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役に立つ薬の情報~専門薬学

ファンギゾン(アムホテリシンB)の作用機序:抗真菌薬

 

菌類によって発症する感染症を真菌症と呼びます。いわゆるカビのことであり、キノコや酵母も真菌に属します。真菌症としては白癬(水虫、たむし)やカンジダ症などが有名です。

 

そこで、真菌症を治療するために用いられる薬としてアムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)があります。アムホテリシンBはポリエン系抗真菌薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 アムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)の作用機序
真菌症を治療する時の理論は単純であり、「病気を引き起こしている真菌は排除すれば良い」というだけです。そこで、抗真菌薬を投与することによって真菌を殺そうとします。

 

細菌と真菌は異なります。細菌は原始的な細胞ですが、真菌はヒトに近い細胞の形をとっています。そのため、真菌感染症の治療は難しいといわれています。抗真菌薬はヒトと真菌のわずかな違いを見極めることにより、真菌だけに毒性を示すように設計されています。

 

ヒトの細胞には、内と外を分けるための膜が存在します。この膜を細胞膜と呼び、細胞膜は主にコレステロールによって構成されています。脂質の成分として有名なコレステロールですが、私たちの細胞を構成するためには必要不可欠な物質なのです。

 

一方、真菌にも細胞膜が存在します。ただし、真菌に存在する細胞膜の成分は主にエルゴステロールと呼ばれる物質で構成されています。

 

 細菌、真菌、ヒトの細胞

 

この違いを利用し、エルゴステロールの働きを阻害してしまえば、真菌に対して毒性を示すことができます。ヒトの細胞にはエルゴステロールが存在しないため、この場合は真菌だけに大きな影響を与えます。

 

その中でも、ポリエン系抗真菌薬と呼ばれる種類の薬は、真菌のエルゴステロールに結合する性質を有しています。これによって細胞膜に穴をあけ、真菌細胞の細胞膜を破壊します。細胞内の物質が外に漏出するため、真菌を殺すことができます。

 

 ポリエン系抗真菌薬の作用機序

 

このような考えにより、真菌に対して殺菌的に作用することで感染症を治療する薬がアムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)です。

 

 

 アムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)の特徴
主にカンジダ症の治療に多用される薬ですが、内臓など体の奥深くに感染が起こる内臓(深在性)真菌症にも強力な作用を示します。

 

幅広い真菌に対して高い効果を示す薬ですが、腸からの吸収が悪いという特徴があります。そのため、経口投与(口からの服用)によって、全身に感染している真菌症を治療することはできません。この場合は注射による投与を行います。

 

経口投与によってアムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)を使用する場合、腸からの吸収が関係ない消化管での真菌感染症を治療するときに使用されます。例えば、「消化管におけるカンジダ異常増殖」などが該当します。さらに、この場合は既に液体として薬を溶かしたシロップ剤として服用します。

 

腸から吸収されないためか、経口投与による副作用は軽微です。また、連続で経口投与しても薬の蓄積はありません。

 

このような特徴により、経口投与によって消化管の真菌症を治療したり、注射によって全身に発症している真菌症を改善させたりする薬がアムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)です。

 

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