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アルケラン(メルファラン)の作用機序:抗がん剤

 

がんは重大な疾患の1つですが、血液のがんとして多発性骨髄腫が知られています。多発性骨髄腫は比較的多い血液がんであり、50歳以上の高齢な方で発症しやすい疾患です。

 

そこで、多発性骨髄腫などの血液がんを治療するために用いられる薬としてメルファラン(商品名:アルケラン)があります。メルファランはアルキル化剤と呼ばれる種類の薬になります。

 

 メルファラン(商品名:アルケラン)の作用機序
がん細胞は細胞分裂を繰り返すことで増殖していきます。この時に増えていく細胞は臓器として機能せず、自己を増殖を行うことだけを考えます。

 

がん細胞は正常細胞の中へ入っていき、栄養を吸い取っていくために栄養失調を引き起こさせます。また、正常細胞に替わってがん細胞の割合が増えるために臓器不全を引き起こしてしまいます。そこで、がん細胞の増殖を抑えることで病気を治療しようとします。

 

細胞分裂を行うためには、DNAの複製が必要です。DNAを複製できなければ、細胞分裂も起こりません。これに着目し、抗がん剤はDNA合成を阻害することで細胞分裂をストップさせるのです。

 

抗がん剤の中でも、アルキル化剤と呼ばれる薬はDNA鎖に結合する性質を有しています。DNAにアルキル化剤が結合することによって、DNAが複製できなくなるのです。このときの結合様式が橋を架けたように見えることから、架橋反応と呼ばれています。

 

 アルケラン(メルファラン)の作用機序:抗がん剤

 

このような考えにより、DNA鎖へ直接作用することによって細胞分裂を抑える薬がメルファラン(商品名:アルケラン)です。

 

がん細胞のように細胞分裂が活発であると、DNAの合成も盛んです。アルキル化剤は「DNA合成を抑制し、細胞死へと導く」という毒性をもつため、がん細胞に対して特に強い細胞毒性を示すのです。

 

 

 メルファラン(商品名:アルケラン)の特徴
世界初の抗がん剤としてナイトロジェンマスタードが知られています。ナイトロジェンマスタードの構造を元にして開発された薬がメルファラン(商品名:アルケラン)であり、がん細胞に対する親和性を高くしています。

 

メルファラン(商品名:アルケラン)が開発される前まで、骨髄腫に対する有効な治療法はありませんでした。ここにメルファランが登場し、ようやく多発性骨髄腫への治療が開けたのです。

 

メルファランの主な副作用としては、骨髄抑制に伴う「白血球減少」、食欲不振、悪心・嘔吐などの「胃腸障害」、そして「肝障害」が知られています。

 

なお、造血幹細胞の移植を行うとき、「悪性の骨髄細胞を根絶すること」と「移植による拒絶反応を抑える」という目的で前処置を行います。この前処置にメルファラン(商品名:アルケラン)の大量投与が行われます。白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、小児固形腫瘍などの前処置で利用されます。

 

このような特徴により、「DNA合成を抑制して細胞死を引き起こす」という細胞毒性によって多発性骨髄腫を治療したり、骨髄移植の前処置に利用されたりする薬がメルファラン(商品名:アルケラン)です。

 

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