ジーラスタ(ペグフィルグラスチム)の作用機序:好中球減少症治療薬
現在、日本でがんは死因の一位です。しかし、その治療は困難を極め、薬を投与するにしても副作用の強い医薬品が使用されます。特に、抗がん剤の投与による副作用として、好中球減少症と呼ばれるものがあります。
好中球は白血球の一種であり、これが減ってしまうと感染症に罹りやすくなります。そのため、重症の好中球減少症であると、肺炎や敗血症を頻発します。
そこで、抗がん剤による好中球減少症を治療するため、ペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)が使用されます。ペグフィルグラスチムはG-CSF製剤と呼ばれる種類の薬になります。
ペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)の作用機序
通常、細胞は成長が止まっています。勝手に細胞分裂が行われると、臓器の肥大化などを引き起こして機能不全に陥るからです。そのため、傷を負ったときなど、適切な場面でなければ細胞は増殖しません。
しかし、正常な細胞とは異なり、がん細胞は無秩序な増殖を繰り返します。そのため、一般的に「がん細胞の増殖は速い」といわれています。
がん細胞にはこのような特徴があるため、抗がん剤の基本的な性質としては「増殖速度の速い細胞をターゲットにする」ことがあります。しかし、これでは副作用の問題も発生します。正常細胞の中には、白血球など増殖速度の比較的速い細胞も存在するからです。
つまり、好中球などの白血球は抗がん剤の影響を受けやすいです。そのため、薬の投与によって好中球の数が減少していきます。これが、好中球減少症の副作用が発生する理由です。
このような場合、外から刺激を与えることで好中球を増やせば良いことが分かります。そのために重要な因子として、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)があります。G-CSFが放出されると、これが合図となって好中球が作られるようになります。そこで、薬として外からG-CSFを投与すれば、減少した好中球を増加させることができます。
このような考えにより、抗がん剤の投与によって減ってしまった好中球を回復させ、好中球減少症を治療する薬がペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)です。
ペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)の特徴
遺伝子組み換え技術によって、G-CSFを生成することができます。ただ、このとき作られるG-CSF製剤を投与すると、すぐに分解されてしまうので1日1回の投与が必要です。
例えば、既存のG-CSF製剤としてフィルグラスチム(商品名:グラン)が知られています。この製品は、前述の通り1日1回の投与です。
そこで、G-CSF製剤に対して、ポリエチレングリコール(PEG)を付加させた製品の創出を行いました。これが、ペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)です。
フィルグラスチム(商品名:グラン)では投与回数が多く、連日投与が必要だったのに対して、ペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)では化学療法1サイクルのうち1回の投与ですみます。
抗がん剤は副作用が強いので連続投与をせず、休薬期間を設けます。「薬物の連続投与 → 薬の休薬期間」が一回りすることで1サイクルです。抗がん剤を投与している期間は好中球減少症の副作用が表れやすいので、そのときにペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)を1回だけ投与するのです。
皮下投与による半減期(薬の濃度が半分になる時間)を調べたところ、フィルグラスチム(商品名:グラン)は2.15時間でした。それに対して、ペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)は50時間程度にまで延長されています。
このような特徴により、G-CSFを加工することで半減期を長くし、薬の投与回数を減少させた好中球減少症治療薬がペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)です。
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