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エンクラッセエリプタ(ウメクリジニウム)の作用機序:COPD治療薬

 

気道が狭くなって呼吸をしにくくなる病気として、慢性気管支炎や肺気腫が知られています。

 

これらの疾患は喫煙や化学物質への長期暴露などによって引き起こされ、このような病気を総称してCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といいます。

 

そこで、COPDなどによる呼吸が苦しい状態を取り除くために使用される薬としてウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ)があります。ウメクリジニウムは抗コリン薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

ウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ)という物質に対して、エリプタという製剤の吸入器を採用していることから、一般的にエンクラッセエリプタと呼ばれます。

 

 

 ウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ)の作用機序
COPDでは、気管支に炎症が起こることで気道が細くなっています。さらに痰などの分泌物がたくさん放出されているため、空気が通りにくくなっています。そこで、COPDを治療するときは気管支を拡張させれば良いことが分かります。これにより、呼吸を行いやすくなります。

 

気道を広げるとき、私たちの体中で行われている反応をみれば薬の作用を理解できます。私たちが運動をしているとき、力を出すために血圧が上昇し、全身に酸素を送り届けるために心拍数は上昇します。そして、多くの空気を取り入れるために気管支が拡張します。これは、交感神経と呼ばれる神経系が興奮することで起こります。

 

それでは、先ほどの「運動」とは反対に体を休めているときはどうでしょうか。食事中や寝ているときなどでは、副交感神経と呼ばれる神経系が興奮し、先ほどとは逆の反応が起こります。例えば、食事中では体を落ち着かせるために心拍数が少なくなり、気管支は収縮します。その代わり、胃や腸などの消化管運動が活発になります。

 

そして重要なのは、「交感神経と副交感神経は互いに拮抗し合っている」ことです。つまり、副交感神経の活動が抑制されると、交感神経が優位になります。

 

この作用を利用して副交感神経の働きを阻害すれば、交感神経の働きによる「気管支拡張作用」を得ることができます。その結果、COPDによる呼吸困難を改善できます。

 

 抗コリン薬によるCOPDの治療

 

副交感神経の興奮には、アセチルコリンと呼ばれる物質が関わっています。アセチルコリンを阻害する化学物質を総称して抗コリン薬と呼びます。抗コリン薬を投与したとき、「アセチルコリンの阻害 → 副交感神経の抑制 → 交感神経の興奮(気管支拡張)」という反応が起こるのです。

 

このような考えにより、神経系の興奮に関わる物質の働きを阻害することによって、気管支拡張作用を得る物質がウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ)です。

 

 

 ウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ)の特徴
COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療薬の中でも、ウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ)はLAMA(Long-Acting Muscarinic Antagonist)と呼ばれます。日本語では、長時間作動型抗コリン薬と表現されます。

 

喘息症状では、急激に気道が狭くなって呼吸困難に陥る「喘息発作」を引き起こすことがあります。このような緊急事態では、素早く効果を表すことで症状を抑える薬が活用されます。

 

一方、喘息症状を長期間にわたって管理し続ける薬も必要です。そのような薬を長期管理薬と呼びます。ウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ)は長期管理薬の1つです。1日1回の吸入によって、長い時間にわたって症状を抑えることができます。

 

あくまでも長期的に症状を抑制することが目的であるため、喘息発作などの緊急事態にウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ)は向きません。

 

吸入薬の中でも、ウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ)はエリプタと呼ばれる剤形を採用しています。複雑な操作を必要とせず、「カバーを横にたおす」という1つのアクションで吸入薬がセットされるデバイスです。

 

このような特徴により、気管支炎や喘息などによって呼吸が苦しい状態を長期にわたってコントロールする吸入薬がウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ)です。

 

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