サレド(サリドマイド)の作用機序:多発性骨髄腫治療薬
血液がんの1つとして多発性骨髄腫が知られています。血液は骨髄で作られますが、骨髄細胞のがん化によって血液がんが引き起こされます。血液がんとして白血病が有名ですが、同じ血液がんの中でも多くの種類があります。
そこで、多発性骨髄腫を治療するために用いられる薬としてサリドマイド(商品名:サレド)があります。サリドマイドはハンセン病に伴う皮疹(らい性結節性紅斑)の治療薬として用いられることもあります。
サリドマイド(商品名:サレド)の作用機序
多発性骨髄腫やらい性結節性紅斑を治療するサリドマイド(商品名:サレド)の作用機序は完全に解明されていません。ただ、そのメカニズムとしては以下のようなことが確認されています。
・血管新生抑制作用
がん細胞は無秩序な増殖を行うことで知られています。増殖速度が速いため、その分だけ多くの栄養を必要とします。そこで、がん細胞は新たな血管を作ることで、自分のところへ効率よく栄養を取り入れようとします。
「新しい血管を作る因子」としてVEGFと呼ばれる物質が知られており、これらの物質の作用をサリドマイド(商品名:サレド)が阻害します。その結果、血管が作られなくなることで、がん細胞の成長を抑制することができます。
・サイトカイン産生抑制作用
細胞増殖を行うため、がん細胞は細胞間で情報伝達のやり取りを行っています。この情報伝達を行う物質にサイトカインと呼ばれるものが知られています。そこでサイトカインの働きを阻害すれば、がん細胞同士で行われている情報伝達を抑えることができるようになります。
サリドマイド(商品名:サレド)はさまざまなサイトカインの働きを抑える作用を有しており、これによってがん細胞の成長を抑制します。
また、サイトカインは炎症を引き起こす作用を有しています。炎症性サイトカインとも呼ばれますが、この作用を抑えることでハンセン病による皮疹を軽減します。
・免疫調節作用
普段、何げなく生活している中でもがん細胞が発生しています。しかし、すぐにがんを発症することはありません。これは、がん細胞を私たちの免疫機能が発見したとき、スムーズに細胞死へと導くからです。
サリドマイド(商品名:サレド)を投与すると、キラー細胞など、がん細胞の殺傷に関わる免疫細胞が増えることが報告されています。また、サリドマイド(商品名:サレド)の投与によって、がん細胞の細胞死が誘導されることも明らかになっています。
このように、多彩な作用によって多発性骨髄腫やらい性結節性紅斑を治療する薬がサリドマイド(商品名:サレド)です。
サリドマイド(商品名:サレド)の特徴
薬害事件として有名な「サリドマイド事件」を引き起こした薬がサリドマイドです。サリドマイドを妊婦が服用することで、生まれてくる子供に奇形が生じたという事件です。
サリドマイド事件のあと、一旦は市場から姿を消しました。しかし、多発性骨髄腫やらい性結節性紅斑に対する治療効果が明らかとなり、サリドマイドの復活を望む患者さんの声が増えていきました。そこで、厳しい流通制限がかけられてはいますが、現在では有効な治療薬として復活しています。
なお、サリドマイド(商品名:サレド)はその他さまざまな疾患に効果があるとされています。例えば、「エイズウイルスの増殖抑制」や「糖尿病性網膜症と黄斑変性症の予防」などです。1つの薬が多くの作用を有するため、その治療効果も多彩なのです。
多発性骨髄腫の治療では、すべての患者さんで副作用が確認されています。主な副作用としては眠気、便秘、口内乾燥などが知られています。なお、当然ですが「妊婦又は妊娠する可能性のある方」への投与は禁止されています。
このような特徴により、一度は市場から消えたものの、有効な治療薬として再び復活を遂げた薬がサリドマイド(商品名:サレド)です。
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