役に立つ薬の情報~専門薬学 | 薬・薬学・専門薬学・薬理学など

役に立つ薬の情報~専門薬学

コホート研究、ケースコントロール(症例対象研究)

 

 コホート研究とケースコントロール(症例対照研究)
臨床で行われる研究には、実際の患者に参加してもらって試験する「臨床試験」や検査データや血液サンプルの提供を受ける「観察研究」などがある。臨床試験の代表的なものには、コホート研究ケースコントロールがある。

 

臨床試験は「前向きか後ろ向きか」でも分けることができ、コホート研究は前向きの研究でケースコントロールは後ろ向き研究に分類される。前向き、後ろ向きの違いは未来へ向かって調べるか、過去へ向かって調べるかの違いである。

 

 前向き:未来へ向かって調べる(ex.コホート研究)
 後ろ向き:過去へ向かって調べる(ex.ケースコントロール)

 

・コホート研究の例
ガンと喫煙の関係性を調べたい。40~50歳の無造作に選んだ男性1000人にアンケートを取り、今までに喫煙をしたことがあるかどうかを聞いた。その後の10年間において、何らかのガンが発生したかを調査した。

 

この場合、男性1000人に調査した時点では当然ガンは発生しておらず、それから10年後の未来でガンの発生を調べている。つまり、この研究では「10年後の未来へ向かって喫煙の有無を調べている」ということができる。

 

このような未来へ向かって調べる研究がコホート研究であり、「前向き」の調査である。

 

・ケースコントロール(症例対照研究)の例
ガンと喫煙の関係性を調べたい。50~60歳でガンと診断された600人と無造作に選んだ健常者400人について、今までに喫煙していたかどうかを調査した。

 

既にガンと診断された人と健常者がいて、その時点から過去にさかのぼって喫煙をしていたかどうかを調べている。つまり、この研究では「今までの過去にさかのぼって喫煙の有無をしらべている」ということができる。

 

このように過去へ向かって調べる研究がケースコントロールであり、「後ろ向き」の調査である。

 

………………………………………………………………………………………………………………

 

 コホート研究
コホート研究では相対危険度(RR)を出すことで、曝露群と非曝露群でどれくらいリスクが違うかを明らかにする。前述の「タバコとガン」の例では、タバコを吸う人と吸わない人でどれくらいガンのリスクに差があるかを見極めることができる。

 

また、相対危険度の(95%or99%)信頼区間に1を含まないなら曝露群と非曝露群で差があるということができる。

 

・相対危険度(RR)の計算
下のような表があるとする。

 

 

要因への曝露

合計

疾病の有無

 

a

b

a+b

c

d

c+d

合計

a+c

b+d

a+b+c+d

 

このときの相対危険度(RR)は次の式で求めることができる。

 

 

 

もし相対危険度が1だとすると、曝露群と非曝露群でのリスクは変わらないということになる。それに対し、相対危険度が2だとすると「曝露者のリスク:非曝露者のリスク
= 2:1」ということになるので、要因への曝露者は非曝露者の2倍も調査した病気を患うリスクを負っていることになる。

 

また、RR(相対危険度)の95%信頼区間は次の計算式でxを出すことから始める。

 

 

 

xを計算したらexを求めて、RR(相対危険度)の95%信頼区間を出す。

 

 ○ ≦ ex ≦ ○

 

この区間に1が含まれていないなら「曝露群と非曝露群に差がある」ということができる。

 

※RR(相対危険度)の95%信頼区間を求める前のxを計算するとき、1.96という数値を使用した。しかし、99%の信頼区間を求める場合は2.58という数値を使用する。つまり、99%信頼区間でxを求めるときは次のような計算式になる。

 

 

 

………………………………………………………………………………………………………………

 

 例題
肥満には遺伝子Xが関係しているという疑いがある。無造作に選んだ3~5歳の幼児1000人について遺伝子Xが存在するかどうかを調べた。このうち300人には遺伝子Xが存在し、700人は遺伝子Xが存在しなかった。

 

20年後に再び調査して肥満かどうかを調べた。その結果、遺伝子Xがある300人のうち150人が肥満で遺伝子Xのない700人のうち140人が肥満であった。相対危険度と95%信頼区間を求めてデータの解釈を述べよ。

 

 

遺伝子Xの有無

合計

肥満度

 

肥満である

150

140

290

肥満でない

150

560

710

合計

300

700

1000

 

(注:このデータは便宜的に作ったもので、実際のデータではない)

 

このデータは未来へ向かって調査している「前向き」な研究なので、コホート研究である。

 

・計算
まず、相対危険度を求める。

 

 

 

RR(相対危険度) = 2.5 なので、遺伝子Xがあるのとないのでは「2.5倍肥満になりやすい」ということが分かる。今度は、「遺伝子Xがあると肥満になりなすい」と解釈しても良いかどうかを確かめる。

 

95%信頼区間を求めなければならないので、まずxを計算する。

 

 

 

xを求めたら、exに計算した値を代入して95%信頼区間を求める。

 

 e0.73 ≦ ex ≦ e1.103
 2.075 ≦ ex ≦ 3.013

 

95%信頼区間に1が含まれていないので、「遺伝子Xがあると肥満になりなすい」と解釈することができる。

 

………………………………………………………………………………………………………………

 

 ケースコントロール(症例対照研究)
コホート研究では相対危険度を出してリスクの差を求めたが、ケースコントロールではオッズ比(OR)を出すことで曝露群と非曝露群にリスクの差があるかどうかを見る。

 

また、オッズ比の(95%or99%)信頼区間に1を含まないなら曝露群と非曝露群で差があるということができる。

 

 

要因への曝露

合計

症例

a

b

a+b

対象

c

d

c+d

合計

a+c

b+d

a+b+c+d

 

(ここでの「症例」は疾病の人の数で、「対象」は健常者と考えればよい)

 

このときのオッズ比(OR)は次の式で求めることができる。

 

 

 

オッズ比が1ならば曝露群と非曝露群でのリスクは同じである。しかし、オッズ比が1より大きいならば「曝露群の方が非曝露群よりもリスクが大きい」ということになる。

 

ここで、OR(ケースコントロール)の95%信頼区間を出すには、まず次の式でxを出すことから始める。

 

 

 

xを計算したらexを求めて、OR(オッズ比)の95%信頼区間を出す。

 

 ○ ≦ ex ≦ ○

 

この区間に1が含まれていないなら「曝露群と非曝露群に差がある」ということができる。

 

※OR(オッズ比)の95%信頼区間を求める前のxを計算するとき、1.96という数値を使用した。しかし、コホート研究で説明したように99%の信頼区間を求めるには1.96ではなく2.58を使用する。

 

 

 

………………………………………………………………………………………………………………

 

 例題
ある大学内で学生が食中毒を発生した。このとき、キャンパス内の食堂が原因ではないかと疑われた。そこで、食中毒になった学生200人と食中毒になっていない学生150人を調べてキャンパス内の食堂で食事をしたかどうかを調査した。

 

その結果、食中毒者200人のうち180人,非食中毒者のうち40人が食堂で食事をしていた。オッズ比と95%信頼区間を求めてデータの解釈を述べよ。

 

 

食堂での食事の有無

合計

食中毒

 

発症

180

20

200

非発症

40

110

150

合計

220

130

350

 

(注:このデータは便宜的に作ったもので、実際のデータではない)

 

このデータは過去へ向かって調査している「後ろ向き」な研究なので、ケースコントロール(症例対照研究)である。

 

・オッズ比の計算
まず、オッズ比を求める。

 

 

 

次に95%信頼区間を求めなければならないので、まずxを計算する。

 

 

 

xを求めたら、exに計算した値を代入して95%信頼区間を求める。

 

 e2.62 ≦ ex ≦ e3.8
 13.7 ≦ ex ≦ 44.7

 

95%信頼区間に1が含まれていないので、「キャンパス内の食堂で食事をした学生が食中毒を発症した」と解釈することができる。

 

知識ゼロから薬の専門家へ : 無料メールセミナー     薬剤師が転職で失敗しないためには

スポンサードリンク




スポンサードリンク