アクトス(ピオグリタゾン)の作用機序:糖尿病治療薬
糖尿病患者ではインスリンの分泌が不足している「インスリン分泌不全」とインスリンが効きにくくなっている「インスリン抵抗性」の二つがあります。
そのため、同じ糖尿病患者であっても、どちらの種類の糖尿病であるかを見極める必要があります。
そして、これらインスリンが効きにくくなっている患者さんに使用される薬としてピオグリタゾン(商品名:アクトス)があります。
チアゾリジン系薬の作用機序
ビグアナイド系薬(BG薬)と同じようにインスリン抵抗性を改善させる薬としてチアゾリジン系薬があります。チアゾリジン系薬は脂肪細胞に作用することでその効果を発揮させます。
脂肪細胞は肥大化するとインスリンの働きを悪くする物質を放出するようになります。肥満患者で糖尿病リスクが高まる理由の一つとして、この脂肪細胞の肥大化によってインスリン抵抗性が増大することがあります。
そこで、チアゾリジン系薬はこの肥大化した脂肪細胞に作用することで、肥大化した脂肪細胞をいくつかの小さい脂肪細胞へと変化させます。
脂肪細胞が小さくなるため、インスリンによってブドウ糖(グルコース)を取り込みやすくなります。つまり、インスリン抵抗性が改善されます。
ただし、「小さい脂肪細胞を増やして糖を取り込みやすくさせる」という作用機序のため、チアゾリジン系薬は肥満を助長しやすくなります。
このように、インスリン抵抗性を改善させることで糖尿病を治療する薬としてピオグリタゾン(商品名:アクトス)があります。
ピオグリタゾン(商品名:アクトス)のより詳しい作用機序
チアゾリジン系薬のより詳しい作用機序を話すと、核内受容体と呼ばれる受容体に作用します。数ある受容体の中でも「核の中に存在する受容体」を核内受容体と呼びますが、この受容体へ結合するのです。
核内受容体の種類としては、ステロイドが作用する受容体(GR)やビタミンDが作用する受容体(VDR)などがあります。
このような核内受容体の中でも、脂質や糖などの代謝に関わっている核内受容体としてPPARと呼ばれる受容体があります。
「脂質や糖の代謝に関わっている」という事から分かる通り、このPPARと呼ばれる核内受容体に作用する薬は糖尿病を含む生活習慣病の治療薬になることが分かります。
PPARにはサブタイプと呼ばれる3種類の兄弟のような物が存在しています。この3種類は、それぞれギリシャ数字を後に付けて
・PPARα ・PPARγ ・PPARδ
と呼ばれます。
この中でも、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)はPPARγの作用を強めるように作用します。これにより、インスリン抵抗性を改善するように働くのです。
ちなみに、同じようにPPARに作用するが、コレステロール値を下げる事で脂質異常症を治療する薬があります。この薬の場合、PPARの中でもPPARαに作用します。
このように、PPARγに作用すると糖尿病治療薬となり、PPARαでは脂質異常症治療薬となります。薬を開発するにしても、「どの受容体をターゲットにするか」について考える事が重要であると分かります。
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