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役に立つ薬の情報~専門薬学

ザイティガ(アビラテロン)の作用機序:抗がん剤

 

男性に特有の臓器として、前立腺が知られています。前立腺は尿道を取り囲むように存在しており、生殖器系の1つです。ここにがんを生じることがあり、これを前立腺がんといいます。高齢になればなるほど、前立腺がんを含む、がんの発症確率は高くなります。

 

そこで、がんを治療するために使用される薬としてアビラテロン(商品名:ザイティガ)があります。アビラテロンはCYP17阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 アビラテロン(商品名:ザイティガ)
前立腺は生殖器であることから分かる通り、男性ホルモン(アンドロゲン)による影響を大きく受けます。男性ホルモンが前立腺へ作用することでその機能を発揮しますが、前立腺がんも同様に男性ホルモンによって活性化します。

 

これを改善するためには、男性ホルモンの働きを阻害すれば良いことが分かります。男性ホルモンによって前立腺がんが増悪していくため、その原因を遮断するのです。

 

男性ホルモンを作用させなくするためには、外科的に精巣を取り除く方法があります。精巣は男性ホルモンを作る主な臓器だからです。

 

また、手術までしなくても、薬によって男性ホルモンが働けないようにする方法が主に行われます。この場合は、男性ホルモンの分泌を抑制したり、男性ホルモンが作用するためのスイッチ(受容体)を阻害したりします。

 

男性ホルモンが分泌されるためには、それぞれの臓器で男性ホルモンが作られなければいけません。このとき、男性ホルモンの合成に関わる主要な酵素としてCYP17と呼ばれるものが知られています。そこでCYP17を阻害すれば、男性ホルモンが作られなくなり、前立腺がんを治療できることが分かります。

 

 ザイティガ(アビラテロン)の作用機序

 

このような考えにより、男性ホルモンの働きを抑えることで前立腺がんを治療する薬がアビラテロン(商品名:ザイティガ)です。

 

 

 アビラテロン(商品名:ザイティガ)の特徴
男性ホルモン(アンドロゲン)を外科的、または薬によって少なくし、去勢状態にしたとしても、効果が不十分であることがあります。これは、男性ホルモンの少ない環境に前立腺がんが慣れていくためです。それだけでなく、前立腺がんが男性ホルモンを合成するようになっています。

 

このように、ホルモン療法(男性ホルモンを遮断して前立腺がんを抑える治療法)に対して抵抗性を示す前立腺がんを、去勢抵抗性前立腺がんといいます。それまでの治療法では治療効果が薄いため、他の治療法を検討します。

 

従来の薬は、精巣に存在する男性ホルモンを阻害するだけでした。精巣の摘出も同様であり、精巣から分泌される男性ホルモンしか抑えることができません。しかし、男性ホルモンは精巣の他にも、副腎や前立腺、さらには前立腺がん細胞からも分泌されています。

 

アビラテロン(商品名:ザイティガ)は男性ホルモンの合成に関わる主要な酵素(CYP17)を阻害することにより、精巣だけでなく副腎や前立腺の男性ホルモンも抑えます。それだけでなく、従来の薬では達成できなかった「前立腺がんによる男性ホルモンの合成」まで抑制します。

 

なお、男性ホルモンの他にも、副腎は副腎皮質ホルモンなど多くのホルモン分泌に関わっています。アビラテロン(商品名:ザイティガ)は男性ホルモンだけでなく、副腎皮質ホルモンの分泌まで抑えてしまうのです。副腎皮質ホルモンが枯渇してしまうため、これを外から補充しなければいけません。

 

そのため、アビラテロン(商品名:ザイティガ)を使用する際は、副腎皮質ホルモンと同じような働きをする「プレドニゾロン」という薬を併用して用います。

 

このような特徴により、男性ホルモン(アンドロゲン)の合成に関わる主要酵素を抑えることにより、前立腺がんを治療する薬がアビラテロン(商品名:ザイティガ)です。

 

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