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役に立つ薬の情報~専門薬学

スピロペント(クレンブテロール)の作用機序:β2受容体刺激薬

 

気管支に炎症が続くことで、のどが腫れたり咳や痰が出たりする病気を気管支喘息といいます。気管支喘息患者は気道が狭くなるため、呼吸が苦しくなります。

 

そこで、気管支ぜんそくなどの呼吸器疾患を治療するために使用される薬としてクレンブテロール(商品名:スピロペント)があります。クレンブテロールはβ2受容体刺激薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

 クレンブテロール(商品名:スピロペント)の作用機序
気管支に炎症が起こると、気道に痰などの分泌物が放出されます。また、気管支喘息では気道自体が細くなります。これにより、空気の通り道が狭くなって呼吸しづらくなります。これを改善するためには、気管支を拡張させればよいことが分かります。そこで、運動時に働く神経系を活性化させます。

 

私たちが運動をしているとき、交感神経と呼ばれる神経系が興奮しています。運動時、相手をよく見るために瞳孔は散大します。心臓の動きは活発になり、力を出すために血管が収縮して血圧が上がります。そして、たくさんの空気を取り入れるために気管支は拡張します。

 

これらは、すべて交感神経が活性化された結果として起こります。気管支の拡張に関していえば、特にβ2受容体という「気管支を広げるスイッチ」が大きく関わっています。β2受容体が刺激されることで、気管支が拡張するのです。

 

そこで、薬によってβ2受容体を刺激することができれば、気管支を広げることができます。交感神経が興奮したときの反応を薬の投与によって実現させるのです。

 

 β2受容体刺激薬と交感神経

 

このような考えにより、「気管支の拡張に関わるスイッチ」に作用することで気道を広げ、気管支ぜんそくなどによって起こる息苦しさを改善する薬がクレンブテロール(商品名:スピロペント)です。

 

 

 クレンブテロール(商品名:スピロペント)の特徴
呼吸器疾患には、気管支喘息の他にも慢性気管支炎、肺気腫、急性気管支炎などが知られています。クレンブテロール(商品名:スピロペント)はこれらの呼吸器疾患に対して利用されます。

 

交感神経に作用する薬の中でも、クレンブテロール(商品名:スピロペント)はβ2受容体へ対する選択性が高いです。長時間にわたって持続する薬であり、半減期(服用後、薬の濃度が半分になるまでの時間)は約35時間です。

 

喘息治療を行うとき、急激に気道が細くなって呼吸が苦しくなる「喘息発作」の予防が重要になります。このとき、気管支喘息の治療薬では、「長期管理薬(発作を予防する薬:コントローラー)」か「発作治療薬(発作を和らげる薬:リリーバー)」によって二種類に分けることができます。

 

長期管理薬であるβ2受容体刺激薬を難しい言葉でLABA(Long Acting β2 Agonist:長時間作用性吸入β2刺激薬)と呼びます。

 

 LABA(長期管理薬:コントローラー)とSABA(発作治療薬:リリーバー)

 

クレンブテロール(商品名:スピロペント)の半減期が約35時間であることから分かる通り、クレンブテロールは長期管理薬に分類されます。喘息発作の予防に用いるため、実際に喘息発作が起こったときに服用しても意味はありません。

 

なお、クレンブテロール(商品名:スピロペント)は腹圧性尿失禁の治療に用いられることがあります。膀胱の筋肉には、β2受容体が存在します。β2受容体が刺激されると、膀胱の筋肉は弛緩します。

 

そこでクレンブテロール(商品名:スピロペント)を投与すると、膀胱のβ2受容体が刺激されて多くの尿を蓄積できるようになります。これが、尿失禁の症状改善に繋がります。

 

このような特徴により、気管支喘息を含む呼吸器疾患を改善し、膀胱にも作用して尿失禁を治療する薬がクレンブテロール(商品名:スピロペント)です。

 

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