸に分泌することで、食物の消化・分解を助けます。食物には脂質や糖、タンパク質などが含まれています。

 

ただ、すい臓自体もタンパク質で構成されています。皮膚や髪の毛もタンパク質で作られているため、あらゆる臓器にとってタンパク質は重要です。そのため、すい臓に炎症が起こることで機能が障害されると、すい臓に存在する消化酵素によってすい臓自体が分解されていきます。

 

「すい臓がタンパク質で作られている」ために、すい臓が溶けていくのです。普段、すい臓は消化酵素によって分解されないような仕組みになっていますが、慢性膵炎などが起こるとその機能は破たんしてしまいます。そこで、これらの症状を緩和するためには、すい臓の酵素を阻害すれば良いことが分かります。

 

消化酵素の中でも、タンパク質の分解に関わるものにトリプシンが知られています。トリプシンがすい臓の中で活性化したり、十二指腸に分泌された後に逆流したりすると臓器に障害が起こります。

 

カモスタット(商品名:フオイパン)はトリプシンを阻害する働きがあります。そのため、たとえトリプシンの作用が活発になったとしても、あらかじめカモスタットを投与しておけば、トリプシンによる作用を抑制できます。

 

 フオイパン(カモスタット)の作用機序:タンパク分解酵素阻害薬

 

このような考えにより、すい臓に存在する酵素によって臓器障害が引き起こされるとき、消化酵素の機能を抑えることで症状を改善する薬がカモスタット(商品名:フオイパン)です。

 

 

 カモスタット(商品名:フオイパン)の特徴
慢性膵炎だけでなく、胃を切除した後にもトリプシンが問題となります。十二指腸に分泌された酵素は、胃が存在することによって逆流が防がれています。ただ、胃を切除してしまうと、膵液(トリプシン)や胆汁が食道内へと逆流してしまいます。これにより、逆流性食道炎を発症します。

 

このときの逆流性食道炎は、一度治ったとしても再発を繰り返します。胃がないことにより、何度も膵液や胆汁が逆流して食道内を荒らすからです。

 

そこでカモスタット(商品名:フオイパン)を投与すれば、トリプシンの働きを抑えることで食道への負担を軽減することができます。その結果、逆流性食道炎の自覚症状や内視鏡検査を行ったときの所見を改善できます。

 

なお、慢性膵炎に対しては、炎症症状や疼痛(長く続く痛み)を抑えるだけでなく、血中・尿中アミラーゼ値などの改善作用も知られています。安全性の高い薬であり、副作用はほとんどみられません。

 

慢性膵炎などはアルコールや胆道疾患(胆石など)によって引き起こされます。そのため、薬に頼るだけでなく、本来は食生活を改善することを考えなければいけません。

 

このような特徴により、慢性膵炎で起こる急性症状や胃切除後に起こる逆流性食道炎の治療に用いられる薬がカモスタット(商品名:フオイパン)です。

 

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