リファジン(リファンピシン)の作用機序:抗結核薬
結核はかつて国民病とまで呼ばれ、猛威をふるっていた感染症です。抗菌薬の開発によって結核による死者は激減したものの、現在でも結核で亡くなる方は多いです。
そこで、結核を治療するために使用される薬としてリファンピシン(商品名:リファジン)があります。リファンピシンはRNAポリメラーゼ阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。
リファンピシン(商品名:リファジン)の作用機序
結核の原因菌を結核菌といいます。結核菌が存在しているために病気を生じているため、結核菌を排除すれば感染症を治療できることが分かります。そこで、抗結核薬を使用します。免疫の働きだけでは、結核菌を十分に排除できないためです。
抗菌薬はどれも、「ヒトに大きな影響を与えないが、細菌には毒性を示す」という特徴があります。これは、ヒトと細菌に違いがあるからです。
細菌が増殖をしたり生命活動を行ったりするためには、タンパク質の合成が必要です。私たちであっても、髪の毛や皮膚、爪がタンパク質で構成されていることから分かる通り、タンパク質は必須の物質なのです。
これらタンパク質は遺伝子に書かれている情報を元に合成されます。遺伝子としてはDNAが有名であり、ここからタンパク質を合成します。
ただ、DNAは生命情報の元であるため、外に持ち出すことができません。そこで、必要な部分だけを持ち出せるような形へと一度変換する必要があります。これを、RNAといいます。RNAも遺伝子であり、RNAの情報を元にしてタンパク質を合成します。
料理でいえば、DNAが本に当たり、RNAが必要な部分だけを書き出したレシピ、タンパク質が料理になります。
DNAからRNAを作るときは、酵素が作用します。この酵素をRNAポリメラーゼといいます。もっと専門的に表現すると、DNAを元にしてRNAを作るため、このときの酵素はDNA依存性RNAポリメラーゼと表現します。
そこで、RNAポリメラーゼを阻害すれば、RNA合成を抑制できることが分かります。これにより、タンパク質合成を抑えることで結核菌に対して毒性を与えることができます。
このような考えにより、タンパク質を合成するために必要な遺伝情報であるRNAの合成を阻害し、結核を治療する薬がリファンピシン(商品名:リファジン)です。リファンピシンは動物のRNAポリメラーゼまでは阻害しないため、細菌に示すような細胞毒性はありません。
リファンピシン(商品名:リファジン)の特徴
あらゆる抗菌薬の中でも、結核菌に対して強い抗菌作用を有する薬がリファンピシン(商品名:リファジン)です。その他、ハンセン病の治療でも用いられます。
実際に結核を治療するときは、単剤で使用することはありません。これは、耐性菌が出現するからです。抗菌薬が効かない細菌を耐性菌と呼び、結核では耐性菌の出現が問題になっています。
リファンピシン(商品名:リファジン)を単剤で用いると、結核菌は容易に耐性化します。これを防ぐため、結核治療では4剤以上を併用するようにされています。作用機序の異なる薬を複数飲むことにより、耐性菌の出現を防ぐのです。
結核を治療するポイントは、「毎日、薬を服用してもらうこと」です。結核治療は6ヶ月以上にも及ぶため、薬の服用がルーズになりがちです。そこで、医療者が見ている前で服用させるDOTSと呼ばれる方式が広く採用されています。これにより、結核を確実に治療しながら耐性菌の出現を防ぎます。
なお、リファンピシン(商品名:リファジン)はそれ自体が赤色をしているため、尿が赤くなることがあります。ただ、これは薬の色であり、血尿ではないため問題ありません。その赤色により、コンタクトレンズが着色したり、汗をかいたときに服に着色を生じることがあります。
さらに、リファンピシンは肝臓において、「薬を代謝する酵素」を増やす作用があります。これは、リファンピシンを服用して2~4日以内にみられ、6~10日経過すると酵素の働きは最大になると考えられています。
「薬の代謝に関わる酵素が増える」ということは、他の薬が素早く代謝されて作用がすぐになくなることを意味します。つまり、リファンピシンは他の薬の効果を減弱させます。これらリファンピシンによって酵素が増える作用は、薬を中止すると2~3週間で元の状態に戻るともいわれています。
このような特徴により、結核菌を強力に抑えるものの、その使用に当たってはいくつかの注意を要する薬がリファンピシン(商品名:リファジン)です。
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