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役に立つ薬の情報~専門薬学

エブトール、エサンブトール(エタンブトール)の作用機序:抗結核薬

 

戦前では、結核は国民病と呼ばれるほど多くの死者を出した感染症でした。しかし現在では、抗菌薬が開発されて結核患者数は当時に比べて激減しています。ただ、それでも先進国の中では日本の結核患者はかなり多いです。

 

そこで、結核を治療するために用いられる薬としてエタンブトール(商品名:エブトール、エサンブトール)があります。エタンブトールは抗結核薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 エタンブトール(商品名:エブトール、エサンブトール)の作用機序
結核菌が存在することにより、結核が引き起こされます。そのため、結核を治療するためには、体内に存在する結核菌を排除すれば良いことが分かります。そこで、抗菌薬を利用します。これは、体に備わっている免疫だけでは病気から回復しないためです。

 

エタンブトール(商品名:エブトール、エサンブトール)は抗結核薬と呼ばれます。エタンブトールは一般細菌や原虫には効果がありません。しかし、結核菌に対しては、薬を投与した24~48時間で菌の中に有効成分が取り込まれ、細菌の発育・分裂の阻害がみられます。

 

なぜ、このような作用を得られるのかについて、その詳細は不明です。ただ、結核菌の代謝系を阻害することによって、細胞分裂を抑制すると考えられています。もっと詳しくいいうと、RNA合成を阻害すると考えられています。

 

私たちが生命活動を行うとき、タンパク質を作らなければいけません。髪の毛や爪がタンパク質から構成されていることから分かる通り、タンパク質は私たちにとって必須の物質です。このタンパク質はDNAに書かれている情報を元にして合成されます。

 

ただ、DNAはすべての生命情報が刻まれているため、容易に持ち運びすることができません。そこで、DNAに書かれている情報を書き写す必要があります。このように、DNAの情報を元にして作られた遺伝情報の断片としてRNAが知られています。

 

料理で例えると、DNAが本になります。RNAが本の内容を書き写したレシピであり、タンパク質は実際に作った料理に当たります。

 

 タンパク質の合成

 

ただ、前述の通りこれらエタンブトールの作用機序は仮説であるため、正確には分かっていないのが現状です。このような考えにより、結核菌を排除する薬がエタンブトール(商品名:エブトール、エサンブトール)です。

 

 

 エタンブトール(商品名:エブトール、エサンブトール)の特徴
結核菌に対して、エタンブトール(商品名:エブトール、エサンブトール)は強力に作用します。そのため、結核治療には欠かせない重要な薬です。

 

ただ、副作用として視覚障害に注意しなければいけません。最初に色覚異常が表れ、色の区別がつかなくなってきます。これらの副作用は、投与量が多くなるほど表れやすくなります。

 

なお、これら結核を治療するときは、4剤以上の薬を併用します。これは、耐性菌の出現を防ぐためです。抗菌薬が効かない細菌を耐性菌といいます。結核では、薬が効かない結核菌が問題となっています。薬を適切に服用しなければ、耐性菌の出現確率は高まります。

 

しかし、結核の治療では薬の服用がルーズになりがちです。これは、結核の治療が最低でも6ヶ月以上と長期にわたるからです。ただ、結核治療のポイントは「毎日、薬を適切に服用すること」にあります。つまり、薬をきちんと飲むことは治療効果を最大限に発揮し、耐性菌の出現を防ぐことに繋がるのです。

 

こうした結核治療の現状から、現在では医療者の目の前で薬を服用させるDOTSと呼ばれる方法が広く採用されています。これにより、確実に結核を治療できるようになります。

 

このような特徴により、視覚障害という副作用に注意しつつも、適切に服用することで結核を治療可能する薬がエタンブトール(商品名:エブトール、エサンブトール)です。

 

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