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インスリン物語:死の病気から治療できる病気へ

 

かつては糖尿病が死の病気であったことをご存知でしょうか。現在では糖尿病をがんや白血病のように恐いと感じる人は少数です。

 

これには、インスリンの開発が大きく関わっています。インスリンが開発されてからと言うもの、インスリン投与を受けている限り糖尿病による死亡は劇的に少なくなりました。

 

 インスリンの発見
1889年にドイツの医師オスカル・ミンコフスキーとヨーゼフ・フォン・メーリングは別の研究のため、犬のすい臓を摘出する実験をしました。この実験中、彼らは「膵臓を摘出した犬の尿」に多くの糖が含まれていることに気付きました。この犬は糖尿病を発症していたのです。

 

これから、糖尿病とすい臓の関係が注目されるようになりました。すい臓が無くなると糖尿病を発症するため、糖尿病には膵臓の影響が大きいと判断できます。

 

すい臓には「糖尿病を打ち消す物質」が含まれています。しかし、すい臓を摘出すると「糖尿病を打ち消す物質」が放出されなくなってしまいます。そのため、糖尿病を発症してしまうのです。

 

後に他の研究で、すい臓の中に島のように浮かぶ細胞群「ランゲルハンス島」が糖尿病と関係していることが分かりました。

 

カナダの整形外科医バンティングは、それまでだれも成功したことがなかったランゲルハンス島の抽出を試みようとし、トロント大学のジェームズ・マクラウド教授に依頼しました。そして、バンティングは助手のベストと共に実験を開始し、さまざまな工夫を重ね、ついにランゲルハンス島の抽出に成功したのです。

 

この抽出液を犬に投与することで犬の血糖値が下がることを確認し、この物質をインスリンと名付けました。

 

 インスリン発見のその後
1922年1月11日、Ⅰ型糖尿病を発症していた当時14歳の少年に世界で初めてインスリンの投与が行われました。この時、少年の血糖値は劇的に改善しました。

 

当時、糖尿病は死の病気でした。しかし、インスリン発見からというもの糖尿病は死の病気ではなくなったのです。

 

1923年、バンティングはインスリンの発見者としてノーベル生理・医学賞を受賞しました。このとき、バンティングは一緒にノーベル賞を受賞することができなかったベストと賞金を分け合ったのです。

 

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