キイトルーダ（ペムブロリズマブ）の作用機序：抗がん剤
多くの人にとって、がんは大きな問題になる重大な疾患です。死因上位にがんがあり、がんは死に直結する病気です。がんにはさまざまな種類があり、その中の一つとして皮膚にホクロのようながんを生じるメラノーマ（悪性黒色腫）があります。
そこで、メラノーマ（悪性黒色腫）に対する治療薬として開発された抗がん剤としてペムブロリズマブ（商品名：キイトルーダ）があります。ペムブロリズマブは抗ヒトPD-1モノクローナル抗体と呼ばれる種類の薬になります。
ペムブロリズマブ（商品名：キイトルーダ）の作用機序
無秩序な増殖をすることで有名ながん細胞ですが、がん細胞はもともと正常細胞から発生しています。ただ、がん細胞は正常細胞とは異なる性質を有しています。その中の一つが、免疫細胞からの攻撃を逃れようとするカモフラージュの機構です。
私たちの体の中では、常に代謝が行われており、細胞分裂をしています。このとき、遺伝子に変異が起こるとがん細胞が発生してしまいます。がん細胞は毎日、常に作られ続けています。しかしながら、それでも私たちは簡単にはがんを発症しません。これは、免疫ががん細胞の働きを抑えているからです。
がん細胞が体内で生じるのは、私たちにとって不都合です。そこで、免疫細胞はがん細胞を発見して攻撃し、細胞死へと導くようにプログラムされています。
ただ、このような免疫の働きはがん細胞にとってみれば好ましくありません。そこで、がん細胞は免疫細胞によって攻撃されないように隠れようとします。自身をカモフラージュすることによって、免疫細胞の発見から逃れようとするのです。
がん細胞には、こうしたカモフラージュの機構が存在します。そこで、がん細胞による「免疫による発見から逃れようとする作用」を取り払うことができれば、免疫は再びがん細胞を活発に細胞死へと導くことができるようになります。
より専門的な話をすると、がん細胞を攻撃して細胞死へと導く免疫細胞としてT細胞が存在します。つまり、T細胞によってがん細胞が死滅していきます。
ただ、T細胞の表面には、その働きを抑制するためのスイッチ（受容体）が存在します。これを専門用語でPD-1（抗プログラム死1）といいます。「抗プログラム死」という言葉から想像できる通り、この部位のスイッチが入るとT細胞の機能が抑制され、がん細胞は死ななくなります。
そしてがん細胞には、PD-L1やPD-L2と呼ばれる部位が存在します。これらの部位が「T細胞のPD-1」と結合すると、T細胞の働きが抑えられます。
そこで、T細胞に存在するPD-1をあらかじめ阻害しておけば、「T細胞の働きが抑えられる機構」を阻害できるようになります。こうして免疫系の働きを強め、がん細胞を殺すようにします。
このような作用機序により、「がん細胞によって免疫機構が抑制される過程」を阻害することによって、がんに対抗する薬がペムブロリズマブ（商品名：キイトルーダ）です。
ペムブロリズマブ（商品名：キイトルーダ）の特徴
ペムブロリズマブ（商品名：キイトルーダ）はモノクローナル抗体と呼ばれ、あらゆる物質の中でも「T細胞に存在するPD-1（T細胞の働きを抑制する部位）」を選択的に阻害する作用があります。モノクローナル抗体とは、簡単に考えると「特定の物質の働きを無効化する成分」と考えてください。
より専門的に話をすると、「ペムブロリズマブ（商品名：キイトルーダ）はT細胞上に存在するPD-1に結合し、腫瘍細胞にあるPD-L1やPD-L2との結合を阻害する」となります。
抗がん剤の中でも、ペムブロリズマブ（商品名：キイトルーダ）はメラノーマ（悪性黒色腫）に対して活用されます。より詳しくいうと、「切除不能または転移性の悪性黒色腫」に使用します。ただ、ペムブロリズマブは他にも非小細胞肺がん、膀胱がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、ホジキンリンパ腫などに活用されることもあります。
なお、抗がん剤である以上は多くの患者さんで副作用が確認されます。ペムブロリズマブ（商品名：キイトルーダ）の主な副作用としては、倦怠感、咳、食欲減退、呼吸困難などが知られています。
また、免疫機構に働きかける薬であるため、発疹、血管炎、溶血性貧血、血清病、重症筋無力症、水疱性類天疱瘡、ギランバレー症候群など、免疫疾患に関わる副作用が確認されています。
このような特徴により、免疫細胞（T細胞）に対して選択的に働きかけることで、免疫の働きを取り戻させてがん細胞を細胞死へと導くようにする薬がペムブロリズマブ（商品名：キイトルーダ）です。
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