スイニー(アナグリプチン)の作用機序:糖尿病治療薬
糖尿病では血糖値が高くなっており、これによって様々な合併症を引き起こしてしまいます。
合併症としては、失明の原因となる「網膜症」、腎機能が落ちて透析が必要となる「腎症」、神経系に異常が起こる「神経障害」などが知られています。
これら糖尿病による症状を抑えるために使用される薬としてアナグリプチン(商品名:スイニー)があります。アナグリプチンはDPP-4阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。
アナグリプチン(商品名:スイニー)の作用機序
糖尿病の治療では血糖値を抑えることが重要になります。血糖値を下げる唯一のホルモンがインスリンであるため、インスリンの作用を強めることができれば糖尿病の治療薬になることが分かります。
ただし、インスリン分泌を促す薬では「低血糖」という副作用が問題となります。インスリンによって血糖値を下げることで糖尿病を治療するのは良いですが、血糖値が下がりすぎると動悸や息切れが起こるようになり、重症になると昏睡状態に陥ります。
そこで、インスリンに作用する薬の中でも「低血糖を起こしにくい医薬品」として発売された薬がDPP-4阻害薬です。副作用は少ないが、強力に血糖値を下げることができます。
食事によってインスリン分泌が促されますが、これにはインクレチンと呼ばれるホルモンが大きく関わっています。インクレチンは食事が合図となって放出され、インスリン分泌を促す作用があります。
インスリン分泌に重要なインクレチンですが、実はDPP-4と呼ばれる酵素によって分解されてしまいます。インクレチンが分解されると、インスリン分泌も弱くなってしまいます。そのため、DPP-4を阻害することができれば、インクレチン濃度を上昇させることでインクレチン分泌を促せることが分かります。
このようにインクレチンの分解を阻害する事でインスリンを増やし、血糖値を改善するDPP-4阻害薬がアナグリプチン(商品名:スイニー)です。
アナグリプチン(商品名:スイニー)の特徴
国内6番目に発売されたDPP-4阻害薬がアナグリプチン(商品名:スイニー)です。DPP-4阻害薬自体は理論的にどれも血糖値を下げる強さが同じであるため、薬の違いによる効果の違いはそこまでありません。
アナグリプチンは日本で開発された薬であり、単剤でも強力に血糖値を下げる作用を有しています。他の糖尿病治療薬と併用することにより、さらに強い効果を得ることもできます。
ただし、DPP-4阻害薬は単剤では低血糖が起こりにくいとされていますが、他の糖尿病治療薬との併用によって低血糖が起こりやすくなることがあります。副作用の少ない薬ではありますが、注意することに越したことはありません。
これらの薬はDPP-4を阻害する事で糖尿病を治療できますが、似たような酵素としてDPP-8やDPP-9などが知られています。これらDPP-8やDPP-9まで阻害してしまうと皮膚障害のなどの副作用が表れるために不都合です。
アナグリプチンはこれら酵素の中でもDPP-4に対する選択性が高くなっており、DPP-9などと比べても17,000倍も選択的にDPP-4を阻害することができます。
このようにDPP-4を阻害する事でインクチン濃度を増やし、糖尿病を治療する薬がアナグリプチン(商品名:スイニー)です。
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