ダラシン(クリンダマイシン)の作用機序:抗生物質
感染症は命に係わる重篤な疾患です。日本人の死因上位に肺炎があることから、細菌感染症によって多くの人が命を落としていることが分かります。
そこで、感染症を治療するために使用される薬としてクリンダマイシン(商品名:ダラシン)があります。クリンダマイシンはリンコマイシン系抗生物質と呼ばれる種類の薬です。クリンダマイシンの塗り薬は、にきび治療に用いられることがあります。
クリンダマイシン(商品名:ダラシン)の作用機序
細菌によって感染症を引き起こされることがあります。そのため、細菌による感染症を治療するためには、体内で悪さをしている細菌を退治すれば良いことが分かります。
体に巣食っている細菌を排除するためには、私たちの免疫機能が重要な役割を果たします。ただし、免疫の働きだけでは細菌を抑えることができず、肺炎などの感染症を発症して体が蝕まれていくことがあります。これを改善するため、抗生物質を使用します。
抗生物質とは、「ヒトには作用しないものの、細菌に対しては毒性を示す物質」のことを指します。細菌だけを選択的に認識し、毒性を与えることで感染症を治療するのです。このような作用を、専門用語で「選択毒性」といいます。
選択毒性を示すためには、ヒトと細菌の違いを理解しなければいけません。この違いにはさまざまな機構があり、その中でも「タンパク質の違い」を利用して細菌だけに作用する方法があります。
私たちの体を構築するため、タンパク質は必要不可欠です。皮膚や肝臓、心臓、髪の毛などはタンパク質で作られています。水の次に多い成分がタンパク質であることから分かる通り、タンパク質がなければ生きていくことはできません。
このタンパク質を合成する器官として、リボソームが知られています。重要なのは、「ヒトと細菌ではリボソームの形が異なる」ことです。この違いを利用し、細菌のリボソームだけを阻害すれば、細菌由来のタンパク質合成を選択的に抑制できます。
このように、生命活動に必須となるタンパク質の働きを抑え、細菌の増殖を抑える薬がクリンダマイシン(商品名:ダラシン)です。難しい言葉で表現すると、「クリンダマイシン(商品名:ダラシン)は細菌の50Sリボソームを阻害する」となります。
クリンダマイシン(商品名:ダラシン)の特徴
同じような作用メカニズムによって細菌感染症を治療する薬として、マクロライド系抗生物質が知られています。ただ、クリンダマイシン(商品名:ダラシン)はマクロライド系抗生物質と比べて、その構造式が大きく異なります。そのため、マクロライド系抗生物質と区別して、リンコマイシン系抗生物質と表現されます。
抗生物質には、細菌を殺すことで「殺菌的に作用する場合」と増殖を抑えることで「静菌的に作用する場合」の2つがあります。クリンダマイシン(商品名:ダラシン)は後者の静菌的に働く抗生物質です。
食べ物や唾液などが誤って器官に入ることを誤嚥(ごえん)といいます。誤嚥により、唾液などに含まれる細菌が原因で肺炎を発症することがあり、これを誤嚥性肺炎といいます。クリンダマイシン(商品名:ダラシン)は誤嚥性肺炎の治療に使用されたり、他の抗菌薬と併用して用いられたりします。
外用薬としてクリンダマイシン(商品名:ダラシン)のゲル製剤を用いる場合、主にアクネ菌(にきび菌)による皮膚の炎症に使用されます。要は、にきびの治療にクリンダマイシンを使用するということです。
このような特徴により、重篤な疾患である肺炎から、命に関わらない比較的軽症のにきび治療に至るまで、さまざまな感染症の治療に用いられる薬がクリンダマイシン(商品名:ダラシン)です。
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