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キロサイド（シタラビン）の作用機序：抗がん剤

 

がんと言っても、白血病などの血液がんを発症することもあれば、固形がんなどが生命を脅かすこともあります。これらがん疾患は致死性が高いため、手術や放射線、そして薬を用いた化学療法などによって治療を行っていきます。

 

そこで、がんを治療するために使用される薬としてシタラビン（商品名：キロサイド）があります。シタラビンは代謝拮抗薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

　シタラビン（商品名：キロサイド）の作用機序
がん細胞は活発に細胞分裂を繰り返すことで知られています。無秩序な細胞増殖を行うことにより、正常細胞へ入っていったり、他の臓器へ転移したりします。

 

一方、正常細胞はがん細胞のような増殖を行いません。ある一定の大きさになれば細胞分裂を止め、傷を負った時など、必要な場合に応じて再び細胞分裂を行うように制御されています。がん細胞ではこの制御系が機能していません。

 

そこで、多くの抗がん剤は「分裂速度の速い細胞に毒性を示す」という作用メカニズムによって抗がん作用を示します。

 

細胞増殖を行うとき、DNAの複製を必ず行わなければいけません。DNA合成ができなければ、細胞分裂もストップします。そこで、DNA合成を阻害する薬を使用すれば、抗がん作用を得ることができます。

 

遺伝情報として、DNAやRNAが知られています。これらのDNAやRNAを構成するためには原料が必要であり、原料としてシトシン（C）やチミン（T）、ウラシル（U）と呼ばれる物質があります。そして、これらの原料にはピリミジン骨格と呼ばれる化学構造が含まれています。

 

　

 

そこで、これらの原料と構造を似せた化合物を投与すれば、原料と間違えてDNAの合成過程の中へ取り込ませることができます。正しい原料ではなくて間違った不純物が取り込まれるため、DNAの合成がストップしてしまうのです。

 

このように、DNAの原料に構造を似せることによって間違えて認識させ、細胞増殖を抑える薬がシタラビン（商品名：キロサイド）です。

 

なお、DNAの原料を取り込んでDNA鎖を伸長する酵素にDNAポリメラーゼがあります。シタラビンはDNAポリメラーゼに認識されて取り込まれ、結果としてDNA合成を抑制します。

 

 

　シタラビン（商品名：キロサイド）の特徴
1962年シタラビン（商品名：キロサイド）を初めてヒトに対して利用し、そこから抗がん作用が注目されるようになりました。1965年には急性白血病に対して効果を有することが報告され、日本でも1971年から白血病の治療薬として発売をスタートしています。

 

急性白血病に対して、シタラビン（商品名：キロサイド）は寛解導入や維持療法で効果を示します。また、白血病に限らず、消化器がん、肺がん、乳がんなどの固形がんに対しても、他の抗がん剤と併用することで効果を示すことが分かっています。

 

主な副作用としては、、悪心・嘔吐、食欲不振、腹痛、下痢などの「消化器障害」と白血球減少、血小板減少などの「血液障害」が知られています。

 

このような特徴により、DNA合成の過程に作用することによって細胞分裂を阻害し、抗がん作用を示す薬がシタラビン（商品名：キロサイド）です。なお、シタラビンはAra-CやAraCと表記されることもあります。