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役に立つ薬の情報~専門薬学

ベルケイド(ボルテゾミブ)の作用機序:抗がん剤

 

多発性骨髄腫は血液がんの一種です。骨髄は血液を作る器官として知られており、ここに存在する形質細胞と呼ばれる細胞のがん化によって多発性骨髄腫が引き起こされます。

 

そこで、多発性骨髄腫を治療するために使用される薬としてボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)があります。ボルテゾミブはプロテアソーム阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)の作用機序
がん細胞が無秩序に細胞分裂を繰り返すという性質から、古くから使用される抗がん剤は「細胞増殖の速い細胞」をターゲットとしています。しかし、この考えでは増殖速度の比較的早い正常細胞(髪の毛や生殖器細胞など)まで傷害してしまいます。

 

そこで、がん細胞だけに対して選択的に作用させる薬として分子標的薬が開発されました。プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)は分子標的薬の一つです。

 

細胞分裂が行われるためには、細胞周期の回転が必要になります。細胞には「DNAを複製する時期」「1つの細胞が2つに分裂する時期」「細胞分裂を休んでいる時期」など、いくつかの周期に分けることができます。細胞周期が次の段階へと進むことで、ようやく細胞分裂が行われるのです。

 

プロテアソームとは、不要となったタンパク質の分解を行う酵素のことです。細胞周期には、このプロテアソームが大きく関わっています。

 

細胞周期が回転するためにはエンジンが必要です。このエンジンはタンパク質の一種です。ただし細胞周期が回転し終わった場合、エンジンとして活躍したタンパク質は不要となるため、分解する必要があります。この分解に関わっている酵素がプロテアソームです。

 

不要なタンパク質の分解に関わるプロテアソームを阻害すると、細胞周期が終わった後、必要となくなったタンパク質が分解されずに残ってしまいます。これによって細胞の機能が停止し、不要なタンパク質が蓄積されるため、細胞死が引き起こされます。

 

 ベルケイド(ボルテゾミブ)の作用機序:プロテアソーム阻害薬

 

このように、プロテアソームを阻害することによって細胞周期に影響を与え、抗がん作用を示す薬がボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)です。

 

 

 ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)の特徴
プロテアソームを阻害することで抗がん作用を示す世界初の薬がボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)です。細胞増殖に関わるシグナル伝達を阻害するため、がん細胞の増殖を抑制することができます。

 

臨床試験では、「再発性または難治性の多発性骨髄腫」に対して、単独投与での奏効率(がん細胞が縮小したり消えたりする割合)は30%でした。造血幹細胞の移植が適応されない未治療の多発性骨髄腫の場合、奏効率は72.4%です。

 

なお、骨髄のがんを治療する薬ということもあり、主な副作用としてはリンパ球や白血球などの血球成分の減少が知られています。その他、食欲不振や下痢、発疹など多くの副作用があります。

 

このような特徴により、血液がんの一種である多発性骨髄腫を治療する分子標的薬がベルケイド(ボルテゾミブ)です。

 

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