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トブラシン（トブラマイシン）の作用機序：抗生物質

 

細菌によって起こる病気として、感染症が知られています。感染症は軽いものから、肺炎や敗血症など死に直結するものまでさまざまです。これら感染症は高齢になるほど問題となりやすいです。

 

そこで、感染症を治療するために使用される薬としてトブラマイシン（商品名：トブラシン）が知られています。トブラマイシンはアミノグリコシド系抗生物質と呼ばれる種類の薬になります。

 

　トブラマイシン（商品名：トブラシン）の作用機序
感染症は病原微生物によって引き起こされるため、この状態を治療するためには体内に巣食っている細菌を排除すれば良いことが分かります。このとき、最も重要になるのが免疫です。

 

免疫は外から入ってきた異物に対処しようとします。病原菌が侵入してくれば、くしゃみなどを起こして外に出そうとします。また、免疫自ら細菌を殺す働きもします。私たちの周りは細菌であふれかえっていますが、それでも簡単に感染症を発症しないのは免疫が正常に働いているからです。

 

ただ、中には免疫の働きが弱っている方もいます。高齢者であるほど感染症が問題となるのは、ここに理由があります。高齢になると抵抗力が弱ります。また、生活習慣病を発症していたり、副作用の強い薬を服用したりしていると免疫力はさらに弱ります。

 

このような方では、感染症を発症しやすいです。また、一度感染症を発症すると治りにくいため、抗生物質によって病気を治療します。このとき、抗生物質には「細菌にとって毒であるが、ヒトには無毒である」という性質があります。

 

ヒトや細菌は生命活動を行っています。そのために必ず作らなければいけない物質がタンパク質です。皮膚や髪の毛がタンパク質で作られていることから分かる通り、タンパク質は生命維持に必須の物質です。

 

このタンパク質はリボソームと呼ばれる器官で作られます。重要なのは、「ヒトと細菌ではリボソームの形が異なる」という事実です。そこで、この違いを見極めて細菌のリボソームだけを阻害すれば、ヒトには毒性を示さずに細菌だけに毒性を与えることが分かります。

 

　

 

このような考えにより、タンパク質合成に必要な器官を阻害することで、細菌を殺す薬がトブラマイシン（商品名：トブラシン）です。専門的な話をすると、「トブラマイシンは細菌の30Sサブユニットに不可逆的に結合し、その作用を阻害する」となります。トブラマイシンはタンパク質合成の初期を阻害します。

 

 

　トブラマイシン（商品名：トブラシン）の特徴
抗生物質には、細菌を殺して「殺菌的」に作用する場合と増殖を抑えて「静菌的」に作用する場合の2パターンがあります。トブラマイシン（商品名：トブラシン）は殺菌性の抗生物質です。黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌の他に、グラム陰性桿菌に対して優れた効果を示します。

 

抗菌薬が効きにくい細菌として、緑膿菌が有名です。緑膿菌はグラム陰性菌ですが、トブラマイシン（商品名：トブラシン）は緑膿菌に対しても効果を示します。

 

なお、トブラマイシン（商品名：トブラシン）などのアミノグリコシド系抗生物質に共通しますが、重篤な副作用に腎障害と聴力障害が知られています。腎臓に障害性を示すために腎機能が悪化し、耳に影響を与えることで平衡感覚が鈍ったり聞こえが悪くなったりします。

 

これを避けるため、トブラマイシン（商品名：トブラシン）を追加投与する場合、血液中に残っているトブラマイシンの薬物濃度をできるだけ低くした状態から追加で使用します。専門用語では、「トラフ値の血中濃度を下げる」と表現します。

 

このような特徴により、感染症で問題となりやすい緑膿菌に対しても有効であるが、副作用にも注意が必要となる薬がトブラマイシン（商品名：トブラシン）です。