ティーエスワン(テガフール、ギメラシル、オテラシル:TS-1)の作用機序:抗がん剤
がんは治療の難しい疾患であり、がんによって亡くなる方は多いです。がんは治療の難しい病気であり、手術や放射線、そして化学療法などを駆使して治療が行われます。
そこで、がんに対抗するために使用される薬としてテガフール、ギメラシル、オテラシル(商品名:ティーエスワン、TS-1)があります。3つの有効成分を配合させた薬であり、代謝拮抗薬と呼ばれる種類の薬になります。フッ化ピリミジン系抗がん剤といわれることもあります。
5-フルオロウラシルとテガフール
古くから使用されている抗がん剤として「5-フルオロウラシル(5-FU)」と呼ばれる物質があります。がん細胞は無秩序な細胞分裂を繰り返すことで有名ですが、細胞分裂を行うためにはDNAの複製を行わなければなりません。
5-フルオロウラシルを投与すると、細胞がDNA合成を行うとき、DNAを合成するときの原料と間違えて5-フルオロウラシルを取り込んでしまいます。本来の原料とは違う物質がDNAの原料として利用されるため、DNAの合成が止まり、結果として細胞分裂を抑制できます。
このような作用から5-フルオロウラシルが利用されていましたが、この物質は「薬の作用時間が短い」という欠点があります。そこで、体の中で代謝を受けることで5-フルオロウラシルへと変換されるように設計した薬としてテガフールが開発されました。
体内で代謝され、薬として作用する形へと変換する医薬品をプロドラッグと呼びます。5-フルオロウラシルをプロドラッグ化したものがテガフールなのです。テガフールは肝臓の代謝酵素によって徐々にフルオロウラシルへと変換されます。
テガフール、ギメラシル、オテラシル(商品名:ティーエスワン、TS-1)の作用機序
5-フルオロウラシルを改良したテガフールですが、副作用が強く、このままの状態でも抗がん作用は十分ではありません。そこで、ここに「ギメラシル」と「オテラシル」という有効成分が重要になります。
テガフールが5-フルオロウラシルへと変換されると、すぐに肝臓で代謝・不活性化されます。肝臓での代謝・不活性化を阻害すれば、5-フルオロウラシルの作用を持続させることができ、さらなる抗がん作用を得ることができます。このような作用をする有効成分がギメラシルです。
この時の「肝臓での分解物」は神経毒性にも関与しているため、ギメラシルは5-フルオロウラシルによる副作用まで軽減できます。
また、細胞分裂が比較的速い細胞はがん細胞だけでなく、消化管の細胞があります。がん細胞だけに5-フルオロウラシルが作用すれば良いですが、実際には消化管細胞へ作用することで副作用が起こります。
そこで、5-フルオロウラシルが消化管で活性化されないようにすれば、5-フルオロウラシルが消化管細胞へ作用しなくなるため、下痢などの副作用を軽減できることが分かります。そこで、消化管で5-フルオロウラシルが活性化されないように作用する薬がオテラシルカリウムです。
このような考えにより、
・5-フルオロウラシルへと変換されることで抗がん作用を示す「テガフール」
・5-フルオロウラシルの代謝を抑制して作用時間を延長し、副作用まで軽減する「ギメラシル」
・消化管での5-フルオロウラシルの活性化を防ぐことで副作用を軽減する「オテラシルカリウム」
の3つを配合した薬がティーエスワン(TS-1)です。
テガフール、ギメラシル、オテラシル(商品名:ティーエスワン、TS-1)の特徴
前述のとおり、抗がん剤として多用される5-フルオロウラシルの効果を強め、副作用の軽減を図った薬がテガフール、ギメラシル、オテラシル(商品名:ティーエスワン、TS-1)です。
胃がん、大腸がん(結腸・直腸がん)、頭頸部がん、非小細胞肺がん、乳がん、膵がん、胆道がんと幅広いがんに対して利用される薬です。
臨床試験では、薬の投与による奏効率(がん細胞が小さくなったり消えたりする割合)は胃がんや大腸がん(結腸・直腸がん)で32.6%、頭頸部がんで34.1%となっています。他の抗がん剤と併用することにより、さらなる高い効果を得ることができます。
このような特徴により、3つの有効成分によって抗がん作用や副作用を軽減などを施した薬がテガフール、ギメラシル、オテラシル(商品名:ティーエスワン、TS-1)です。
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