ダウノマイシン(ダウノルビシン)の作用機序:抗がん剤
白血病は血液のがんとして知られており、その中でも経過が速い白血病に急性白血病があります。白血病を発症すると、貧血や発熱、出血傾向などの症状が表れます。
そこで、急性白血病を治療するために用いられる薬としてダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン)があります。ダウノルビシンは抗がん性抗生物質と呼ばれる種類の薬になります。
ダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン)の作用機序
白血球が異常に増えてしまう病気が白血病です。血球成分は骨髄で作られますが、この細胞が不死化することで異常な増殖を行うようになり、白血球が増えていきます。
普通に考えれば、白血球が増えても問題ないように思えます。しかし、白血病で作られる血球細胞は不完全であり、白血球として細菌に対抗するための機能がありません。
しかも、赤血球や血小板など、本来作られるべき血球ではなくて不完全な白血病細胞ばかりが生成されるようになります。
これによって感染症に罹りやすくなり、先に挙げた貧血や出血などの症状が表れるようになるのです。そこで、細胞増殖の活発な細胞を抑制することで、がんを治療しようとします。これは、「正常な細胞に比べて、がん細胞は無秩序な増殖を繰り返す」という性質に着目したものとなります。
細胞の増殖抑制には、DNAが重要になります。DNAには生命情報が刻まれているため、これを複製することで、ようやく細胞分裂を行うことができます。そこで、DNAの合成を阻害することで細胞分裂を抑制し、がん細胞の増殖を止めるのです。これを行うために抗生物質が使用されます。
抗生物質と言えば、細菌感染症を治療するための薬であると多くの人が想像します。ただ、それだけの用途で使用されるわけではありません。
そもそも抗生物質とは、「微生物が作り出す、細菌を殺すための物質」を指します。これを抽出して感染症の治療に用いるということです。ただ、細菌に対して抗生物質が毒性を示すのと同じように、中には増殖の速いがん細胞(ヒトの細胞)に対して毒性を示す抗生物質も存在します。
このような考えにより、細胞毒性を示す抗生物質をがん治療に応用しようとして開発された薬がダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン)です。このような抗がん性抗生物質は、抗腫瘍性抗生物質と呼ばれることがあります。
ダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン)はDNAに対して直接結合する性質を有しています。これによってDNA合成が阻害され、細胞分裂を抑制するのです。
ダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン)の特徴
主に急性白血病の治療に使用される薬がダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン)です。急性白血病に対して寛解導入効果を示します。寛解とは、病気の症状が表面上見えなくなった状態を指します。慢性骨髄性白血病からの急性転化に対しても使用されます。
ダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン)は、他の作用機序を有する抗がん剤を複数組み合わせる方法(多剤併用療法)での効果が認められています。
多くの方で副作用が表れ、主なものとしては消化管障害、全身症状(発熱、悪寒、倦怠感、胸内苦悶など)、皮膚障害(脱毛、発疹など)、心臓障害(心不全、頻脈)、血管障害(血管炎、血管痛など)、血液障害(白血球減少、赤血球減少、血小板減少など)、骨髄組織障害、肝障害、腎障害などが知られています。
このような特徴により、細胞毒性を示す抗生物質を利用することでがん細胞の増殖を抑制し、急性白血病を治療する薬がダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン)です。
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