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役に立つ薬の情報~専門薬学

ポマリスト(ポマリドミド)の作用機序:多発性骨髄腫治療薬

 

血液のがんとして、多発性骨髄腫が知られています。骨髄は骨の中にあるゼリー状の組織であり、骨髄で血球細胞(白血球、赤血球、血小板など)が作られます。

 

白血球にはさまざまな種類があり、例えば抗体を作るB細胞が存在します。B細胞は一部が成熟した細胞(形質細胞)へと変化しますが、このときの細胞のがん化によって生じる疾患が骨髄腫です。通常、複数の骨が侵されるので多発性骨髄腫といいます。

 

そこで、多発性骨髄腫を治療するために用いられる薬としてポマリドミド(商品名:ポマリスト)があります。ポマリドミドはサリドマイド誘導体と呼ばれる種類の薬になります。

 

 ポマリドミド(商品名:ポマリスト)の作用機序
サリドマイドはかつて薬害を引き起こした薬として有名です。妊婦がサリドマイドを服用することにより、手足が極端に短い新生児が誕生するようになったのです。手足が短くアザラシのようにみえることから、アザラシ肢症といわれています。

 

ただ、サリドマイドには多彩な効能が知られており、その中の一つが多発性骨髄腫に対する作用です。かつては大きな薬害を引き起こしたことで姿を消したサリドマイドですが、現在では多発性骨髄腫などの治療薬として復活しています。

 

そこで、サリドマイドの構造を変化させることで、より効果の高い多発性骨髄腫の治療薬を創出しようと考えました。このようなアイディアによって生み出された医薬品がポマリドミド(商品名:ポマリスト)です。

 

ポマリドミド(商品名:ポマリスト)には免疫調節作用があると考えられています。例えば、炎症が起こるには、「炎症を引き起こす物質」の存在が不可欠です。このような「炎症を引き起こす物質」として、サイトカインが知られています。ポマリドミドはサイトカインが作られないように調節することで、炎症反応を抑制します。

 

また、腫瘍細胞に対する直接的な効果も確認されています。がん抑制に関わる遺伝子の働きを強めたり、がん細胞を細胞死(アポトーシス)へと導いたりするのです。

 

さらに、血管新生(新たに血管が作られること)を阻害します。がん細胞は無秩序な増殖を繰り返すことから、大量の栄養が必要です。栄養は血液から取ってくる必要があるため、がん細胞は自分のところへ新たな血管を作ることで、栄養や酸素を引っ張ってこようとします。

 

そこで血管が作られないようにすることで、がん細胞への栄養供給を遮断します。これにより、がん細胞の増殖を抑制できます。

 

 ポマリドミド(商品名:ポマリスト)の作用機序:多発性骨髄腫治療薬

 

このような考えにより、殺腫瘍作用や免疫調節作用など、さまざまな作用によって多発性骨髄腫を治療しようとする薬がポマリドミド(商品名:ポマリスト)です。

 

 

 ポマリドミド(商品名:ポマリスト)の特徴
サリドマイドは多くの作用メカニズムを有しており、どの働きが抗腫瘍効果を示すのかハッキリとは分かっていません。そのため、ポマリドミド(商品名:ポマリスト)も同様に明確な作用機序は分かっていません。

 

同じような多発性骨髄腫の治療薬としては、レナリドミド(商品名:レブラミド)やボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)が知られています。これらレナリドミドやボルテゾミブでも治療効果が不十分であった患者さんに対して、ポマリドミド(商品名:ポマリスト)が活用されます。

 

臨床試験では、88.9%の患者さんで副作用が確認されています。主な副作用としては好中球減少症、血小板減少症、発疹、白血球減少症、発熱、貧血、リンパ球減少症、便秘などが知られています。

 

なお、サリドマイドの構造をもとにしてポマリドミド(商品名:ポマリスト)が開発されているため、本剤を妊婦に投与すると催奇形性(胎児に奇形をもたらす作用)の恐れがあります。そのため、胎児がポマリドミドの影響を受けないように厳重に管理する必要があります。

 

このような特徴により、妊婦への投与は慎重になる必要があるものの、既存の治療薬でも効果が不十分なときに有効な抗がん剤がポマリドミド(商品名:ポマリスト)です。

 

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