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役に立つ薬の情報~専門薬学

エストラサイト(エストラムスチン)の作用機序:抗がん剤

 

前立腺は男性特有の臓器です。前立腺にがんを生じることがあり、これを前立腺がんと呼びます。女性では前立腺がんは起こりません。

 

前立腺は生殖器の1つであり、男性ホルモンの働きが大きく関与しています。前立腺がんの増大にも男性ホルモンが関わっているため、ホルモンの働きを調節する薬は前立腺がんの成長を抑制することができます。

 

また、古くから使用されている抗がん剤は細胞毒性を示すことによってがん細胞を殺します。要は、薬によってがん細胞を細胞死へと導くのです。これらの作用によって前立腺がんを治療する薬がエストラムスチン(商品名:エストラサイト)です。

 

 エストラムスチン(商品名:エストラサイト)の作用機序
抗がん剤には毒性があります。もっと言えば、細胞分裂の速い細胞に対して強い毒性を示します。これは、がん細胞の増殖速度が異常に速いためです。

 

通常、正常細胞は活発な細胞分裂を行いません。勝手に細胞の数が増えてしまうと、臓器の肥大化を招いてしまいます。

 

一方、正常細胞に比べて、がん細胞は無秩序な増殖を繰り返します。正常細胞へ侵入していき、転移を行うことで他の臓器でも増殖を行うようになります。そこで、細胞分裂の速い細胞へ毒性を示す物質を投与するのです。

 

この作用を理解するためには、DNAの働きを学ぶ必要があります。DNAはすべての生命情報が刻まれているため、これがなければ細胞分裂を行うことができません。つまり、DNAの働きを阻害する薬は「細胞分裂を阻害することで毒性を示す」という作用を有しています。

 

細胞分裂を行うとき、DNAの複製が必要です。DNAの複製後、それぞれの細胞ごとにDNAを2つに分けなければなりませんが、このときに微小管と呼ばれる物質が重要な役割を果たします。この物質が寄せ集まることで、ようやくDNAを2つに分ける準備が整います。

 

微小管が集まる過程を専門用語で「重合する」と呼びます。この部分を阻害すれば、細胞分裂を抑制できるようになります。

 

 微小管重合阻害薬:抗がん剤

 

このような考えにより、細胞分裂を行う過程を阻害することで抗がん作用を示す薬がエストラムスチン(商品名:エストラサイト)です。

 

 

 エストラムスチン(商品名:エストラサイト)の特徴
世界初の抗がん剤としてナイトロジェンマスタードが有名です。アルキル化剤と呼ばれる種類の薬であり、細胞毒性によってがん細胞を死滅させます。

 

同様に、エストロゲンなどの女性ホルモンも抗がん剤として利用されます。これは、男性ホルモンの働きを抑えるという目的があります。前立腺がんはホルモンによる影響が大きいため、女性ホルモンによって男性ホルモンの働きを抑え、前立腺がんを治療するのです。

 

エストラムスチン(商品名:エストラサイト)はナイトロジェンマスタードとエストロゲンの2つを結合させた構造を有しています。エストラムスチンは「前立腺がんに多く存在するタンパク質」に結合する性質があるため、前立腺がんへ高濃度に集まるという特性を備えています。

 

また、エストラムスチン(商品名:エストラサイト)が体内で代謝されると、エストロゲンが出現します。これによって男性ホルモンの働きが抑えられ、前立腺がんの働きを抑えることができます。

 

このような特徴により、細胞毒性(がん細胞を殺す作用)や男性ホルモンの働きを抑える作用によって前立腺がんを治療する薬がエストラムスチン(商品名:エストラサイト)です。

 

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