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オラペネム(テビペネム)の作用機序:抗生物質

 

細菌感染症は重大な疾患であり、毎年多くの人が亡くなっています。感染症の歴史は古く、紀元前のミイラから天然痘ウイルスが発見され、14世紀には黒死病と呼ばれるペストが蔓延しました。ただ、抗生物質の開発により、現在ではこれら微生物に対抗できるようになっています。

 

そこで、感染症を治療するために使用される抗生物質としてテビペネム(商品名:オラペネム)があります。テビペネムはカルバペネム系抗生物質と呼ばれる種類の薬になります。

 

 テビペネム(商品名:オラペネム)の作用機序
感染症は細菌などの微生物によって起こります。この状態を治療するためには、体内に巣食っている細菌を排除すればよいことが分かります。これには、免疫が重要な役割を果たします。

 

ただ、免疫の力だけでは細菌感染症に対抗できないことがあります。特に高齢者であれば、抵抗力が弱っています。さらに糖尿病や腎不全などの疾患をもっていて、多くの薬を服用していると基礎体力が低下しています。つまり、それだけ感染症から立ち直りにくくなります。

 

そこで、抗生物質を投与することで感染症を治療します。細菌を殺すことにより、病気を引き起こしている原因菌を退治するのです。

 

抗生物質は、細菌にとって毒です。しかし、ヒトに対しても同じように毒性を示してはいけません。そこで、抗生物質には「細菌に対して毒であるが、ヒトには毒性を示さない」という性質があります。これは、ヒトと細菌の違いを判断することで実現できます。

 

細胞の周りには、細胞膜と呼ばれる膜があります。細胞膜が存在することにより、私たちは外と内を分けることができます。ただ、細菌の場合はさらに、細胞膜の周りを細胞壁と呼ばれる壁で取り囲んでいます。

 

そこで、細胞壁の合成を阻害する薬を投与すれば、細菌だけに対して選択的に毒性を与えることができます。ヒトの細胞は細胞壁がないからです。

 

 β-ラクタム系抗生物質の作用機序

 

このような考えにより、細胞壁の合成をストップさせることで細菌を殺す薬がテビペネム(商品名:オラペネム)です。

 

 

 テビペネム(商品名:オラペネム)の特徴
抗菌薬の問題点は、「抗菌薬が効かない耐性菌」がたくさん発生していることです。特に、抗生物質を分解する酵素を細菌が獲得すると、多くの抗菌薬が効きにくくなります。こうのような酵素として、β-ラクタマーゼがあります。以下に、抗生物質ペニシリンとβ-ラクタマーゼの反応を示します。

 

 β-ラクタマーゼによる開環反応

 

ただ、テビペネム(商品名:オラペネム)はβ-ラクタマーゼに対して抵抗性をもっています。そのため、ペニシリンに対して耐性を有する細菌にも効果を示します。

 

カルバペネム系抗生物質と呼ばれるテビペネム(商品名:オラペネム)ですが、最大の特徴は「幅広い細菌に対して効果を有する」ことです。専門用語では、「抗菌スペクトルが広い」といわれ、グラム陽性菌からグラム陰性菌、嫌気性菌に至るまで効果を示します。

 

抗菌薬が効きにくいとされる細菌に対しても、テビペネム(商品名:オラペネム)は有効であることが多いです。他の抗菌薬が効かない小児中耳炎や副鼻腔炎、肺炎に対して、テビペネムは優れた効果を有します。

 

ほとんどの細菌に効いてしまうため、耐性菌の発生を防ぐためにも、実際に使用する際は慎重にならなければいけません。切り札として、できるだけ取っておくのです。

 

主な副作用としては、下痢・軟便が知られています。これは、テビペネム(商品名:オラペネム)が腸内細菌を殺してしまうために起こると考えられます。ほとんどの細菌に対してテビペネムは作用するため、それだけ腸内細菌のバランスが崩れやすいのです。

 

このような特徴により、幅広い細菌に対して有効であるが、耐性菌の蔓延を防ぐためにも慎重に使用しなければいけない薬がテビペネム(商品名:オラペネム)です。

 

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